『SDM』 VOL.23
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理学療法士 大平雄一さんProfile :大学の研究員として活動する傍ら、大阪府内のコンディショニング・センターに勤務。理学療法士として、ストリートダンサーの身体のケア、ケガ防止などに関わっている。ダンス義務教育化について、学校側では、どうお考えですか!?ダンス義務教育化に対して、どんな問題点がありますか!?実際の授業での伝え方に対して、イメージしていることは!?学校内での、ストリートダンスに対する認知はどのぐらい!?●若い先生たちは肯定的! しかし、年配の方は、まだまだ否定的な意見も多い。●教育現場的には戸惑いも! 教えるための、しっかりとした研修がないといけない。まずは、簡単な振付けなどをとおして、達成感を味うようにさせることが大切!ストリートダンス自体に対する認知は非常に高いが、社会的な肯定イメージはまだ低い!「踊れると、とっても楽しい!」それは共通認識!ストリートダンス特有の専門用語の多さ、授業についていけない子に対するケア、教えるためには鏡が必要などが問題点!私は実際にダンススクールにかよって、授業でもストリートダンスを取り入れてみました! 最初、難しいのは、子供たち自身がダンスを理解していなかったこと。だからまず、身体を動かす楽しさを重点的に伝えました。次の段階で“リズムダンス”として、班単位に分かれて1つの曲をちょっとずつ使い、みんなで1曲振付けを完成させようってやってみました。みんな初めての割にはスゴくノリノリでやっていて、「楽しかった」という感想をいっぱいもらいましたよ!剣道の顧問A先生バスケットの顧問D先生サッカーの顧問B先生中学生は成長期で1番大切な時期。指導者がしっかりとした身体の知識をもつことが必要!最近は、小中学生でもダンスをやっている方が増えてきましたが、その分、一生懸命、練習をして、ヒザや腰を故障してしまうケースが多い!今、天才とよばれているキッズダンサーたちも、成長期には思うように踊れなくなる時が絶対きます。キッズの時は、身体は小さくて先に神経だけが発達しているので、大人以上に踊れるものなんですね。それが中学生になると今度は骨が大きくなってきます。それに筋肉がついていかないと、今度は大人以上のストレスが関節にかかって故障してしまう危険性が高いんですね。野球でも、いち時期、野球少年が、どんどん肩があがらなくなって中学生で潰れてしまうことが問題になりました。当然、ダンスでも同じような問題がおこると思います。例えば、中学生のダンサーは、よく腰の痛みが多く、意外と股関節が硬くなっているんですね。皆さん、開脚のストレッチは行なっていると思うんですけど、逆に足を内側に閉じるようなストレッチは、あまりしていない印象があります。その筋肉が硬くなって腰に負担がかかり、故障してしまうんですね。今はリトルリーグでも、投球の回数制限があるなど、さまざまな子供の身体をケアするためのルールがあります。特に中学校は成長期で1番大切な時期。これからダンスを義務教育として広げていくためには、まずは大人がしっかり勉強して、子供の身体をケアしてあげる仕組みをダンス業界の中で作っていく。そして、それを伝えていくことが大切だと思いますよ!ダンス義務教育化実際の教育現場はどう思っている!?ダンス義務教育化スポーツ医療のプロはどう見る!?理学療法士にインタビュー!「ちょっと戸惑っている」という感じですかね。今までは自分が子供の頃、実際に授業で受けてきたことを体験談など交えつつ指導できた。けど、ダンスって体育の授業では無かったじゃないですか? こんなに本格的なヒップホップ・ダンスは見たことだけしかなかったので。それが授業に入ったらって不安はあります。ダンススクールに習いにきている子は、それなりに「ダンスをやりたい!」意識のある子たちで構成されています。しかし、それを学校教育の現場に持っていった時、興味のない子、ついていけない子も当然でてきます。そういった子に対してのアプローチは悩みますね!今の時代にあった現代的な授業だと思います。ただダンスを教えられる体育の先生は、ほとんどいないので本当に0からのスタートだと思います。個人的にはスゴくいいと思っています。ダンスって、ちょっと運動したいって思った時に道具や場所を使わなくてもできるから! ただ、教育現場はいきなりダンスを教えて下さいっていう状態になっているので、年配の先生方は無理って考える方も多いですね。専門用語が、まだ解らないから「テストが出来ないな」って思いました。もっとこういった講習会を広げて欲しいと思います。まず鏡の問題ですね。体育館や講堂に、こんな大きな鏡がある学校はほとんど無いんで。今後は、そういったものも整備して欲しいと思います。あと、アップとかダウンなど専門用語が多いこともビックリしました。とっても楽しいし意欲的にやってくれると思います! 自分たちで振付けを創るとなると、難しいかもしれませんが、そういった機会が授業でできることは、すごくいいことだと思います。私たちの中学では、女子はもう体育でストリートダンスをやっているんですよ。男女ともやっている学校もありますし、ダンス専門の顧問がいる学校もあります。これから、もっと広がっていくと思いますよ!AKB48やEXILEなどの踊りを学園祭で真似たりとかはありますけど、実際のダンスシーンのように“自分たちでオリジナルの振付けを踊る”ということに対する認知や理解は、かなり低いと思います。どちらかというとダンスをやっている子って雰囲気がヤンチャな子が多いじゃないですか? 親がダンスをやらせたいと思っても、まだ抵抗があると思います。ただ私は、ダンス自体は、歳をとっても続けられる生涯スポーツであり、スゴく素晴らしいものだと思っています。だから、もっとクリーンな感じで広がっていって欲しいなって思いますね。講習終了後、K-ROWのもとにはレッスンで使用した専門用語を聞きだそうとする先生たちが殺到していた。B先生今回、この講習を受けてみて、やっぱり専門の講師にステップの名前とか教えて頂くと、全然、違うなって思いました。もっと、こういった機会を増やして頂いたら、ほかの先生方の取り組みも、全然、変わると思いますよ!A先生C先生C先生D先生今日は2人1組で組み技(※ルーティン)なんかもやっていたじゃないですか? ああいったものを取り入れてゲーム感覚で達成感を味わえるように進めたら、子供たちも出来るかなって思いました。やっぱり「出来たら楽しくなるよ!」っていう部分は大切ですよね。D先生A先生A先生この講習を受けてみての感想は!?まず、大人がやっても楽しいなっていうのは発見でした。今、体育の授業では、腹筋や背筋など体力作りを機械的にやっていますが、音楽に乗せて楽しみながら体力作りをできるので、すごく授業でも使えると思います!3日間すべて受講してみました。1日目は全然できなくて「辛い」というイメージでしたが、今日は2時間があっという間。踊れるようになると楽しいものなんですね!C先生D先生B先生C先生私は賛成派! 体育の授業が嫌いな子でも、ダンスをやっている子は多い。そういった子たちが活躍する機会が学校教育の中でも広がると思います! ただ、年配の男性の先生方は、厳しいという意見が多いですね。私も、実際にこういった研修があったからいいですが、いきなり教えるのは無理だと思います。サッカーの顧問C先生この講習を受けた中学校の体育教師4人にインタビュー!59

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