『SDM』 VOL.24
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ずっとダンスで生きていくために、演出家を目指した。―現在、エンタメ・シーンの中で、〝ストリートダンス〞というものは、どのように見られていると思いますか? 本当にいい時代になったと思いますね。僕が踊り始めた80年代は、芸能界でダンスの仕事をしていると、結構、差別的ともいえる扱いをされていました。当時は、本当に今みたいな世の中になるのが理想でしたからね! 今では、間違いなくストリートダンスの地位は認められていると思うし、カッコいい職業の1つになっていると思います!―なるほど! けど、舞台公演の世界では、バレエやコンテンポラリーに比べて、まだまだ成立していませんが、それは何故だと思いますか? あっちこっちで踊り過ぎてるから、お客さんもわざわざ観に来ないんじゃないかな(笑)。舞台でしか観れないわけでもないですしね。バレエやコンテって、舞台装置や照明、音と動きが全部マッチして〝舞台でしか見れないもの〞が創りあげられている。けど、ストリートダンスの多くの公演は、まだそこまでの深みに達していないのが多いと思います。でも、仕事として考えていったら、舞台は絶対に重要だと思いますよ。―なぜ、舞台が重要だと思うのでしょうか? 自分がプレイヤーであるうちはいいけど、「年をとって踊れなくなったらどうしよう」って不安はありますよね。ダンスを見る目の肥えてない人からすれば、若くて上手いダンサーが一番都合がいいんですよ。見た目もいいし、ギャラも安い。ベテランになってくると、「需要は少ないのに、ギャラは高い」と思う人もいる。本人的にも身体も故障が多くなります。ダンサーにとっては永遠の課題です。 僕は、その答えの1つが〝舞台の演出家〞だと思うんです。だから、ずっとダンスで生活していくために、「40才を過ぎたら演出家になる!」って思っていました。ここまで大事に審査員を決めている大会は他にない。―実際、SAMさんは他の多くのアーティストのコンサートの演出をされていますね! 昔は〝コンサートの演出家〞なんて概念はなかったみたいなんですよ。今でも現場によって、いない場合が多いです。僕の場合は最初からそこも目指して、TRFとしていろいろ試しながら、小室さんや現場のスタッフさんのお話を吸収して、ノウハウを学んでいきました。―どうすればSAMさんみたいにコンサートの演出家になれますか? 1つのパターンとして、いろんなステージに出演し、〝現場の経験を積む〞ことが大切だと思います。そこで吸収して、振付師として任されることを目指す! そして振付師として何回か場を踏んで信頼されてきたら、次は〝すべてを任される演出家〞という流れですかね? 日本はその辺あやふやですけど、アメリカはハッキリしていて、立場もギャラも全然変わってきますね。日本でも、もっと「いいステージをつくるためには、いい演出家が必要」ということを色んな業界の人が認知できる状況があった方がいいと思います。そのためにも、この『Legend Tokyo』はすごく重要なキッカケになるんじゃないですかね。―『LegendTokyo』については、審査委員長をお願いしていますが、どのようにお考えですか? いや〜、ほんと面白い試みですね!審査員にしても、今までのコンテストはダンスのジャンルで選んでいたけど、これだけ〝可能性〞を大切に考えて審査員を選んでいるコンテストなんてないですよ。審査も、ストリートダンス以外のキーパーソンの方々が、それぞれ全く違った視点で観るだろうから評価も割れると思う。だから、僕の役目は重大なポジションだと思っていますよ。 そして、今はまだ〝ストリートダンスの振付師〞って一般的には、全然浸透していない存在だと思いますが、この大会からその重要さを広げていきたいですよね!日本のエンタメ業界とストリートダンス業界。2つの事情をもっともよく知る男、TRFのSAM。現在、コンサートの演出家として幅広く活躍する彼だが、実は日本初の〝ストリートダンスの舞台公演〟を実現させた経歴も持つ。『Legend Tokyo』大会の審査委員長をつとめてもらう彼に、まず、ストリートダンスにおける〝振付・演出〟の必要性について語ってもらった。Profileダンサーとして音楽ユニットTRFに参加し、メジャーデビュー。プレイヤーとして多岐にわたるダンスジャンルに精通し、90年代からは演出家としても活躍。浜崎あゆみ、BoA、安室奈美恵をはじめ、日本を代表する名だたるトップアーティストたちのコンサート演出を手掛けている。近年では、次世代ダンサー発掘など、ダンスシーンの発展にも貢献。#01取材・文=長濱佳孝text by Yoshitaka Nagahama写真=佐々木信行photo by Nobuyuki Sasakiストリートダンスとしての視点。大会審査方法監修 & 審査委員長ネクストジャパン株式会社 代表取締役SAM(TRF)Job FileInformation日本を代表する数多くのコンサート演出を手掛けるSAMが、なんと特別に『Legend Tokyo』のオープニングを演出してくれることが決定! 匠の技が、作品本編への期待度を最大限に盛りあげてくれる!!『Legend Tokyo』のオープニングを、SAMが演出をてがけることが決定!毎年、日本全国のダンサーたちにとって憧れのステージとなっている「a-nation」のビッグステージは、SAMの考案によるもの。振付・演出も彼が手掛けている。ストリートダンスとコンサートの関係を変えた革命的アーティスト・グループ“TRF”。その演出はSAMが担当していた。今の彼の演出術も、ここで培われたという。かつてSAMがリーダーをつとめたチーム“東京BE BOP CREW”は、1980年代に新宿シアター・モリエールで、舞台セットとストーリーのあるダンス公演を実現。「a-nation」アクトダンサーの演出TRFのライブ演出日本ストリートダンス界、初の舞台公演いいものを創るには、いい演出家が必要。それを業界に認知させる大会になる!26

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