『SDM』 VOL.24
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マイノリティゆえの可能性に期待!̶ミュージカル業界の方から見て、日本のストリートダンスは、どのような印象がありますか? ミュージカルにとってダンスはとっても大切な存在。もちろん、すごく興味ありますよ。私たちも、完全にストリートダンスだけの作品こそありませんが、今までヒップホップを部分的に取り入れたことはありました。でも、従来の自分たちの演目を、ストリートダンスで全部表現したら、ドラマは同じであっても、それは今の時代に活きる作品になるかもしれないという期待はありますね!̶では、イメージ的に期待のほうが大きいのでしょうか? 今のミュージカルのように成熟しきったものって、なかなかそれ以上は伸びない。けど、マイノリティな文化って、逆にすごく発展する可能性を秘めているでしょう!?それがもし、自分たちと一緒に昇華したらどういうものが出来るか、それは楽しみですよね! 今、型にはまっているものを壊す、いいキッカケかもしれません。あとは、プロデューサー、クリエイターに「どういう気付きがあるか?」。それによって、もっと大きく広がっていくんじゃないでしょうか。̶では、もし一緒にミュージカルを創るならば、どのような振付師を求めていますか? ミュージカルって、さまざまな分野のアーティスト、クリエイターたちの力を掛け合わせて創っていくものですから、自己主張だけで仕事をする人は難しいですね。他人の意見に妥協するのではなく、大切なのは他のクリエイターと掛け合いながら、自分の強みを活かして、作品として成立させるバランス。それができるクリエイターとは、ぜひ一緒にお仕事をやりたいと思います!強烈な欲望が作品の魂を生み出す。̶エンターテインメントを創る側で成功している人たちの共通点って何だと思いますか? 強烈な欲望を持っているかどうかだと思います。その人が自分の人生をかけて、「何を表現し、何を手にしたいのか!?」。そして、「そのためには何ものも乗り越え、何ものも活用し、やっていく」という欲望。それがないと絶対に難しいと思いますね。̶『Legend Tokyo』の審査は1作品5分ですが、それを感じとるには、ちょっと時間が短いですか!? そんなことはありません。出演ダンサーがステージに立った瞬間、「これはダメか?いけるか?」ハッキリ分かれます。私たちは、今までオーディションで何万人の人たちを見てきていますが、「何かを表現せずにはいられない!」という人は、ステージに立っただけでオーラがあふれてくるんですよ。 人を奮い立たせたり、勇気を持たせたりすることって、舞台の世界はスキルだけでは無理。そこに魂を持ったとき、はじめて人の心を動かすものになる。そして、それを実現させるのがコレオグラファーの役目だと思います。̶しかし、実際に作品に出演するのはプロダンサーではない人も多く、しかも1作品20〜30人います。なかなか難しいのでは? 出演者が誰であれ、それはコレオグラファーに巻き込む力がどこまであるかですよ。「自分のやるものに参加して」じゃなく、出演者一人ひとりにとって、その作品が自分事になるように巻き込めば作品創りが主体的に行なわれるように変わります。だから、コレオグラファーは、「これが自分の表現なんだ!」って思わせるまで出演ダンサーを巻き込まないと! だって、「どうしても、これが表現したい!」っていう強烈な意志があれば、どんなことがあっても相手を説得するでしょ!? 「出来ないから妥協しよう」なんて思うなら、最初から、やらなきゃいい。そこにいさかいが起きようが、結果的に素晴らしい作品になったときは、全員がハッピーになるんですから! 大会当日はそれが出来る、新しい才能を持った、たった1人に出会いたいって思っています。ダンス、歌、演技。すべてを駆使して1つの大きな物語をみせる総合芸術〝ミュージカル〟。その業界で活躍する人たちにとって、今、日本のストリートダンスはどのように捉えられているのだろうか。そこで振付師が活躍するためにはどうしたらいいのか!? 和製ミュージカルで最高峰と名高い〝音楽座ミュージカル〟のチーフプロデューサーにお話を伺ってみた。ミュージカル界の視点。#04取材・文=木村恵子text by Keico Kimura写真=有馬里沙photo by Risa ArimaProfileかつては、欧米ヒット作の翻訳公演が主流であった日本のミュージカル。そんな中、日本人の気質にあったオリジナル作品を創りあげ、日本を代表するカンパニーへ発展した音楽座ミュージカル発足以来のチーフプロデューサー。その作品は何百万人もの観劇ファンの心をつかみ、文化庁芸術祭賞、読売演劇大賞など数多くの演劇賞を受賞している。音楽座ミュージカル/Rカンパニーチーフプロデューサー石川 聖子Informationサン・テグジュペリによる名作「星の王子さま」の世界初オリジナル・ミュージカル! 本誌発行時には東京公演は終了しているが、大阪、広島、そして町田でも公演が行なわれる。■大阪公演→6/25(土)~6/26(日) @イオン化粧品シアターBRAVA!■広島公演→7/2(土)@ALSOKホール■ホームタウン(東京・町田)公演→7/7(木)・7/8(金)@町田市民ホールあの「星の王子さま」がミュージカルに!Job File同名コミックスを原作に、「名作は、作者が亡くなっても時空を超えて生き続ける」という壮大なテーマを表現。初演版は小室哲哉が楽曲を手掛けていた。遠藤周作による小説「わたしが・棄てた・女」を原作に無償の愛をテーマに描いた名作。第2回、第5回と2度にわたって「読売演劇大賞」優秀作品賞を受賞した。浅田次郎による名作小説をミュージカル化した話題作。ソニーとのコラボレーションによるデジタルシネマ第一弾として、全国の映画館で作品が上映された。「マドモアゼル・モーツアルト」1991年~「泣かないで」1994年~「メトロに乗って」 2000年~「リトルプリンス2011 ~星の王子さま~」http://www.ongakuza-musical.com/詳細はこちら魂を持たないスキルに人の心は動かない。その魂を芽生えさせるのが振付師の力。29

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