『SDM』 VOL.28
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――長谷川さんが作品を作る時は、普段まず何から考え始めるのですか?長谷川‥エンタメ性を重視する時は、コンセプトや物語、その作品を通じて伝えたいことや見せたいことを探すことから始まることが多いですね。簡単に言えば、「どういうテーマで作品を作るのか」ということです。果たしてそれがSFなのかホラーなのか、恋愛ものなのか……。そうしてテーマが見えてきたら曲や衣装、構成などを決めていきます。――なるほど、〝まずテーマありき〞という感じですか?長谷川‥そういうわけではないですよ。音楽とダンスの気持ち良さや構成の面白さ、ダンスの迫力だったり、それのみをテーマにした作品にも面白いものはたくさんあります。ただ僕は、ダンスを踊るだけでは見てくれる人に面白さが伝わりきらないこともあると思うから、何か印象に残りやすい、伝わりやすい方法を考えるんです。その1つが作品にテーマをつけることなんですね。――具体的な案って、どういうところから考えつくんですか?長谷川‥普段の生活の中で、例えば映画や小説、テレビ番組でも、ひらめきを与えてくれるものは身近にありますよ。ただ、実際テーマのある作品のフリを作ろうとすると、〝ダンスで何かを表現する〞という、また違った難易度が加わってきます。飯塚‥達也さん(※長谷川)はそういうところが上手いんですよ。「ダンスで伝わることと伝わらないこと」というのを冷静に見ていますよね? 何でもダンスで伝わるとは考えてない。DAZZLEは「ここの部分はダンスで伝わらないから衣装で表そう」という組み立て方をしていますよ。――フリ写しの時には、そういったテーマもダンサーに説明するんですか?長谷川‥もちろん、作品の理解度にも影響しますからね。普通に踊ってもらうのと、例えば「悪いきつねの感じで」と伝えて踊ってもらうのは、同じフリをやっても違いが出てきます。飯塚‥そういった設定って、表情とか細かい動きのニュアンスだったり、踊り以外の部分に如実に影響するから、特に大人数作品になった時の統一感はかなり違ってきますね。長谷川‥確かに大人数の時は、表情が揃っているだけでも伝わってくるエネルギーがかなり違う。意識が揃わないと動きも揃わないですよ。――他に作品を作る上で必要だと思うことはありますか?長谷川‥想像する力と、それを形にする力でしょうか。おそらく誰でも「こうしたらきっと面白い」ってイメージはあると思うんですが、そのイメージを具現化できない人は多いと思います。イメージを形にするのって、すごく難しいですから。でも僕はそれが明確になるまで基本あきらめないんですよね。飯塚‥お客さんに向けて作っている限り、自分の判断が絶対ということはないですよね。〝自分以外の人が見る〞ということが大前提。自分じゃない人からどう見えるかというのが大事だと思いますよ。指南=長谷川達也、飯塚浩一郎lecture by Tatsuya Hasegawa、Kouichiro Iizuka構成=長濱佳孝constructed by Yoshitaka Nagahamaラファーが語る(左から)長谷川達也、飯塚浩一郎DAZZLEオリジナルの表現スタイルで見る者を魅了する、長谷川達也主宰のダンスカンパニー。過去5回にわたり単独公演を開催。国内演劇祭における最優秀賞の受賞や、韓国、ルーマニア、イランの国際演劇祭にも招聘されるなど、その実力は国内外で高く評価されている。第三回DAZZLE流、作品づくりの極意おとぎ話を思わせるような和の世界に、中世、近未来など、DAZZLE作品の物語設定の幅は広い。『Legend Tokyo』優勝作品の人物設定は、「1組の男女、その仲を引き裂く悪い狐たち」。振付け作品を作る方法は、ダンサーによって千差万別。正解のないこの命題を、DAZZLEの2人が斬る!46

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