『SDM』 VOL.30
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二.伝わる作品と作品評価――率直に「観る人に伝わる」作品を作るにはどうしたらいいでしょうか?長谷川‥まず「何を伝えたいのか」が重要でしょう。それが踊りなのか、感情なのか、それとも物語やキャラクターなのか…。正直、5分のダンス作品で何かテーマを表現したり伝えたりすることはそんなに簡単じゃないんですよね。踊っている自分たちはわかっていても、観ている人たちには思ったより伝わってない。「何となく分かる」ではダメなんです。ほとんどの場合、分からないものにはなかなか感動できないですよ。飯塚‥ダンスが好きな人の場合は、作り手の意図していることを読み取って理解しようとしてくれますが、世間一般の多くの人は考えさせられることを嫌がる傾向があります。だから5分で何かを伝える場合、「表現することをすごくシンプルにする」というのは1つの方法だと思います。長谷川‥「踊りたいダンスがあって、そこにストーリーを足していくという発想」と、「伝えたいストーリーがあって、そこにダンスを付けていくという発想」の違いもあると思います。ダンス作品だからダンスはもちろん重要なんだけど、表現したいこととのバランス感覚は必要だと思います。飯塚‥僕の仕事(※広告クリエイティブ)で言うと、「何でどこまで伝わるか」ということにすごく敏感なんです。言葉だったらここまで伝わる、映像だったらここまで、音楽だったらここまで。ダンスも同じで、動きで伝わること、衣装で伝わること、音楽で伝わること、構成展開で伝わること……。そういったことをちゃんと計算しないと、意図している事を観る人に伝えるのは難しいと思います。――では、ずばり『Legend Tokyo』に勝つために何かアドバイスをお願いします!長谷川‥多くの知識や経験を得ることです。世界には様々な表現があって、舞台にしても映画にしても、面白いものもつまらないものもたくさんあります。そんな中で自分の作る作品はどうなのか、もちろん好みもそれぞれですが、自分や他人が何をもって感動するのか、それを客観的に見極められるだけの経験が必要だと思います。飯塚‥例えば〝ダンサー以外から客観的な評価をしてもらう〞ということもすごく必要だと思いますよ。僕らも公演のアンケートで「わかりづらい、つまらない」という声をもらったこともあります。今のダンスシーンには、そういう意見に対して「こいつはわかっていない」って反発して聞き入れない姿勢の人もいるかと思いますが、「つまらないと思った人がいる」という事実は粛々と受け入れるしかないですよね。長谷川‥創る方としては心がえぐられる想いですけどね……。ただ、「世の中に自分の作品を出す」という事はそういう事だと思います。――いろんな立場の人の批評もしっかり受け止める事が大事なんですね!飯塚‥ストリートダンスはまだそこまで成熟してないですけど、同じダンスのバレエやコンテのシーンではしっかりと評論家がいて、目もあてられないような酷評が雑誌に載ったりしますからね。〝批評される〞ということにストリートダンサーも耐性を付けた方がいいし、真摯に受け止めるべきだと思いますよ。長谷川‥かと言って、批評や意見を重く受け取り過ぎるのも良くないですけどね。自分たちのやりたいこととのバランスを考えて、取り入れるべきところは取り入れていけばいいと思います。過去、ダンスシーン以外のさまざまな批評にさらされ、それを受け止めたきたからこそ、DAZZLEの今のスタイルがあるのだ。多様な情報があふれる現代のダンスシーン、「どうすれば他より抜きんでることができるのか」を考え、実践するのは容易ではない。そこで「SDM」では、『Legend Tokyo』で〝1st Legend〞に輝いた長谷川達也を講師に迎え、全6回の史上講義を実施! 今回は作品の構成術、、そして伝わる作品についての思考法を伝授!DAZZLEオフィシャルHP http://www.dazzle-net.jp/衣装、照明、音、構成……。それぞれで表現できる範囲を把握することが重要だ。41

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