『SDM』 VOL.41
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ので、本当に悩みましたし、胃が痛くなりました(笑)。ただそこで振付師としての責任とか、多くの人の心を動かせるダンスってなんだろうって真剣に考えましたし、こういう経験で人って成長していくんだなって思いましたね!―では、振付師としてMASAMIさんからTAKAHIROさんに何かお聞きしたいことってありますか?MASAMI‥そうですね……、アメリカでの〝振付けのお仕事〞って、日本と大きな違いってありますか?TAKAHIRO‥あくまで僕の経験上ですけど、向こうは各セクションの役割がハッキリしています。プロデューサーがトップとして組織作りをする、全体を仕切る。それから演出家がショーの全体を考えて、振付師に指示する。そこからダンサーに振付師からフリが渡されていきます。その各役割が兼任される場合もありますが、アーティストのツアーやミュージカルは大体こんな感じが多いですね。逆に日本って、こういった仕事の流れではないんですか?MASAMI‥現場が大きくなるとそういう組織化はあると思いますけど、〝ダンスの演出家〞というのはまだちゃんと役割が出来ていない感じはあります。―初めて〝大人数作品〞の振付けをされたのは、どんなタイミングでした?TAKAHIRO‥僕はアメリカに行ってからですね。ダンスカンパニーに入って、最初は隅っこのポジションにいたけど、それが段々上がってメインダンサーになって、それから演出家に「今度は振付けをやってみなよ」って言われたのが最初です。またその次は演出を任されるようになったんですけど、そうなるまではダンスを始めてから8、9年ぐらい経ってます。―段々とポジションがアップされていった感じなんですね!TAKAHIRO‥ただ、外部から〝コレオグラファー〞として振付けを依頼されたのは、2007年の大阪世界陸上の開会式でした。5万人以上が入る競技場で、40人ぐらいのダンサーがパフォーマンスをするもので、そこで手応えを感じて「振付けってめっちゃ楽しい!」って感じたんです! それからどんどん、ミュージカルの振付けなどのお仕事も頂くようになりました。―MASAMIさんの場合は、どうでした?MASAMI‥私の場合は、(審査員賞を受賞した)『Legend Tokyo Chapter.2』です。初めての大人数の振付けで、しかも発表会ではなく〝コンテスト〞だった―では大人数を振付けする場合はどうですか?TAKAHIRO‥大人数の場合、観る人の視界の〝軸〞を作らないと、分散しちゃって分かりづらくなってしまいます。視覚的に「絵として見せる瞬間」と「ダンスの技術を見せる瞬間」、そTAKAHIRO‥そうなんですね。ただ〝演出的な視点〞というのを意識すると、また振付けも面白くなってきますよ! 僕なんか、「演出家としてはこの動きがいいけど、振付師としてはこっちの方がいい!」って思う時もあるんですよ。―視点によって色んな考え方があるんですね! では、ソロの場合と複数人の場合、振付けする難しさは違ってきますか?TAKAHIRO‥ソロの場合、ダンスの基本的な手法である〝動きを揃える〞という事ができません。だから観る人のテンションをキープするには、何かすごいテクニックを見せないといけないんです。そういった部分はありますが、良い所は〝ミスを楽しめる〞ことですね。MASAMI‥確かに、ソロだとフリがずれるたり、ミス(に見えてしまうこと)もないですよね。お客さんのテンションに応じてフリを変えることもできますしね!取材・文=長濱佳孝edit by Yoshitaka Nagahamaとは!?Special Cross TalkTAKAHIRO(上野隆博)「NewsWeek」誌の〝世界が尊敬する日本人100人〟にも選出された日本人ダンサー・コレオグラファー。マドンナのツアーダンサーやプロモーションイベント振付けの他、日本では大阪世界陸上の開会式、FIFA公式大会閉会式の振付け、総合演出などを手がけるなど、多方面で活躍している。最近ではALSOKのCMの振付けを行なった。Profile多くのダンスイベントで大人数ナンバーが披露される機会が多くなり、年々その存在感を増している〝振付師〟という存在。より良い作品を創るために必要とされる素質とは!? ダンサー、振付師として世界をまたにかけて活躍するTAKAHIROと、若手実力派振付師であるMASAMIが、〝振付け〟という仕事の本質を語る!TAKAHIROMASAMI役割分担がはっきりしている、米国振付け事情。大人数の振付けを通して、成長することが出来た。渡したフリが、どれだけ命を持っているか!振付けとは、与えるだけではなく、〝引き出す〞もの。46

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