『SDM』 VOL.40
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ダンサー必読!今、正しい知識を身につける時―。その実態。教育とダンス、取材・文=長濱佳孝 edit by Yoshitaka Nagahama写真=井上治 photo by Osamu InoueTAKAHIRO‥アメリカでは子どもの感性を開くレクレーションとして、フランスでは芸術として、そして今、日本では教育として取り入れられています。非常に面白いですよね、元は1つの〝ストリートダンス〟であったハズなんですから。ダンスは作品を創る過程そのものが、教育になっている!長濱‥そのように国によってダンスへの取り組み方が違う理由は、やはり「文化が違うから」といったところなのでしょうか?TAKAHIRO‥1つ言えるのは、それぞれの場所でダンスというものが、元々の最初の概念から進化していったんでしょうね。ダンスそのものではなく、その最初の部分から枝分かれした部分が、「これは教育に使えそうだ」と日本では思われたのでしょう。長濱‥その〝枝分かれした部分〟とはなんでしょう……?TAKAHIRO‥例えばみんなで踊るとき、「同じフリを踊る」というルールを学ぶ。そしてフリを揃える際には、メンバーとのコミュニケーションが必要になってくる。そして自分たちで振付けを考えるとなると、創造力を育むことができる。長濱‥なるほど! ダンスを踊っていく過程で、まさに〝教育〟としてふさわしい能力が育めるわけなんですね!TAKAHIRO‥そうです。そしてダンスには、明確な答えもない。ルールを守り、協調性を学びながら、答えを模索する。それは先生と生徒がキャッチボールをしながら新しいものを見つけることができるかもしれない。そこにこそ、教育の魅力があると思いますね!ダンスの意味を知れば、コミュニケーションが取れる。TAKAHIRO‥もちろん、ダンスの枝葉の部分に新しい〝教育〟という息吹を吹き込む事もそうですが、元々の根っこの部分を伝承していく、守り続けていくことも非常に大事なことだと思っています。僕ら大人が子どもたちにしてあげられるのは、何が正しい、間違いだという事ではなく、「こういうものもあるよ」という提示をしてあげることが本当に大事なことだと思っています。長濱‥確かに、学校の授業が入り口でダンスに興味を持った時に、ダンス自体の根っこの部分、歴史や文化などを教えてあげられる人がいないといけないですよね。TAKAHIRO‥僕自身、ダンスの歴史を知った時はすごく楽しいんですよ。ダンスの動きの1つ1つが意味を持っていたり、言葉を持っている。それがわかると、それを創りだした人、その動きを踊っている人とコミュニケーションが取れている気持ちになりますからね。大会でも、新しい選択肢を子ども達に!長濱‥6月に行われる『日本ダンス大会』でも、新しい〝選択肢〟を子ども達に提示していきたいですね!TAKAHIRO‥もちろんできるでしょう! 例えばこの大会は、照明や舞台セットが組まれた〝素敵なステージで踊ること〟を多くの子どもたちに体験して欲しい目的もあります。そこで、「ステージで踊ることはこんなに楽しい!」、「照明が入るとこんなに素敵に見える!」ということが学べると思うんです。長濱‥審査委員長としては、今度の大会にどういった事を期待されていますか?TAKAHIRO‥ルールとして〝教育的ダンス〟を扱っている大会なので、今までに観たことがないような世界観のものが観れたら嬉しいです! あとは出場者のみなさんが、勝っても負けても魅力を感じることが出来る大会になって欲しいですし、そのためにルールやステージに様々な新しい取り組みがなされていると感じています。運営や主催のスタッフの方々は非常にストロングな方々だと実感しましたね(笑)。長濱‥ちなみに、どんな作品が観てみたいと思います?TAKAHIRO‥審査基準として、技術点に並んで〝教育的側面〟というポイントがありますが、これが非常に新しくて面白いです。それぞれの出場チームが、この〝教育的〟という言葉をどう捉えてくるのか? そこは非常に楽しみですね!長濱‥でもこれって、どういった作品が「これは教育的ポイントが高い!」となるんでしょう?TAKAHIRO‥そこはやはり、学習指導要領にもある「現代的なリズムに合わせて、〝表現する〟」という部分でしょうか。そのダンスで何を表現しようとしているのか? ダンスを観ながら言葉が見えたらいいと思うし、1つのシーンの映像が見えるような作品であれば、尚いい! この大会は現代的なリズムダンスという、広い意味のあるダンスを審査できる、出会うことの出来る大会なので、何か新しい言葉を伝えてくれるダンスに出会いたいです!昨年の『第1回日本ダンス大会』では、ストリートに限らず多様なジャンルのダンスが繰り広げられていた。日本ダンス大会とは!?文部科学省の後援事業として、日本の高校ダンス部チームから優秀校を選出し、最優秀チームを決定するダンス部選手権。出演者が「観て学ぶ」機会として様々なダンスエキシビションも披露され、日本トップレベルのショーケースから、様々なジャンル年齢で構成されるダンスチームまでを招聘している。教育的ダンス、そして生涯スポーツ教育としてのダンスの普及を図っている。〝観て学ぶ〟目的もある『日本ダンス大会』では、多くのエキシビション・パフォーマンスが披露される。21

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