『SDM』 VOL.43
28/68

2011年にオープンした日本最高峰の設備をもつ舞台芸術専用劇場。現在はこの劇場のチーフプロデューサーを務めている。豊島区が、舞台芸術の創造・発信・育成の場として開設した劇場。ここではダンスの力を生かして、街の風物詩となるイベントづくりにも貢献。天王洲アイルに1992年にオープンした3層吹き抜けの劇場。プロデューサーとして長年、同劇場が誇る数多くの作品を輩出してきた。―昨年、審査員として参加いただき、改めて振り返ってみて感想はいかがでしょうか?  私はもともと演劇界の人間なので、「その表現が何を反映しているのか」というものを見るようにしていました。かつてシェイクスピアが「演劇とは時代を映す鏡である」と言ったように、ダンス作品についても「今の時代をどう捉えているか?」を作品から感じとれるかが重要だと思っています。 私は仕事で年間100本以上の演劇やダンスを観ていますが、良いコレオグラファーや演出家は必ず〝大衆の目〞というものをもっていると思っています。自分のやりたい事だけではなく、「観る側にいかにわかりやすいように伝えるか」という優しさ、そして表現する力を持っている。そういった点も注意して作品を選ばせて頂きました。―なるほど! 舞台表現に精通する視点ならではの貴重なご意見です!  ただ、ダンスは身体表現なので〝鍛えられた肉体からしか表現できないもの〞も大事だと思うんです。前回の〝レジェンド〞では、照明や音の技術が先行して、そこそこの身体表現でも良く見えてしまうという部分が少なからず感じられたんですね。 もちろん、それも作品を構成する大事な一要素ですが、本質的な身体のボキャブラリーも大事にして欲しいと思っています!―他に舞台上でのダンス表現において、重要なポイントはありますか? 日本人は、そもそも協調性を重んじる方々が多く、集団で創り出す表現が上手なんです。その集まったエネルギーを上手く調合すれば爆発的なものになる! その中で、自分が〝やりたい事〞と〝出来ること〞のバランスを上手く考えて、〝振付け側〞と〝踊る側〞がしっかり自分の役割を果たしていけば、いい作品になると思いますよ!演劇と同じように、ダンスも時代を映す鏡である!―舞台でも、舞浜アンフィシアターは特殊な形かと思いますが、ああいった円形舞台ではどのように見せれば適切でしょうか? それは昨年観て感じましたが、丸いんだから丸いまま使えばいいと思うんですよ! そこにわざわざ三角や四角の表現をはめ込もうとするからおかしくなる。もちろん、部分的にはそういった構成もアリだとは思います。でも最終的に〝丸を活かす〞という演出。そして円形舞台にしっくりはまるイメージをもつことは必須だと思います! 台組の空間の上下と、その前に広がる円形状のステージ。あの空間を使うには、あの空間の〝良さ〞をしっかりと理解することが一番大事だと思いますし、前回、優勝されたTwiggz作品は、やはりそのあたりの構成は抜群でしたね!―なるほど……、勉強になります! 崎山さんが審査する視点としては、〝舞台の使い方〞という点も外せないですね! やはり先ほど言った通り、僕の見方としては「今の時代をどう反映しているか」など、長年、演劇を創るにあたり培ってきた〝舞台人〞としての方程式に沿って審査していこうかと思います。この審査員陣の中での僕の視点はそれでいいと思っています。 あとは、素材を上手く使うのも大事なのですが、エンターテインメントとして成立するには、本質的な技術が無い人はダメ。振付師だけが頑張るのではなく、出演するダンサーも身体がしっかり鍛えられている、プロフェッショルでなければいけないと思います。―明確な舞台人としての見方で審査されるという事ですね! あと個人的な事を言えば〝美しいもの〞を観たい気持ちはあります。「人間の汚い部分や見えない部分をどう表現するのか?」というのが舞台表現の1つの醍醐味だとは思いますが、人間の美しさや身体の線が描き出す〝美〞、そういう作品と出会えたら嬉しいですね!丸いモノは、丸く使えばいい。舞台表現としての視点。ダンス作品を披露する場所として、そしてストリートダンスと一般の人を繋ぐ場所として重要な〝劇場〟という空間。そんな日本の劇場事情に精通し、有名劇場の立ち上げや、劇場プロデューサーを長年経験してきた、KAAT神奈川芸術劇場の事業制作統括チーフプロデューサー、崎山氏。昨年に引き続きの審査員となる彼の視点から見る、〝舞台作品〟としてのストリートダンスとは!?公益財団法人 神奈川芸術文化財団KAAT神奈川芸術劇場事業制作統括 チーフプロデューサー崎山 敦彦KAAT神奈川芸術劇場池袋 あうるすぽっと天王州 アートスフィア(現:銀河劇場)数々の劇場コンテンツを創りあげてきた熟練プロデューサー!92年〝天王洲アートスフィア(現:銀河劇場)〟の立ち上げに参加し、プロデューサーに就任。森山開次主演「スケリグ」等多くの作品を手掛ける。06年より〝あうるすぽっと〟のチーフ・プロデューサーとして統括を担う。また、コンドルズ・近藤良平と共に池袋西口公園の「にゅ~盆踊り大会」の企画立ち上げ等にも携わり、2011年よりKAAT神奈川芸術劇場チーフ・プロデューサーを務めている。大切なのは、「今、そこで何を表現すべきか!?」その本質を見極めること!今という時代を、作品にどう反映するか? その舞台表現と本質的な技術。2014年10月、国内著名俳優・演出家によるダンス公演を開催!InformationInformationこの秋、KAAT神奈川芸術劇場にて、小野寺修二が演出する『Jekyll&Hyde』、白井晃が演出する『Huis clos』という2作品をセットで上演! 両作品ともにトップダンサー首藤康之が出演!26

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る