『SDM』 VOL.49
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―昨年、審査員として初めてご参加いただいて、改めてご感想はいかがでしたか? 振付師の大会ということで、振付けだけを見せる、テクニックを見せる作品が多いかと思っていましたが、あれだけの大きい舞台と大人数で、しっかりとコンセプトや構成を見せ、エンターテインメントとして成立させている作品が多いところがとても気に入りました。「コンセプトを楽しんで欲しい、作品として観て欲しい」という姿勢が素晴らしかったです! 非常にプロフェッショナルな作り方というか、経験的なものを要求される大会だと思いましたね。―「専門的な技術だけの勝負ではない」という点が良かったのでしょうか?  それもありますが、出演されているダンサーの皆さんは、プロではないいわゆる〝アマチュア〞の方も多いんですよね? ところが実際、観ていると全然そんなことを感じさせない! それは踊り手のレベルがどうこうではなく、〝作品のレベル〞が高かった、つまり振付師の能力、指導力が高かった賜物ではないかと思います! そのぐらい振付師の方はレベルの高い大会だと感じました!―では逆に、演出家として「もっとこうした方がいい」と思われた点はございましたか? ルールである制限時間の5分というのは、短いようでいてそれなりの密度を要求されます。もちろん〝起承転結〞をしっかり考えて創らないといけないですし、「ここをもうちょっと考えれば良くなるのに……」と惜しく感じた作品も正直たくさんありました。この作品はどう発展していき、どういう結末にたどり着くのかという〝結〞の部分……もちろん「ストーリーをつけなければいけない」という話ではなく、「作品としてオチをつける」という部分の演出力が非常に重要です! 振付師の大会ではありますが、〝ダンスの動きを作る〞のはもちろん〝演出家としての腕〞も必要とされるところが、この大会の素晴らしいところですね!ダンスを創るだけでなく、演出家としての腕が必要!―ではやはり、小池先生の審査ポイントとしては「作品の演出力」を重視されるのでしょうか? それはもちろんありますが、具体的には「何を伝えたいのか分かる」という作品を評価したいですね。別にストーリーが付いてなくても面白いものは創れます。 例えば前大会のAnriさんの作品は「ショービジネスの世界観に憧れてそれを創ろうとしている」という想いが伝わってきて非常に好感が持てました。「この人がやりたい事は何か?」ということが観ていてストンと分かる、それが一番ですし、やはりそのためにはプロット構成(起承転結)というのが大事だと思います。 そういう構成力がないとつまらない作品になってしまいますし、そこを頑張ってほしいと思っています!―伝えたいことをどう演出して、しっかりと観る人に伝えるかが重要なんですね! そのためには、衣装やヘアスタイル、メイクといったビジュアルも、「ただ凝ればいい」という訳ではなく、「提示している世界に対してどういう風に表現しているか?」が一貫していないといけません。 さらに音の選び方やつなぎ方も、「そのプロットとどう結びついているか」が重要。そこがしっかりしていると面白く観られますし、そうでないと「楽しそうに踊っているな」という感想ぐらいしか残らないものになってしまいます。そこは、皆さん気をつけて欲しいですね。―では、今大会に挑戦される方々にメッセージをお願いします! 今、日本ではダンスというものが定着していて、これからもっともっと発展していくと思っています。皆さんはその担い手であり、いろんな可能性に挑戦していただきたい。「時代は自分たちのものだ!」と思って、今の2015年を代弁するような作品を見せてほしいですね。皆さんの作品を観るのを本当に楽しみにしています!世界観の構築は、ただ凝ればいい訳ではない。フランスの人気ミュージカルを宝塚ミュージカル版として潤色・演出! 振付師にはKAORIaliveが起用された。小池修一郎氏の代表作とも言える人気演目!東宝ミュージカルとして2000年の初演以降、数多く再演されている。宝塚以外の外部ステージにおける彼の代表作。2002年初演以来、繰り返し再演され、2014年秋にも帝国劇場で再演された。ミュージカル演出家の視点昨年創立100周年を迎え、日本のステージ・エンターテインメント界に独自文化を創りあげた宝塚歌劇団。その看板演出家として数多くのヒット作を手がけてきた巨匠、小池修一郎氏が昨年に引き続き審査員に! 商業ミュージカル界を代表する数々のヒット作を世に送り出し、近年では紫綬褒章も受賞された重鎮が見据えるダンス・エンターテインメントとは!?宝塚歌劇団理事/演出家小池 修一郎宝塚ミュージカル「1789」潤色・演出東宝ミュージカル「エリザベート」演出・訳詞東宝ミュージカル「モーツァルト!」演出・訳詞大学卒業後、演出家を目指し宝塚歌劇団に入団。演出助手時代を経て1986年に演出家デビュー。以後、「エリザベート」や「華麗なるギャツビー」など数多くのヒット作を手がけるほか、外部ミュージカルや2007年「世界陸上選手権」の演出を手がけるなど日本屈指の舞台演出家として活躍!その功績が讃えられ、2014 年には紫綬褒章※を授章している。※学問や文化、スポーツの分野において、優れた功績を残した功労者に天皇陛下から贈られる褒賞。Job FilePROFILE天皇陛下より紫綬褒章も受章したミュージカル界屈指の巨匠演出家!東宝ミュージカル「1789」潤色・演出演出的な起承転結がしっかり構成され、「何を伝えたいのか」が一貫した作品!06宝塚ミュージカル版とは異なるアレンジを加えた東宝ミュージカル版が2016年4月より開演! 潤色・演出を手掛ける。Photo by Leslie Kee自分達は次世代のエンタメ界の担い手。その意識をもって可能性に挑戦して欲しい!決する   の視点。1226

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