『SDM』 VOL.30
17/68

他業界、そして海外にも通じる検定を。――JSDAストリートダンス検定に関して、先ほどのお話から、やはりどんな人にでもそのすごさが伝わることが重要とお考えですか? やはりそれがダンサーの社会的信用と地位の向上につながると考えています。例えば、英語の場合、LAに3年留学していたとしても、実際どのくらいしゃべれるのかわからないですよね? でも、それが「TOEIC何点取ってます」となると、基準となるものになるので、拡がる可能性があります。そういった共通の認識をダンスでも確立することが、ダンサーの社会的な信用になると確信しています。 もちろんダンスには表面的なスキル以外にも、クリエイティブな部分も要素としてあるので、〝この検定で全てがわかります〞とは考えていません。ただ、この検定が考え方の1つの基準になるとは思っています。――ちなみに日本で一般的な検定の場合、レベルの名前として「1級、2級……」という表現が浸透していますが、ストリートダンス検定ではなぜそういった表現にしなかったのでしょうか? 「1級、2級」ではなく、なぜ「エレメンタリー、インターミディエイト」という呼び方なのかという事ですね(左図)。これは世界を見すえてのことなのです。このエレメンタリー・インターミディエイト等の表記は一般的には世界共通となります。アメリカのクラスでもこの表現が多いと思います。日本の外に出ても、海外でも基準となり通用するものがあることですごく伝わりやすい。逆に、海外から日本にダンス留学に来るダンサーも年々増えています。そういった人たちにとっても通じやすい、グローバル化を視野にいれています。正解のないダンスの形――では、JSDAストリートダンス検定の内容は実際にどなたが考え、決定されているのですか? 私たちがそういったカリキュラムなどを作る時に一番気をつけているのが、偏らないようにすることです。ダンスは様々な人の考え方やスタイルがあるから、ある意味では正解はありません。だから、誰か特定の人と作るのではなく、弊社のインストラクター(JSDA公認インストラクター)から意見をもらい作っています。300人前後いるので、〝全員で同時に〞というわけにはいかないのですけど、全てのダンサーが参加して作るというスタイルを推進しています。 また、一度作った内容を継続して、毎年ブラッシュアップしています。色々な人の視点が入り、バージョンアップされていきます。――でも、そんなに大勢の意見をまとめるのは大変ではないですか……? そうですね、ランニングマン1つとっても、「ここまで腰を落とすのが正解」という人もいれば、「首もこうやってノリをつける」という人もいる。でも、こうやって色んな人の意見を総合して行くと、1つの形に収束していくんです。そういった平均の形でやっていますね。 ダンスシーンは、やはり誰か古参の方が言ったことには反論できないみたいな雰囲気がある部分もあるかと思います。でもダンスは、色々な人が関わって出来た文化なので、誰か1人の意見が100%正しいということはないとは思っています。だから、多くの人の意見を平均してフラットなものにすれば、一般的に多くの人が理解できるものになると思っています。JSDAストリートダンス検定によって、ダンサーの仕事が切り開かれる――JSDAストリートダンス検定に受かった後の、具体的な優位点などは何かあるのでしょうか? JSDAとしては具体的に4つの展開を用意しています(別枠トピック参照)。その中でも、「オーディションの優先通過」という項目ですが、これはダンサーの仕事を増やしたいという想いがあります。例えばアーティストがバックダンサーを集める時、特定の人脈で募集することが多いのが現状です。でも本当は、アーティスト側も多くの人を見てみたいと思っています。 オーディションをやると1,000人規模のたくさんの応募が来ます。そこにかかる時間や人件費や運営などを考えると、どうしても毎回オーディションをして人を決めるということが難しいのです。そういう状況で、JSDAストリートダンス検定があって、アドバンス以上のダンスライセンス取得者は1次審査パスという形にすれば、そこにかかる時間や費用も格段に抑えられる。これは1つの例ですが、そうやって見えやすいダンスの制度を整備することが、結果的にダンサーの仕事が増えることにつながると考えています。丹野雄貴エイベックス・プランニング&デベロップメント株式会社コンテンツエージェント事業部JSDA(日本ストリートダンス協会)責任者08年よりエイベックス・プランニング&デベロップメントに入社。現在はエイベックス・グループのダンス事業全般に携わり、JSDAの運営をはじめ、ストリートダンスの普及・発展に努めている。 JSDA公認ストリートダンス検定 ダンスライセンス取得後の展開JSDAストリートダンス検定検定レベル基準【 ARTISTIC EXPRESSION 】表現・技術【 STEP&BODY CONTROL 】基礎ステップ・基礎ボディコントロール【 RHYTHM&BALANCE 】リズム・バランス【 TECHNIC&MOVE 】テクニック応用表 現応 用基 礎入 門オーディションの優先通過エイベックス・プロワークスより提供されるオーディションにおいて、ダンスライセンスレベルをもとに審査を優先的に通過する事ができる上位クラスのテスト免除取得ダンスライセンスレベルをもとに、検定上位クラスへのテストが免除される。ワークショップ・イベントの優先受講世界で活躍するトップダンサーやアーティストと共演できるイベントやワークショップを優先的に受講できる。ダンス活動のサポート「アドバンス」ダンスレベル取得者にはスキル向上の為のレッスンを付与し、優先的なダンスワークが提供される。15

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る