『SDM』 VOL.30
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一.ダンス作品における構成要素――今年の4月に開催された自身の公演『花ト囮』に関して、初の〝再演〞ということで工夫されたことはありますか?長谷川‥〝再演〞というのは、ゼロから公演を作るのとはまた違った難しさがありました。特に考えたのが「どこまで変えて、どこまで変えないか」という部分ですね。初演やそのDVDを観ているお客さんに対し、どこまで予想や期待を裏切っていいのかという、そのバランスには頭を悩ませました。結果、初演時よりもっと伝わりやすいように流れを変えたり、演出的に未熟だった部分を再構築した感じですね。――今回の再演では、特に衣装が初演のものより一新されていたのが印象的でしたが、どういった意図があったのですか?長谷川‥前回公演の『Re:d』から引き続き、衣装はデザイナーの北村道子さんにデザインして頂いてます。初演時は衣装は僕らで考えて、白装束や着物など、結構直接的に〝和〞をイメージしたものが多かったのですが、今回はそれに対してかなりシンプルな装いになっています。北村さんの意向のひとつに「和の〝あざとさ〞で世界と勝負してほしくない」というものがありました。もちろん日本古典や時代劇も大いに好きな表現ですが、「DAZZLEが和を表現するなら」を考えたときに、違った方法の表現に挑戦することが新しい何かに繋がると思い、彼女に共感したんです。飯塚‥衣装を抽象的にしたことで、観る人に想像させる余地が増えたので、アートとして意図的にレベルをあげた感じですね。ただ、初演時の公演を観たお客さんからは「わかりにくくなった」という声も頂いたので、〝わかりやすさ〞と〝表現者としての挑戦〞のバランスはまた難しいなと思いましたね。――また、5月に出演したイベントについて、披露された作品は、以前にアニメ映画の音楽で踊った作品のリバイバルなんですよね?長谷川‥12〜3年ぐらい前、TV番組の「RAVE2001」や『JAPAN DANCE DELIGHT』に出ていた頃に漫画「AKIRA」(の映画)の曲を選んだことがありました。当時から周りと違うことをやりたいと思っていて、ヒップホップは大いに好きでしたが、だからといってヒップホップの曲で踊るのではなく、例えば違うジャンルの曲をストリートダンスのテクニックで踊ったら面白くなると思ったんですよ。――それからどうやって「アニメや映画の音楽で踊ろう」という発想になったのですか?長谷川‥元々映画が好きだったので、その音楽にも興味がありました。映画音楽ってシーンに合わせて急に激しくなったり静かになったりするじゃないですか? それに踊りを当て込んでいったら面白くなると思ったんです。そういったサウンドトラックで踊るという発想は、ストリートダンスではDAZZLEが先駆けと言えるかもしれませんね。それが功を奏して、「AKIRA」の作者である大友克洋さんの原画展イベントで踊らせて頂きました。敬愛するご本人の目の前でその作品にちなんだパフォーマンスをすることが出来たのは非常に感慨深いものがありました。指南=長谷川達也、飯塚浩一郎lecture by Tatsuya Hasegawa、Kouichiro Iizuka構成=長濱佳孝constructed by Yoshitaka Nagahama(左から)長谷川達也、飯塚浩一郎DAZZLEオリジナルの表現スタイルで見る者を魅了する、長谷川達也主宰のダンスカンパニー。過去6回にわたり単独公演を開催。国内演劇祭における最優秀賞の受賞や、韓国、ルーマニア、イランの国際演劇祭にも招聘されるなど、その実力は国内外で高く評価されている。第五回 ダンス作品における構成要素/伝わる作品と作品評価今年の4月に行なわれた、彼らの代表作とも言える『花ト囮』の再演公演。初演時からの演出的な改良が多々見られた。今年の5月に行なわれた大友克洋原画展のイベントでパフォーマンスを行なうDAZZLE。作品は13年前のリバイバルだ。今回もテーマは2つ。今年4、5月に彼らが行なったパフォーマンスから読み解く作品の構成術。そして、観る者に伝わる作品、「評価されるということ」についてを語る!40

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