『SDM』 VOL.24
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5分でも何を訴えたいのか伝わる作品を観たい。―多木さんのお仕事って、どのようなことをされているんですか? もとは広告のプロデューサーをやっていたんですよ。それからイベントのプロデュースを始めた感じですかね。もともと映画が好きだったので、そういった仕事も多いです。例えば、映画が公開される時、いろんな公開記念イベントをやりますよね!? そういったイベントをウチの会社でやることが多いですね。―ハリウッド映画の製作などにも関わっていらっしゃるんですよね? 映画の製作に関わるようになったのは、ここ10年位の話です。最近では、「インセプション」や「硫黄島からの手紙」の日本を舞台に撮影するシーンのコーディネーターをやりました。ダンス業界に近いところでいうと「タンゴ・アルゼンチーノ」などブロードウェイ・ミュージカルのキャンペーンプロデュースもいくつかやりましたよ。―最近では、ストリートダンスにも興味をもって頂いて、舞台公演などご覧になられたんですよね!? そうですね。ただ、厳しいことを言わせてもらうと、この業界、ちょっとエンターテインメントとして成立していないものが多すぎですよね……。「楽しませたい!」とか「感動させたい!」とか、お客さんに伝えたい1つの筋があって、それを組みたてられた構成や演出を駆使して伝える。そうしてはじめて〝エンターテインメント〞と呼べるものになる訳ですよ。 仮に自分の作品に5分しか時間がないとしても、ショートフィルムやCMもみんなそうじゃないですか!? 5分間自分のやりたいことを好き勝手並べて、「ダンスが上手だね」っていうだけで終わっちゃうものは、エンターテインメントとは呼べないですよね。いいものを創る人は、作品の中に確固たる意思がある。―では、いいエンターテインメントをつくるのは、どのような素質をもった人だと思いますか!? 例えば映画監督でも、撮影中に内容を変えることはあるわけですが、「自分はこれを訴えたい」というものは常にハッキリしている。スタート地点に「これを創りたい!」という確固たる意思がありますよね。〝何を訴えたいか分かんない映画〞なんか観てもしょうがないじゃないですか!? それは、ダンスも一緒だと思いますよ。―このままダンスが、エンターテインメントとして伸びていくには何が必要だと思いますか? 僕が考えるに、ストリートダンスって観ていてすごく可能性を感じるけど、〝エンターテインメントとしてのゴール〞が設定されていないと思います。スクールの生徒だけではなく、一般の人にチケットが売れないことには、エンターテインメント業界の仲間入りはできないですよね。もっとみんながそのことを真剣に考えるべきだと思いますよ。 あと、小さくても〝常設でダンス公演をやっている劇場〞があるといいんじゃないかな?「東京に行ったら、あそこにダンスを観に行こう」みたいな。年に数回、公演やイベントがあるだけじゃエンターテインメントとして広がっていかない。レッスンだけではなく、プレイヤーとして食えるようになるためにも、そういった環境は必須だと思います。―最後に、『Legend Tokyo』では、どんな点に注目して審査しようと思いますか? まず、エンターテインメントとして、その人がどれだけ観客を魅了できたかという点だと思います。そして、もう1つは、〝演出家としての意図〞が感じられるかという部分ですね。正直、ダンサーの上手い下手っていうのは関係ない。 そして、これはコンテストですが、多分誰も「評価しに行こう」なんて考えていないと思います。観客はもちろん、審査員もきっと「楽しみにしている!」という気持ちがすべてだと思いますよ。だから、振付師も出演ダンサーも、その意味をしっかり考えて、頑張って欲しいですね!今、ストリートダンスは、広告や企業イベント、そして映画などの世界にも活躍フィールドを広げつつある! そして、それらすべての業界に精通し、エンタメにこだわった展開を長年続けてきたプロデューサーが株式会社メディアウェイブの代表取締役、多木良國氏だ。国内外を舞台にそうそうたる経歴をもつ彼の視点に映る、日本のストリートダンス業界とは!?広告・映画業界としての視点。#07取材・文=木村恵子text by Keico Kimura写真=有馬里沙photo by Risa ArimaProfileTBSやYAMAHAなど、日本を代表する大手企業のエンタメ系広告・イベントを数多く手がけてきたプロデューサー。特に映画の公開プロモーションに関する経歴は数知れず、「マトリックス」、「ラストサムライ」など多くの有名映画を手がけてきている。近年では邦画、ハリウッド映画のコンテンツ制作にも深く関わっている。株式会社メディアウェイブ 代表取締役多木 良國Job FileTBSの新シンボルマークを告知する企業広告TBSの「世界陸上」放映を伝える新聞広告映画キャンペーン「ラストサムライ」公開記念イベント in 六本木ヒルズ お台場・ヴィーナスフォートのオープニングイベント東京都主催『東京2000年祭「千年文化芸術祭」』ハリウッド映画のジャパンプロダクション・スーパーバイザーとして、日本側の撮影仕切りを担当。広告制作イベントプロデュース 映画の撮影コーディネート確固たる意思のない作品は、エンターテインメントとして成立しない。31

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