『SDM』 VOL.29
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一.国際ダンス情勢 〜イラン編〜――今年の2月にイランで公演を行なったとお聞きしましたが、詳しいお話を聞かせて頂けますか?長谷川‥僕らDAZZLEは2月に、イランの首都テヘランで行なわれた中東最大の国際演劇祭『ファジル国際演劇祭』に招聘されて、代表作でもある公演「花ト囮」を披露してきました。飯塚‥今回の演劇祭のプロデューサーが昨年のルーマニアで行なわれた『シビウ国際演劇祭』(※SDM VOL.26参照)の時に僕らを見て、「ぜひ我々の演劇祭に来て欲しい!」とお声がかかったんですよ。――現地のダンス事情はどうでした?長谷川‥イランでは国際情勢と宗教上の理由から、本番前日に作品を検閲されました。ちゃんと検閲官がいて、「この部分を見せてくれ」と言われるんですよ。そうすると、「腰を回したりひねるのは卑猥な動きだから、(宗教上の問題になるので)やめてくれ」と言われ、さらに全員で合わせて踊る部分(ユニゾン)のシーンをすべてフリーの動きにできないかと相談されました。飯塚‥何でも、「大勢で同じ動きをするのはマイケル・ジャクソンを彷彿とさせてアメリカ的である」という理由からなんです。イランとアメリカは政治的に対立しているから、それはダメだと。長谷川‥僕らも、それじゃとてもできないと伝えて、お互いある程度譲歩することになりました。出来る限りフリは直すことにして、ホテルで夜な夜なフリを作り直しましたね。飯塚‥事前にちゃんと僕らのパフォーマンス映像を送っているのに、本番前日の夜に作り直せって言ってくるのがまたすごいですよね(笑)。長谷川‥しかも検閲官の人も少し踊れるらしくて、「俺も手伝うからさ! こんなのどう!?」とか提案してくるんですよ。ダンスカンパニーとして呼ばれてダンス公演を見せにはるばる来たのに、なぜアナタの振付けを踊らなければならないのかと(笑)。――現地のお客さんの反応はいかがでした?長谷川‥色々と困難な状況でしたが、お客さんの反応は今までで一番すごかったです!飯塚‥「映像化したい!」という現地の映画監督や、「芸術の授業で(今回の舞台映像を)使いたい!」と言ってくださる大学教授の方もいましたね。長谷川‥日本大使館の方も観に来て頂いて、「イランで日本の団体がこんなに賞賛されているのは初めて!」と言って頂いたんですよ。――今回のイランでの活動で何か思ったことはありますか?長谷川‥今回、深く思ったことは、イランに比べると日本での表現活動ってほとんど制限がないと言っていいぐらい、恵まれているんだなって。でも、決してイランのように様々な制約がある国の作品が劣っているわけではない。例えば、恋愛がテーマだとしたら、女性は肌を露出しちゃいけないし、抱き合うことも、キスをすることもできない。ただ、そうした制約があるからこそ生まれるアイディアがあって、それってすごく芯があって印象深い。イランの映画が海外の映画賞を獲ったという話もありますからね。様々な制限のある中で、どうにかしようという発想を僕らも鍛えないといけないと思いました。何をしてもよいという環境が必ずしもプラスではないんです。指南=長谷川達也、飯塚浩一郎lecture by Tatsuya Hasegawa、Kouichiro Iizuka構成=長濱佳孝constructed by Yoshitaka Nagahamaラファーが語る(左から)長谷川達也、飯塚浩一郎DAZZLEオリジナルの表現スタイルで見る者を魅了する、長谷川達也主宰のダンスカンパニー。過去5回にわたり単独公演を開催。国内演劇祭における最優秀賞の受賞や、韓国、ルーマニア、イランの国際演劇祭にも招聘されるなど、その実力は国内外で高く評価されている。第三回 国際ダンス情勢イラン編/舞台照明における思考法本番の劇場は豪勢なオペラハウス。DAZZLEの本番初日には、イラン大統領がこの会場で演説していたという由緒ある劇場だ。終演後、現地の観客から大きな賞賛を受けるDAZZLEのメンバーたち。今回のテーマは2つ。今年2月にイランで招聘公演を行なった際の現地での考察。そして、舞台作品に必要不可欠な〝照明〟についてその方法論を語る!62

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