『SDM』 VOL.41
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中華料理ではなく、和食料理の発想で。一筋縄では繋がらない、個性の強い作品たち!その作品がそこにある意味を、観る人に感じてもらいたい。prole『Legend Tokyo Chapter.2』にて大会史上最多のジャッジ票を獲得し、最優秀作品賞〝レジェンド〟に輝いた梅棒のリーダー、そして演出家。『Legend Tokyo Chapter.3』では圧巻のオープニングを演出し、この冬に行なわれた第2弾梅棒公演ではダンスシーン異例となる東京&大阪開催、そして計3週間のロングラン公演に挑み、全公演完売の大反響をみせる! 日本大学芸術学部演劇学科の在籍、およびその後の活動期間を通して独自の演出理論を確立し、ダンスとストーリーの融合に通じた日本のダンス界稀有なるロジックをもつ時代の寵児である。伊藤 今人(梅棒)『FINAL LEGEND Ⅱ』総合演出『FINAL LEGEND Ⅱ』総合演出いよいよ開催直前に迫った話題のダンス公演『FINAL LEGENDⅡ』。昨年の初開催から約1年、〝再演〟をテーマとした全く新しいカタチのこの公演が、今年は梅棒の伊藤今人を総合演出に迎え、開催される! 公演として、作品をひと紡ぎにする演出とは!? そして、新たに加わったゲスト作品&パフォーマーについて、今、今人が斬る!名作の再演公演、そこに求められる〝演出〟とは!?『FINAL LEGENDⅡ』開催直前特集!取材・文=長濱 佳孝text by Yoshitaka Nagahama――総合演出として、今回の公演をどのように演出しようと考えていますか? これだけ素晴らしい作品が揃っているので、それぞれが一番〝生きる〞形として、余計な要素はなく、舞台上の人や空気、空間そのものが主役となって映える演出にしたいと考えています。 発表会のように「作品が終りました、はい次の作品」という形ではなく、作品の余韻が残っている中で、お客さんがストレスなく、違和感のないように次の作品に繋がる意味を感じられる公演にしたいですね。――前回公演の演出は〝発掘がテーマでしたが、今回そういった要素はあるのでしょうか? もちろんそういった方法は考えましたが、この公演の主旨は「名作の再演」なので、お客さんには各作品の良さを改めて感じてもらいたい。そう考えた時に、違った世界観で全体を包み込む、ストーリーをつなげるという事は難しいと思いました。 また、それをやって各作品の魅力が削がれてしまったり、観る上でのストレスになってしまうのももったいないので、1つのテーマで包むのではなく、各作品がより良く見えるような〝つながり〞を意識して演出しています。 僕自身、前回公演には足を運ぶ事が出来なかったのですが、逆にその事を良い方向に活かして、昨年の印象や先入観、固定概念に縛られる事のない、自分らしいアウトプットが出来ればいいなと思っています!――でも、こういった「既に完成されている作品が並ぶ公演の演出」は、難しくないですか? 最初は僕も「新しい公演」として見せようとして悩んだ部分もあるんですけど、公演の主催の方と話して楽になったんです。 この公演って、言ってしまえば「ミュージシャンが出すベストアルバム」のような感じなんですよ。それぞれ違うコンセプトで創られた、個性の強い作品が並ぶけど、1つのアルバムとして成立させなければならない。――言われてみれば、「ミュージシャンのベストアルバム」という感覚は、この公演のイメージに近いですね! そう考えた時に、「どういう順番で聞いてもらったらそれぞれの作品が生きるのか」が重要だと思いました。同時に、〝敢えて演出をそこにとどめる〞という難しさがありましたね。 やはり演出家としては、「何か世界観を創る、加える」ということをやりたくなります。そこを敢えて抑えて、今あるものを最大限に活かす。〝素材を活かす〞という和食の発想に近いですね。 中華料理のようにじゃんじゃん味付けして、料理人(演出家)としての腕を見せつけたい部分もあるけど、そこはグッと押させて素材を活かす、キレイに盛りつける。そういった事にもすごく技術だということが分かりましたし、この公演の演出をして勉強になっていますね!――作品順を事前公開しないのもミュージシャンのコンサートの〝セットリスト〞みたいですよね! 作品順が全てと言っても過言ではないですからね。やはりレジェンドで名を残した作品だけあって、各作品それ自体で完結してしまうし、メッセージ性がとても強い。一筋縄ではつながりません(笑)。 そういった作品をどう紡いでいくか、それぞれの始まり方、終わり方が非常に重要なんです。――具体的に、どのような意図で作品順を組まれましたか? ジャンルをバラバラに組み込むのではなく、敢えて似たようなジャンルが続くようにして、観ているお客さんにその表現の対比を楽しんで貰えるようにしています。「同じジャンルだけど、こんなに表現が違うのか!」ってお客さんに感じてもらいたいんですよ。 また、最後の作品は何にするのかは一番悩みましたが、誰もが文句無く、幸せになれる作品でこの公演を締めてもらおうと思っています!24

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