『SDM』 VOL.40
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現場に入るというのに、正しい理解がされないままでは、10年後には教育現場からダンスが消えてしまいます。一生涯に渡って親しめるスポーツとしてダンスを発展させていくのも、この委員会の目的ですね。教えに行く側も教えられる側も、指導者の資質を理解していない。―実際に義務教育にダンスが導入されることになって、それぞれの立場で変化を感じられたことはありますか?山川‥学校で子どもがダンスを習うようになったので、周りの大人に「もう一度踊ってみようかな」と思い出させてくれた事は大きなメリットだと思いますね。お父さんお母さんに限らず、おじいちゃんおばあちゃんもみんな、盆踊りやディスコで昔は踊っていたわけですよ。ダンス義務教育化により、大人たちにダンスの楽しさというのをもう一度呼び起こしてくれたと思います。二木‥スクールの立場としては、「ダンスとはこういうものです」と伝えるのが難しくなってきたなと感じています。義務教育化により、ダンスは学校で習うもの、スポーツとしてのとらえ方も出来ました。また、元々ダンスは文化・生き様です、ファッションですと言う人もいる。今はそういう細分化された時代、変化の時期だと思うので、模索しながら自分達で創りあげて普及していくべきなんだなと思いますね。―では、ダンス義務教育化によって生じた、悪い点というのは何か感じていますか?山川‥悪い点というわけではありませんが、問題なのは教育的なダンスを教える指導者が不足していることです。これはどういう人に指導してもらえば良いのか、派遣する側のスタジオや組織、教えに行くダンサー、現場である学校側もよく理解していないのです。ヒップホップがダンスの授業に指定されているわけではない!?―その〝理解していない〟ということで、具体的にどのような問題が起こるのでしょうか?山川‥例えばだらしない格好で学校に行き、ヒップホップの不良っぽい部分まで含めて教えたり、学校のすぐそばでタバコを吸ってしまう。こういう行動を否定しているわけではないのですが、〝教育〟という観点からすると不適切ですよね。そういった、「教育現場でダンスを指導するのにふさわしい人物がわからない」ということが一番の問題です。ですから我々が、教育的ダンスをきちんと教えられる人を育てたいと思っているんです。―なるほど。でも、ヒップホップを教えるからには、ファッションや文化的背景を教えるのも必要なのではないでしょうか……? 山川‥これはダンサーに限らず、多くの企業や団体の方も誤解されていますが、国はヒップホップを踊ることを指定しているわけではありません。文部科学省の指定する学習指導要領の解説では「〝ロックやヒップホップなどの現代的なリズムの曲〟で踊るダンス」と明記しています。これは〝現代的なリズムの曲〟の例、音楽ジャンルとしてロックとヒップホップを挙げているだけで、ダンスのジャンルではないのです(ロックはROCKの方)。もちろん現代的なリズムに合わせて踊るダンスなので、ストリートダンスの要素もたぶんに含むものになるでしょうが、ロックやヒップホップに〝限定〟しているわけではありません。ですから別にJ-POPで授業しても良いんですよ。それでリズムに親しみながら、子どもたちが自発性を持って表現する、仲間と協調しながらダンスを創る、上手くなろうとする。そういった事を文部科学省は指定しているのです。日本ダンス技能向上委員会大会委員二木利征◉Prole有限会社エンターテイメントカンパニー代表取締役。ETCダンススクール、DANCE AREA SURGE、Creative Dance Projectの3つのダンススクール全15店舗を展開。登録講師500名以上の指導者であると共に、小中高等学校やフィットネスクラブへのダンス講師派遣、ダンススクールの運営コンサルティングまで、ダンスに関わる教育事業を拡大しながらも、地域社会の活性化にも大きく貢献している。 この国のダンスは今、時流に乗ることが必要とされている。ヒップホップやロックダンスが国からダンスの授業として指定されているわけではありません。学習指導要領の解説に〝現代的なリズムの曲〟という、音楽ジャンルの例として挙げられているだけで、ダンスジャンルとして指定されているわけではないのです。多くのダンサーや企業、組織までも間違って認識している、ダンス義務教育化の1つの問題点と言えるでしょう。練習方法やスケジュールの立て方も講義実技指導風景コーチのいない高校ダンス部に、無料で講師を派遣し、ワークショップを開催。技術だけではなく、部の運営方法も教えている。高校ダンス部向けワークショップスポーツフィットネスの博覧会『SPORTEC』等にて、フィットネス指導者向けのワークショップを開催。フィットネスのインストラクターを対象としたワークショップ座学講義も同時開催。『SPORTEC』等ワークショップ開催北関東(栃木、群馬、茨城、埼玉)のキッズダンサーを集め、ステージで踊ることの楽しさや意義、交流を深めている。関東のビッグイベント『WORLD WIDE』、『FINAL LEGEND Ⅱ』、『日本ダンス大会』の3ステージに出演する。実際の舞台図面の見方も解説。合宿を行ない、出演者同士の交流も図る。出演者の保護者も本プロジェクトに協力。『WORLD WIDE』本番、出演者全員で記念撮影!北関東プロジェクトTOPIC1義務教育でヒップホップやロックダンスが教えられるというのは間違い!?23

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