『SDM』 VOL.31
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――「ダンスシーンの中でずっと過ごしていくのはよくない」ということでしょうか?飯塚‥いやいや、そういった生き方を否定するつもりはありません。ダンスシーンの中で、同様の価値観を持つもの同士が新しいムーブメントを生み、またそれを崩したりと、そうしてシーンを築き上げていくこともダンスという文化を守るために必要なことだと思います。ただDAZZLEはその道を選ばなかったというだけです。――〝オリジナルの音源で、オリジナルのスタイルを踊る〞というのも、そういった考えからですか?長谷川‥それに関しては〝自分の作品を世に残す〞という観点からです。例えば「流行の曲に合せて流行のスタイルを踊る」というのは、時代に沿った必要な流れだとは思います。でもそれはあくまで流行であって、それはいずれ過ぎ去ります。そうなるともう作品を紹介できなくなるし、結果使い捨てられてしまう。また、既存の曲である時点で、「これが私の作品だ」と言うこともできないですよね。それに対して僕らが今海外で行なっている公演や昨年のレジェンド優勝作品は元は3年前に作られた作品です。3年経った今でも求められるのは、オリジナルの音源と独自のスタイルであること。作品はまぎれもなく自分たちのものですから、5年後でも10年後でも「僕らの作品です」と紹介できる自信はあります。国内にしても海外にしてもチャンスが巡ってくるのは数年後だったりするんですよ。そのための準備が必要だと思います。――そうやって数年後を見越して「自分の作品を世に残す」ということがダンサーにとっては重要なんですね!飯塚‥仕事としてとても重要ですね。重要というか、そうやって自分の作品のパッケージがないと、仕事を任せる判断ができないんですよ。例えば僕の広告クリエイティブの仕事だとクライアントにダンスを取り入れたプロモーションを会議で提案するとき、「この人はこれをやっている人です」というちゃんとした資料がなければ、判断の選択肢としても挙げることができないんです。それは金額が大きくなればなるほど厳しくて、予算3000万のプロモーションをする時に、「振付師の作品はありませんがとにかくすごいんです!」といくら熱く語っても、そんな得体の知れない誰かに3000万はかけられないですよね。――では、ダンスシーンが発展していくのはどうしたらよいと思いますか?飯塚‥〝技術が上手いか下手か〞で競い合っている内はまだアマチュアの世界だと思います。ビジネスとして成功するには、自分の踊りがあって、そこにお金を払ってくれる人がどれだけいるのか。それを真剣に考えたら、もっとやるべきことはあるんです。例えば5分間のパフォーマンスを見せるだけでお金を払ってくれるお客さんはいない、ならステージの興業としてお客さんにお金を払ってもらえるように、もっと長い時間の作品を作るようにする。もしくは、テレビに出て30秒間めちゃくちゃわかりやすくてすごいダンスをする。そうやって「自分の踊りがどういう風にお金に換えられるんだろう」ということをしっかりと見すえることが必要だと思います。長谷川‥『Legend Tokyo』に参加するなら、もっとこの機会を利用しなければいけないと思います。悲しいかな、僕らダンサーはどんなにいい作品を作っても、それを広げる力を持っていません。でも、レジェンドではその〝広げる力〞を持った人たちが審査員として自分の作品を観てくれるんです。僕は前大会も今大会も、終演後審査員の方々に自分の作品や資料を渡しにいきました。そこで普段出会うことの出来ない業界人の方々から貴重な意見を聞けました。そういった行動や、自分の作品を世に残すことが、いつか実を結んで大きな仕事へと繋がると思うんです。――最後に、この1年間の連載を振り返って感想をお願いします!長谷川‥1年間、この連載で色んなことを言わせて頂きました。必ずしも僕らがやっていることは正解ではないけど、こういうやり方も1つの方法であるということが提示できればと思っています。僕らもダンスの世界で生きている身としてダンスシーンを良くしたいと思っているので、この連載を読んで何か感じてもらえたら嬉しいですね! 1年間どうもありがとうございました!(左から)長谷川達也、飯塚浩一郎DAZZLEオリジナルの表現スタイルで見る者を魅了する、長谷川達也主宰のダンスカンパニー。過去6回にわたり単独公演を開催。国内演劇祭における最優秀賞の受賞や、韓国、ルーマニア、イランの国際演劇祭にも招聘されるなど、その実力は国内外で高く評価されている。多様な情報があふれる現代のダンスシーンを今一度考えるため、「SDM」では『Legend Tokyo』で〝1st Legend〞に輝いたDAZZLEを講師に迎え、全6回の史上講義を実施! 最終回である今回は、『Legend Tokyo Chapter.2』を振り返りつつ、DAZZLEの2人がダンスシーンを斬る!DAZZLEオフィシャルHP http://www.dazzle-net.jp/29

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