『SDM』 VOL.29
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二.舞台照明における思考法――作品づくりの中で、照明はどの段階で考え始めるんですか?長谷川‥色んなことを同時に考えているので、「照明が先に思いついて物語のどこかにあてはめる」ということもあるし、逆に「この物語だったらこういう空間がいい」ってそこからデザインすることもありますよ。――効果的な照明を考えるには、やはり専門的な知識も必要ですか?長谷川‥もちろん、知識を持っていることは大いに役に立つと思います。僕も専門的な知識があるわけではないですが、学生の時、ダンス公演で照明を考えていた経験が糧になっていますね。他にも、舞台公演を観る時は照明のアイディアを見るようにしたり、イベントでお世話になった照明さんに実際に機材を聞いたりもしていました。――照明って実際に操作をするプロの照明さんの腕による部分が大きいのでしょうか?長谷川‥まず知っておいて欲しいのは、「照明さん」と一口に言っても、みんながみんな同じようにできるわけではなく、個性があります。アップテンポで曲に合わせるのが上手い人もいれば、コンテのような舞台空間を作るのが上手い人、ムービングを使うのが好きな人……、さまざまなタイプの照明さんがいますね。さらに慣れている方とそうでない方の照明は全然違いますし、例えば「この角度からこの光量を当てると影がこうなる」ということが専門的にわかっている人の照明だと後から映像を見た時に全然違う。ステージに立っていてもそれはわかりますね。――では、プロの照明さんとスムーズなやりとりをするにはどうしたらよいですか?長谷川‥多くの場合、照明さんも時間の無い中で作業をしているので、ダンサー側の準備をしっかりしておくべきだと思いますね。その中でも、やはり照明プラン(用紙)は大事です。ただでさえ時間に余裕が無い状況下で、描き方が上手くない照明プランを渡されたりすると、照明さんがそれを理解しづらいし、時間もかかってしまう。だから僕は、与えられたフォーマットの照明プラン用紙と併せて、照明チャートを作っています。これが正解ではないですが、素人なりに伝わる方法を模索しました。細かく指定するので、作るのは結構大変ですし、受取手の好みもありますからあくまで参考ですよ。――では最後に、劇場に入ってからのテクニカルリハーサルの進め方のコツなどはありますか? 昨年の『Legend Tokyo』では進め方が上手いと評判でしたが……。長谷川‥事前準備をしっかりやって、ステージ上でやることをどれだけ少なくできるか、ということですね。ステージ上でやらなければならないのは、主に場当たりと照明合わせ。場当たりに関しては事前にどこか広い場所を借りて、ステージ実寸の広さで練習を済ませておけば、テクリハではほとんど照明の合わせ方にもっていけるんです。両方一度にやろうとすると、どうしても時間がかかってしまいますからね。あとは予想外の事にそなえることも大事です。例えば「事前に渡された図面より、実際のステージの方がせまかった」なんてことはよくありますから、練習の段階でちょっと狭めにやってみたりします。実際にステージが狭くて、「練習でやっておいて良かった!」という経験もありますから、「たぶん大丈夫だろう」という認識は持たない方がいいかもしれませんね。多様な情報があふれる現代のダンスシーン、「どうすれば他より抜きんでることができるのか」を考え、実践するのは容易ではない。そこで「SDM」では、2011年『Legend Tokyo』で〝1st Legend〞に輝いた長谷川達也を講師に迎え、全6回の史上講義を実施! 第3回目の今回は国際情勢におけるダンス、そして舞台照明の思考を伝授!日本最高峰のコレオグDAZZLEオフィシャルHP http://www.dazzle-net.jp/何秒からどれくらいかけて照明がフェードイン(F.I.)するか、さらにそこから別の照明が加わり、その後全体照明がカットアウト、サスの位置指定……などなど。照明の全体の流れが合理的に描かれている。舞台空間と物語の世界観づくりにおいて、舞台照明は大きな要素と言えるだろう。長谷川達也オリジナルの照明チャート(概略図)63

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