『SDM』 VOL.44
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Ruu作品「Alteregoism」avecoo作品「阿部魁」分の作品に、どのような照明をあてるのが効果的なのか?」という部分なども、もっとしっかり想像するべきなんですね。 とにかく、ダンスの分野だけでは無く、いろんな芸術作品に接しないと視野が広がらない。その中で、自分の本当に表現したいことに気付く、それがより面白いものを創るに必要なことだと思います!では、まだ誰も手を付けたことのない、「未知な事柄にトライしよう」という気持ちはすごく大事なことなんです。 そういった、私が知らないような良いアイディアをどんどん提案してくれ、それをダンスシーンにいち早く取り入れている。大きな将来性を感じる作品に出会えたことは、今後の仕事の上でも大きな収穫になりました!―まず、今大会の感想はいかがでしたか? 優勝を目標に、まさに〝勝ちに来ている〞作品が非常に多い印象でした。 コンテストなので当たり前のことかもしれませんが、強い想いや気迫、そして全身全霊の魂を込めて創りこまれた作品が多かったですね。全体的なクオリティも高く、観ていて気持ちがどんどん高揚していきました!―その中でも特に印象に残った作品はありましたか? まず、エンターテインメントの現場では、あまり見ないような鳥肌が立つストーリー展開を披露してくれたAnthony作品、そして大人数での揃え方が圧巻だったMemorable Moment作品が印象に残りましたね。 純粋なエンターテインメント性としてはMAR作品、そしてクリエイター性としてはMKMDC作品も良かった。それにバーレスクを華やかに披露してくれたAnri作品も、既存のスタイルではありますが、非常に勢いを感じ、波に乗ってきてくれそうな期待感がありました。 そして何より、私が賞をお贈りしたRuu作品! 構成力が優れていて、とにかく斬新でした。「優勝したい!」という非常に強い気持ちがエネルギーとして表れていましたし、あれだけのダンサーの動きをぴったり揃え、呼吸をするタイミングまでをも合わせている姿勢から、練習量の多さと大変な努力の跡が感じられました。―小林さんのお仕事にも展開していけそうですか? そうですね、特にRuu作品はダンスシーンではあまり見たことのない、マーチングを使用されていたことが、東京オリンピックに焦点を向けた作品のようにも感じました!時代の流れをキャッチしているような旬な印象も持ちましたね。やはり仕事に関わる上―〝舞台プロデューサーの視点〞から見た、実際の審査はいかがでした? やっぱりダンスや演劇といった〝舞台表現〞は、「見えないものを見せる」というキーワードが大切。すべてを見せるわけではなく、〝そこから何を連想させるのか?〞が重要だと思うのです。そういった意味では、じゅんじゅん作品は、非常に見せ方が上手かったですね! それと、当初は「今の日本の社会をどう反映しているのか?」といった作品を評価の対象にしたいと思っていました。ですが、結果的にそこまでの作品には出会えなかったと思います。 その判断基準とは少し違いますが今回は、avecoo作品を私の賞として選ばせて頂きました。なぜかって純粋に面白かったんですよね! 演出力や構成力、その才能が間違いなく高く、しっかりと表現できているところに私は惹かれました!―他の作品についてはいかがでしたか? みなさん全体的に作品の創り方、円形ステージの使い方など、上手になってきたと思いました。 例えばHASSAN作品は衣装の使い方と視覚的な効果の魅せ方が上手く出来ていましたね。MKMDC作品も良かったです。ただ、あの4つの木製パネルをもっと面白く使ってくれたら……、より深い表現ができたと思いました。―では全体的に、舞台作品としてより面白いものを創るには、どのようなポイントが大事になるのでしょう? やはりダンサーの方も、もっと演劇の勉強をした方がいいと思います!  舞台でよいパフォーマンスをする為には、舞台の本質、つまり〝舞台芸術が、さまざまな要素が絡んだ総合芸術〞だという事をもっと意識することだと思うんですよ! 振付家(演出家)自ら「自今まで見たこともないような、マーチングを使った一体感あるパフォーマンス。そして優勝に懸ける強い気持ちのエネルギー!さまざまな要素をもつ〝総合芸術〟として、演出力・構成力・振付力すべてが高かった!何より、純粋に心から「面白い!」と思えた!イベント演出家の視点。小林 雄二株式会社ティー・ツー・クリエイティブ代表取締役社長 / 演出家時代の流れをキャッチする〝旬〞な感性、そして未知の事柄に挑戦する姿勢を評価したい!株式会社ティー・ツー・クリエイティブ社長、そして演出家として大小さまざまなイベントを手がける。最近では虎ノ門ヒルズのオープニングセレモニーといった企業イベントや、愛知万博、神奈川国体開会式、FIFAワールドカップ(2002)決勝など、国際的プロジェクトに参画。数多くのイベントを手がけ、空間を演出し、関わる様々な立場の人物を調整する存在として、各方面から絶大な信頼を得ている。舞台パフォーマンスとしての視点。崎山 敦彦 公益財団法人 神奈川芸術文化財団KAAT神奈川芸術劇場事業制作統括 チーフプロデューサー 舞台芸術では、すべてを見せるのではなく、〝そこから何を連想させるのか?〞が必要!92年〝天王洲アートスフィア(現:銀河劇場)〟の立ち上げに参加し、プロデューサーに就任。森山開次主演「スケリグ」等多くの作品を輩出。06年より〝あうるすぽっと〟のチーフ・プロデューサーとして統括を担う。また、コンドルズ・近藤良平と共に池袋西口公園の「にゅ~盆踊り大会」の企画立ち上げ等にも参画。2011年よりKAAT神奈川芸術劇場チーフ・プロデューサーとして数多くのコンテンツを手掛けている。イベント演出界の重鎮!数々の国際的ビッグ・プロジェクトに関わる数々の劇場コンテンツを創りあげてきた熟練プロデューサー!38観る者の心をつかむ作品とは!?観る者の心をつかむ作品とは!?

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