『SDM』 VOL.28
23/60

さまざまなジャンルを散りばめているとはいえ、現地作品は意外と作品ごとの個性が少ない。この流れなら、もしかして〝日本優勝〞の可能性があるかも!? 期待も高まり、大会は第2部へと突入! ショーケースを挟み、いよいよ次の日本代表作品〝DAZZLE〞の出番だ。 KAORI作品の好評もあり、MCが日本の作品であること、『Legend Tokyo』というコンテストで優勝した作品であることを告げると歓声と拍手が飛び交う。 オープニングのピアノのメロディにあわせた静かなダンス。息を呑んで見入る観客に高まる期待が感じられる。そして、まるで意識をもっているかのように蠢く赤い布。文字どおり彼らが観たことがない世界観に、驚きと感嘆の歓声があがった! しかし何か状況が違う。『VIBE』では、照明はある程度のオファーを出せるのみで、細かな指定はできないのだ。『Legend Tokyo』では、後で薄っすらと浮かび上がってきた傘が最初から見えてしまっている。オープニングの印象が少し違って見えた。 独創的なDAZZLEスタイルのダンス、傘を巧みに使い展開するシーンに会場全体の視点が吸い込まれていく。そして作品のクライマックス! 赤い布が2人のダンサーに波のように迫り、一瞬で舞台奥に引き込まれていくシーンでは歓声と共に一斉に大拍手! 作品後には、今までのパーティ乗りの歓声とは違う、まるで劇場内で素晴らしい作品を称えているかのような、拍手交じりの歓声がスタジアムの中に響き渡った。 しかし、照明による演出が使えなかったデメリットは大きいだろう。とにかく舞台が明るすぎて隅々まで見えてしまい、この作品の最大の魅力である〝巧みな視点誘導〞が機能していなかったのだ。作品全体がもつ世界観も、本来とは少し違った印象で見えた。 やはり彼らの作品の真髄は、細部までこだわって創れるステージでないと観れないものだったのかもしれない。 会場内に残る感嘆の余韻。しかし、それは次のクルーでいっきに打ち消される。 溢れんばかりのエナジーと怒涛の演出でオーディエンスを沸かせ続ける今大会最高峰の盛りあげ作品が登場したのだ! 彼らの名は〝ACADEMY OF VILLAINS〞。今までのチームが比べものにならないほど正確に揃った振付け。これでもかと次々に畳み掛けて展開されるダイナミックなルーティンの数々。フォーメーション一つひとつがとってもエンターテインメントで出演ダンサーたちのキャラづくりも抜群だ! 作品の最後には小洒落た演出もあり、作品後には、最高峰の大歓声が会場を揺らし始めた。そしてこの瞬間、会場にいた誰もが思っただろう。「ここが優勝に違いない」と。 2部後半には次々と現地の人気クルーが登場し、大会はさらに加熱する! そしてコンテスト部門の大トリとして登場したのは過去2大会の覇者〝CHOREO COOKIES〞! 多くの有名ダンサーが所属し、出演ダンサーのメンツからケタが違う現LA最強チームだ。 スピリチュアルな雰囲気で作品は始まり、開始後、なんと彼らはガムテープで口を塞いでしまう。「俺らは鼻の呼吸だけで踊ってみせる!」宣言ともいえるべき堂々とした態度で出演ダンサー全員が仁王立ち。その直後、まさかの怒涛の音ハメがステージを揺らす! 今までにない驚きともいえるべき大歓声! その後も呼吸が出来ない苦しみを表した振付けを交えながら、さまざまなジャンルをテクニカルに魅せ続ける。 そして作品がクライマックスに達した瞬間、彼らは一斉に口に張っていたガムテープを投げ捨て、今大会最高峰ともいえる見事なヒップホップの大人数ユニゾンを披露! 細かな音の取り方、ダンサー個人のグルーヴまで完璧に揃えて魅せる、クールで美しい振揃えに感動すら覚えてくる。まさに〝王者〞に相応しい貫禄のステージをみせてくれた!今大会最高峰の作品が次々と登場!そして、驚愕の〝CHOREO COOKIES〞!!世界が初めて、日本のダンス・エンターテインメントを認めた瞬間。本領が発揮できない環境ながらも、現地の大きな感嘆をえたDAZZLE!ジャッジ結果は単純な点数の合計で行なわれ、審査員同士の話し合いなどはない。だから結果発表は日本の感覚からすれば思いのほか早く行なわれた。 現地でも史上最高峰といわれる激戦、結果に対して緊迫の空気が走る。第3位に呼ばれたのは……、「KAORI ALIVE」!唐突の発表に戸惑いながらも「信じられない」といった顔つきで、ステージに現れるKAORI。トロフィーを受けとると共に泣き崩れる。その姿に会場内から大声援が響き、彼女を温かく祝福してくれた。日本オリジナルの振付け作品、それを世界最高峰のシーンが認めた歴史的瞬間だ。 第2位は今大会の盛りあげ番長であったACADEMY OF VILLAINS。そして優勝は、圧倒的な作品をみせたCHOREO COOKIES。見事堂々の3冠だ!大会終了後、KAORI ALIVE、DAZZLEの両クルーに次々と現地のダンサーたちが訪れ「本当に素晴らしい作品だった!」、「今日、キミたちの作品に出会えて嬉しい!」と賛辞の言葉をかけ続けていた。 大会翌日、本誌インタビューを終えた主催者Jason Parkが帰り際にこう聞いてきた。「来年も日本から素晴らしい作品が来てくれるんだよね!?」。 先陣をきってLAに乗り込んだ2人のコレオグラファーと43名のダンサーたち。彼らの活躍により、日本のダンスがもつ素晴らしい可能性が、また1つ広がったことは間違いない!次なる目標、〝優勝〞という未来を残して。当日の会場には、全米各地から、さまざまメディアが取材に来てきた。21

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る