『SDM』 VOL.43
27/68

2002年に開催された『FIFAワールドカップ™』の日韓大会では、決勝戦前のセレモニーをはじめ、さまざまなシーンの演出を担った。1998年の「かながわ・ゆめ国体」、2004年の「彩の国まごころ国体」など、さまざまな国家的スポーツイベントの大会演出を手がけている。2014年春、『東京オリンピック』に向けて建て替えとなった国立競技場の、取り壊し直前の記念プロジェクトの演出担当として参画。イベント営業演出家―業界のプロが語る こんな素敵な仕事はない―伸ばせ!イベント演出力―仕事も恋も、 演出マインドで成功できる―『FIFAワールドカップ™』日韓大会演出国際的スポーツイベントの演出制作「SAYONARA国立競技場」演出自らの演出論をつづった書籍を執筆 ―企業イベントやスポーツ国際大会の〝演出家〞とは、舞台公演などの演出とどう違うのでしょうか?  私の場合は、〝さまざまな要素を調整してベストなかたちに作り上げる〞という感じでしょうか。クライアントの要望があって、クライアント側でも部署によって要望が違う。会場側の規制もあるし、かけられる全体の予算も限りがある。そういった要素を加味した上で「ではこうすれば面白い(かっこいい)ものができますよ!」と、多く人たちが納得する形で現実化するんです。 〝演出家〞ではありますけど、「クライアントのやりたい事を実現する」という、ある意味〝営業〞的な視点も必要ですね。―ステージ演出とはまた違った能力が求められるんですね!では、今までのお仕事でダンスに関わったことはありますか?  もちろんあります。ダンスってプレゼンテーションの手法で「何かを伝える」というメッセージを表現しやすいんですよ。簡単な例で言えば、新商品発表イベントで「元気さをアピールしたい」だったら、チアダンスを入れると元気なイメージは伝わりますよね!? もちろん元気さだけじゃなく、悲しさや明るい感じ、具体的なモノや人など、ダンスのテクニックを使えば色んな事を伝えられると思っています!―では、ダンサーやダンスシーンに対する印象ってどうですか? アートとして「自分の好きなものを徹底して極める!」という人が多い印象はありますね。ただ、ビジネスとして食べていくとなると、好きなものを創っているだけではやっていけない。そういった点で考えると、シルク・ドゥ・ソレイユのような自分たちのやりたいアーティスト気質のものを上手くエンターテインメントとして表現している人たちは、素晴らしいと思います! 日本もそろそろ2020年の『東京オリンピック』に向けて色んな動きが始まっているので、『Legend Tokyo』では、個人的にはそういうあらゆる要素を調整する営業的視点も必要!事が出来る人、「この人と一緒にやれると面白いな!」っていう振付師と出会えたら嬉しいですね!―まさか、東京オリンピックも小林さんが演出に関わっているのですか!? まだまだそれは未定です(笑)。『東京オリンピック』は組織委員会も出来たばかりだし、実行メンバーも決まってないですから。ただ、細かい事は申し上げられないですが、そこに関する多くの人や団体の中に、立場上おそらく私も関わってくる……という可能性は非常に高いです。 「何か身体で表現しよう」という話になった時に、「だったらこういう人たちがいますよ」って言える立場でいたいですね。むしろ今回、この大会の審査員を引き受けたのも、そういう部分が大きいんですよ!―そうなんですか! ちなみにオリンピックのような国際的なイベントでの振付けとなると、どんな点が重要になるのでしょうか? これぐらいのイベントになると、表現にも厳しい国際的な規制やルール内で創る事になります。そして場所も劇場とは違って、アリーナや競技場などの広大な場所。そういう環境で観る人の意識を集中させることができるのは、光、映像、そして、〝人のエネルギー〞なんですね。 その〝人のエネルギー〞を使って、我々が伝えたいメッセージを、与えられた条件の中で表現できる。それが出来そうな方とこの大会で出会いたいと思っています!―では最後に、〝演出家〞として本大会に挑戦する方々にアドバイスをお願いします! 「ダンスに埋もれるな!」ですね。昔に比べると、今はそれ程お金をかけなくても色んな演出をすることができるようになりました。だからこそ、振付師の方々も、ダンス以外でも、さまざまな知識や情報、表現としてのあり方を知る必要があります。例えば、新聞やニュースを読むことも必要かと思います。〝社会を知る〞という事が、演出にとっては大事なことだと思います!人のエネルギーで、メッセージを伝える!『FIFAワールドカップ™』などの国際スポーツイベントや企業イベントなど、数々のビッグ・プロジェクトを手がける制作会社T2クリエイティブ。その代表として〝演出〟を手がけてきたのが小林雄二氏だ。まさに市場のニーズにあわせた視点が必要とされる大規模イベント演出。2020年の『東京オリンピック』を視野に、その第一人者の目に映るストリートダンスとは!?株式会社ティー・ツー・クリエイティブ社長、そして演出家として大小さまざまなイベントを手がける。最近では虎ノ門ヒルズのオープニングセレモニーといった企業イベントや、愛知万博、神奈川国体開会式、FIFAワールドカップ(2002)決勝など、国際的プロジェクトに参画。数多くのイベントを手がけ、空間を演出し、関わる様々な立場の人物を調整する存在として、各方面から絶大な信頼を得ている。株式会社 ティー・ツー・クリエイティブ代表取締役社長小林 雄二数々の国際的ビック・プロジェクトに関わるイベント演出界の重鎮!イベント演出家の視点。ダンスがもつ〝人のエネルギー〞は、広大な会場でも観る人の意識を集中させることができる!さまざまな視点に対する理解。そして〝人のエネルギー〟の伝え方!25

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る