『SDM』 VOL.43
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―永利さんは、もともとコンテンポラリーダンスの世界に通じていらっしゃるんですよね? 舞台芸術の世界で動く事が多いので、コンテンポラリーの方々とのお付き合いは多いですが、「コンテだけ」というわけでもないですよ。私自身もかつてダンサーとして永く踊っていました。だから、「ダンスを欧米のように社会進出させたい!」という想い、そしてジャンル関係無く「ダンスをもっと日本の社会に根付かせたい!」という想いで事業をしています。実際に仕事のお付き合いは、どんなジャンルのダンスでもありますよ。―ストリートダンスに比べて、コンテンポラリーは「お金を払って舞台を観に行く文化」が広く成立していると思いますが、それはなぜだと思いますか? ストリートダンスはいろんなイベントがあったり、アーティストのMVやバックダンサー、インストラクターなど活躍できる場がたくさんありますよね!? ところがコンテはそこには需要はあまり無い……というか、舞台こそが彼らの勝負する場所なんです。だから、当然、舞台作品にかける想いやパワーの違いは今はあると思いますね。―確かにストリートダンスは他にも活躍できる場があるので、〝舞台作品〞という分野ではまだまだこれから、という感じではありますね……。 そうですね。ちょうど10年ほど前、私が海外でストリートダンスを取り上げるフェスティバルに関わった時、「ストリートダンスの作品を日本からも呼べないか?」とオファーされたことがあったんです。ただ、その当時は「5分のネタなら……」みたいな感じで、ストリートダンスで〝作品〞なんて誰も創っていなかったんですよね。 だからこそ、ストリートダンスに〝作品〞という考えを浸透させようとする『Legend Tokyo』が出てきた時、「ようやくこういうのが始まった」と嬉しかったですよ! 活躍の場が多い故の、舞台表現の未成熟。―海外では〝レジェンド〞のような大会ってないんですか? ここまでの規模や環境のものは、まず無いと思います! 日本人のストイックさがあるからこそ、ここまでの作品の仕上がりが揃う大会が出来るんだと思いますよ! ただ、それはダンス市場が育っている今だからこそ。市場が成熟して「誰もが作品創りで充分に生活していける」という状況なら、「この大会で優勝して注目されよう」という振付師は少なくなってくると思います。ある意味、ダンス市場が成熟すると、今みたいな「頂上決戦!」ではなくなり、違った形に変化していくのではないでしょうか!?―なるほど。興味深いご意見です。それでは今大会は審査員としてどのような点を重視されますか? 私は、国際マーケットに紹介する視点を担っておりますので、オリジナリティを重視します。かつて日本のダンスを海外に紹介する時によく「なぜ、今、このダンス作品を日本から我が国に招聘すべきのか?」と問われました。別に和モノがいいという意味ではありません。つまり〝現在を生きる日本人の感性が見えるもの〞でないと意味がないんです。例えば、どんなに素晴らしい作品でも、「アメリカの誰々でも創れそうな作品」ではアメリカ人は決してわざわざ日本から呼ばないですよね?―〝今の日本人ならではの〞というオリジナリティが重要なんですね! そうですね。ただテーマにオリジナリティがあればという事だけでなく、表現の仕方やムーヴなど、総合的にオリジナリティとそれに伴うスキルがあればという意味です。 個人的には、テーマを表現する上でパントマイムに頼らず、純粋にダンスで身体表現して欲しいという想いはあります。ただ、梅棒さんほどの圧倒的な個性になれば、話は別ですけどね(笑)。昨年も申しましたが、振付師の皆さんは〝傾向と対策〞を練らずに、突き抜けたオリジナリティで驚かせて欲しいですね!今だからこそ有りえる日本の〝頂上決戦〞。多くのダンサーが目標としている世界規模での活躍。中でもコンテンポラリーダンスの分野において、80年代より日本と世界の橋渡しを行なってきたパイオニアが永利氏だ。近年ではシルク・ドゥ・ソレイユのキャスティング・パートナーとして日本の才能を紹介するなど、まさに世界のダンス市場から信頼されている彼女。その視点が語る〝世界に広がる作品〟とは!?86年より舞台芸術のプロデュース業務を始め、91年に株式会社アンクリエイティブを創立。以後、コンテンポラリーダンスを中心とした国内海外に於ける舞台芸術事業、舞台芸術の国際交流事業等の企画制作を行なう。また、広告代理店などによる各種イベントの演出制作、キャスティングなどを手掛け、04年にはシルク・ドゥ・ソレイユのキャスティングパートナーに就任している。シルク・ドゥ・ソレイユキャスティング・パートナー株式会社アンクリエイティブ代表取締役社長永利 真弓日本の現代舞踏を世界のダンス市場につなげたパイオニア!国際ダンス・マーケットの視点コンドルズや上島雪夫、伊藤キムなど、日本の名だたる振付師、グループを海外に紹介し、現地公演を実現させてきた。日本と諸外国のダンスによるコラボレーション企画を実施し、さまざまな文化における国際交流イベント・舞台公演などを行なっている。2004年、国内外のトップ・ストリートダンサーを集結させたダンス・フェスティバル『We Love Dance Festival』を開催した!日本におけるシルク・ドゥ・ソレイユ唯一の公式キャスティング・パートナーとしてオーディションを開催。数々の才能を海外に紹介している。日本のダンサー/グループの海外公演開催国際交流舞台公演の企画・制作ストリートダンスの国際ダンス・フェスティバルシルク・ドゥ・ソレイユのキャスティング 西洋でも創れそうな作品は、西洋には呼ばれない。〝現代の日本人ならではの感性〞がある作品を!「今の日本人ならでは!」という感性とオリジナリティが感じられる作品!27

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