『SDM』 VOL.23
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震災後の日本、ダンサーたちは。原発や計画停電、デマの拡散など、被災地以外でも多くの混乱に覆われた震災後の日本。身の回りの日常が壊され、変貌していく中で、ダンサーはどうあるべきなのか? その1つの答えを、ダンスシーンのキーパーソンたちに聞いてみた。東日本のダンサーたちに、夢と希望を与えたい。「DANCE DELIGHT基金」は、被災者を支援したいという単純な想いから設立しました。それと別に、僕が力を発揮できることは何かと考えたら、やはりダンス活動が一番だったんです。もちろん最初に、ダンスのチャリティイベントの開催は思いつきました。ですが、自分ができることは、アドヒップで一番大きいJDDで何かをやることが一番だと思ったんです。JDDの仙台大会は震災後すぐに中止になりましたが、僕はどうしても東北での大会を実現させて、被災地のダンサーに決勝の舞台に立って欲しいと思っています。今後の復興状況により、いつどこで開催出来るかは解りませんが開催実現に向けて今、動いてます。 そしてJDDのファイナルも東日本のダンサーに夢と希望を与えたくて、関東への移動を決めました。実際に踊れる状態でなかったり、経済的に厳しくなったダンサーも多いと思います。でも、そこで夢まで失って欲しくない、僕が出来る一番の支援はお金を集める事よりも、被災されたダンサーに夢と希望を与えることだと考えたからです。 「こんな時期に踊ってる場合じゃない」と言われればおしまいですが、ダンサーである以上、踊るために生きているわけです。世界的な歴史においても、どんな状況であろうと文化的なモノは受け継がれているわけですから、踊れる状況にあるダンサーは頑張って踊り続けていくべきですし、それによってシーンも活性化していくべきだと思います。『JAPAN DANCE DELIGHT(以下略:JDD)』の主催者として名高いマシーン原田。地震後、早期に復興のための基金を設立し、JDDの決勝会場を東日本に変更した。その想いをつづる。●マシーン原田プロとして生徒に応える責任、そしてスタジオへの責任。 今回の震災、東京に住む自分としては直接的な被害は受けずに済みました。そこで、自分の周りにある生活を含めて、やるべきことは何かと考えました。「ボランティアとして被災地に出向かないのなら、まずは自分のレッスンを楽しみにしている生徒の為に、それをキッチリやることも大切」と思い、地震の3日後でまだ混乱の残る状況でしたが、普段どおりにレッスンに向かいました。いつもよりやや少なめの人数でしたが、通常通りレッスンを終えました。 ただ、驚いたことにその日のスクールは僕以外のレッスンは全て休講。もちろん、親族や友人が被災されたインストラクターや、電車の運行問題で来られなかった人もいたでしょう。ただ、そうでないのならプロのインストラクターとして、自分を待っている生徒に応える責任、そしてスクールに対しての責任があります。 停電や交通機関の影響で営業出来なくなったスタジオもあったと聞きましたが、レッスンが出来る状況なのに、インストラクターが身勝手に休んでしまう。レッスン休講が重なり、運営に打撃を受けたスタジオが多いとも聞いています。 これは「スクールの数が多い。だから先生が足りない。だからちょっと踊れればプロ意識が低くても、誰でも先生になれる」という、シーンの構造的な問題を浮き彫りにしてしまったとも言えます。〝震災後の問題〞といった見方とは別に、これからのダンスシーンに関わる大きな問題として取り組んでいくべきでしょう。本誌連載企画「ストリートダンス史概論」でもおなじみの江守氏。震災後、多くのダンススクールでレッスンが休講となる中、自らのレッスンを通常どおりに行なった。その真意を語る。●江守 藹タイミングを考えて、ダンスを通じてできること。 今、こうやって被災地以外の地域では、震災後の混乱からようやく日常に戻りつつあると、改めて、いろいろなことが見えてくると思います。ダンスシーンでもチャリティーの動きが活発化していて、日本各地でいろんなダンサーが被災地のために、イベントやワークショップを行なっていますが、そういう活動で義援金を送ともいいことですよね。 僕も今の日本の状況に対して自分が何ができるかを考えました。その1つの考えとして、落ち着いたら被災地を周りたいと思っています。被災地の方々の目の前で踊ってあげて楽しんでもらうことが、自分ができる一番のことだと思うんですよね。ダンサーはやっぱり踊ることですよ。ダンスって、直接人を救うことはできないけど、夢とか希望とか、楽しませたり、わくわくさせたり、心を救える力があると思うんです。 ただそれも、今やっては迷惑、時期があると思います。やはりこういう大きな災害の復興って、何年かかかることですからね。ちゃんと仮設住宅もできて、ちょっと落ち着いた時期にはそういうことをしたいですね。今、「何かやらなやきゃ!」って焦っている人も多いですが、タイミングも重要。状況が落ち着いたら、ダンサーとしてのやり方を実行すればいいと思います。 何か行動を起こすと色々言われるかもしれませんが、恐れずに行動していきたいし、みんなもそうやって欲しいですね!今回号の表紙でも登場してくれたSAM。ダンサーとして、そしてメジャーアーティストの立場として、長年、多角的にシーンをみてきた彼が語るダンサーにできることとは?●SAMMassage from Key person26日本復興に向けて。〝ストリートダンス〟にできること緊急特集

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