『SDM』 VOL.28
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世界中でストリートダンサーが最も憧れる街、アメリカのロサンゼルス(以下略、L.A)。映画の都ハリウッドを擁するこの地では、ミュージック・ビデオや米国ダンス番組をはじめ、世界中に多大な影響を与える映像の多くが撮影されている。それだけに振付けをする有名コレオグラファー、そしてダンサーが世界中から集まり、結果、日本で〝L.Aスタイル〞という言葉があるとおり、まさに世界最先端の振付けを発信し続けている街となっているのだ。 そしてL.Aには日本には少ない、ミュージック・ビデオのような〝大人数振付け作品〞で競うコンテストも数多く存在する。その中でも最も由緒あり、最高峰と名高いコンテストが、『VIBE Dance Competition』(以下略、『VIBE』)だ! 出演ダンサー15人以上限定という過酷な条件。通常は、よっぽど現地で実績のあるクルー以外は、そのステージに立てない。しかし昨年7月、東京で開催されたアジア最高峰の振付け作品コンテスト『Legend Tokyo』に、『VIBE』主催者自身が来日し、その目で確かな作品を選定することによって、初めて現地で無名のクルーの挑戦が実現した。 日本を代表して、まさに前代未聞の試みに挑むは2つの作品クルー! 〝ファースト・レジェンド〞長谷川達也率いる「DAZZLE」、そしてKAORI率いる「KAORI ALIVE」だ。両チームとも数日前から現地に入り、練習を重ねて気合は充分。もし優勝すれば、日本のダンス・シーンが、いっきに世界へと広がることは間違いない! だが、逆の評価もある。厳選されたハイレベルな作品だけが集まるだけに、下手をすれば日本の振付力が見下されるキッカケにもなる。数年先まで、このようなチャンスが無くなる可能性もありえる。 まさに日本ダンス・シーンの新たなる命運を懸けて。1月29日、サムライたちが挑む幕があけた!日本のコレオグラファーが世界に広がる!その命運は2人の作品の手にゆだねられた。 会場はロサンゼルス郊外にあるアーバイン。『VIBE』は普段はフットボールなどの競技が行なわれているスタジアムで開催される。 出場クルーは朝から会場入りしてリハーサル。これが日本だったら、張り詰めた空気感であろうが、関係者が歓声をあげてリハ中の作品を応援しているのが印象深い。バックヤードのフレンドリーなノリも、カリフォルニアならでは。周囲の公園を見回すと、どのチームも出番ギリギリまで練習している。開演は夕方5時。スクリーン上にカウントダウンが始まり、いよいよ大会がスタートした!『VIBE』はYouTubeで広がった部分が大きいため、その映像は何度も見たことがあった。しかし、実際にリアルなステージで観ると印象がまったく違う! コンテスト出展作品一発目から、かつて見たことも無い世界がステージ上に広がったのだ! これぞ、大人数作品の魅力ともいうべきエンターテインメントな構成! アメリカのダンサーならではのパワフルなムーブ! どの作品も平均出演ダンサーは40人、それが驚異的に振りを揃えて踊る! あまりもの迫力に開いた口が塞がらない。 日本ではあまり見られないような、スピーディに出演ダンサーたちが入れ替わるフォーメーション術も、ライブで見ると、その迫力、エンターテインメント性の高さにうなづける。ステージ上に立体セット等は無いが、その分、作品ごと足場となる台を暗転中に持ち込み、それをダンサーたちが動かすことによって、高低差の見栄えをつけている。 ジャンルの区別はなく、だいたい、どのチームもオールジャンルを踊る。そして、それを使いこなして、どう作品を創りあげるかが勝負のポイントのようだ。 そして、何より驚くのはオーディエンスたちの歓声だ! 現地クルーはほぼ応援団を引き連れており、出番前にMCがコールするだけで大歓声が沸く。日本勢の応援の少なさは完全にアウエイ。日本代表チームの命運に焦りを感じてくる。未だかつて見たことがない世界!創造を超えたハイレベルさに脱帽。 そして1部後半。いよいよ日本代表チームの初陣、KAORI ALIVEの登場だ! 当然ながら、MCコールをされても他作品に比べて歓声が少ない。〝日本のオリジナル作品〞と聞いて、若干だが小馬鹿にしたような声があることにも気付く。 作品内容は、『Legend Tokyo』出展作品と同じ「レクイエム」。暗転中に、先の震災のこと、そしてこの作品に込めたコレオグラファーKAORI本人のメッセージが読まれる。暗転後、赤い衣装を着たダンサーたちが妖しく浮かびあがった瞬間も「日本人が何をやるんだ!?」といった空気感は漂っていた。 しかし突如、前半の見せ場、出演ダンサーのダイナミックなフロアウェーブが、ステージ上手のKAORIに一斉に迫りくるシーンが始まる! 『Legend Tokyo』の時よりも数倍も磨きを増したムーブ、大津波を彷彿させるこの演出に、会場内に大歓声が沸く! 「OH! MY GOD!」。悲鳴にも近い歓声も聞こえる。かなり反応が解りやすい。 ここまで大会を観てきた流れで確かなことがある。基本的に、現地のダンサーたちは、大人数で振付けをビッシリと揃えるシーンに1番沸くのだ。そして、その予想は的中した。作品中2曲目の見せ場、ダンサーが1つの固体にみえるほど一斉に揃えたダイナミックな群舞に、先程を越える大歓声が会場内に響いた! そして6分という時間が過ぎた時。オーディエンスたちは演目前には想像できないほどの大歓声で彼女たちを称えてくれていた。現地の下馬評を覆した魂のムーブ!KAORI ALIVE、奇跡の逆転劇。今大会のジャッジ陣。左からAngie Bunch、Jenny Kita、Elm Pizarro、Di Moon Zhang、David Moore、Laura Edwards、Kyle Hanagami、Gina Starbuck。LOS ANGELS PRESS #1!総力特集VIBEDanceCompetition20

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