『SDM』 VOL.49
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―DDDの総合ディレクターとは具体的にどのようなお仕事をされているのですか? このDDDというプロジェクトは、全部で200近くのプログラムがあります。市民参加型のものや舞台で行なうもの、パレードや盆踊りなどなど。そういったものを提案したり、アイディアを出すのが私の役目ですね。―もともとこういったお仕事をされるきっかけは何だったのでしょうか? お若い時にフランスにいたとお聞きしましたが……。 フランスに渡ったのは80年代ですね。当時の日本はダンスで生活できる可能性がほとんどなかったんです。なので違う世界を見たかった。 当時日本のダンサーたちは「留学するならニューヨーク」というのが一般的だったんですが、わたしはたまたまフランス語が少し話せたのです。気がついたらパリに行ってた……って感じなんです(笑)。―当時のパリのダンス事情はいかがでした? 一番驚いたのが、日本の〝舞踊〞というダンスジャンルがものすごく評価されていたんです。日本ではものすごく〝マイナージャンル〞という感じだったのですが、パリでは新聞の一面を飾るくらい大きく取り上げられていて! そこで自分の価値観が変わっていきました。美の基準やものの見方って色々あるんだなと思いましたね。―「オリジナルの踊り」というのが評価されていたんですね! それをきっかけに当時日本からいろんなダンサーがパリで公演をするようになりました。私は、たまたま日本のダンスシーンもパリ事情もある程度知っていたので、それらの制作を任されるようになり、それが今の仕事の原点ですね。 フランスは社会が表現者を大事にする文化政策がしっかりしていたので、海外からよくダンサーが招聘されていたんです。ダンスが仕事として成立していたんですね!―今までのお仕事でいわゆる〝ストリートダンス〞に関わられたことはありますか?〝日本独自〞のダンスが評価されていたパリ。 関わった作品の中にストリートダンスの要素があったことはあります。これは私の考えですが、〝ダンス〞って細かくジャンル分けされていますが、本当に面白いダンスというのはジャンルに関係無く、フラメンコでもバレエでも、面白いなって思えるんですよ! なので今まであまり「ストリートダンスを見る」という意識でダンスを観たことはないんです。―では今回の大会ではどのようなダンス作品を期待されますか? 今の時代を反映している何かがあって、それを観た時に訴えるものがある。どういう世界を創って、どれだけ訴えかけてくれるか、それが真に伝わってくる作品に出会いたいと思っています。 審査のポイントとしては、やはり作品を創っているのは振付家の思想と1人ひとりのダンサーなので、ダンサーがそれを理解して観客に訴えたいという気持ちを踊りに込めて表現できるかどうかを観たいですね。―ちなみに佐藤さんは〝振付師〞ではなく〝振付家〞と言われるのですね!? 振付師って日本語として身振り手振りの「振りを付ける人」って意味ですよね。でもコレオグラファーや振付家はどちらかというと俯瞰構成、空間をデザインする人のイメージがありますよね。 言葉の定義って難しいですが、この大会ではやはり振付け以上に、〝空間を俯瞰でデザインできる能力〞が必須だと思いますよ!―確かに! 最後に出演するみなさんにメッセージをお願いします! 先鋭的な視点や専門的な視点だけではなく、〝大衆〞が観た時に面白いと思うものが評価される大会とお聞きしました。ただ、その両方を満足させることは非常に難しく、実は10年か20年に1度いればいいような才能。例えば、私の中ではマイケル・ジャクソンぐらいの存在かな? 非常に難しい挑戦ですが、ぜひその両方を満たす振付家の方、そして作品に出会いたいと思っています!〝振付家〞の思想をダンサーが理解し、表現することが大切。横浜が街全体でダンス文化を盛りあげる祭典「DANCE DANCE DANCE@YOKOHAMA(以下略:DDD)」。『Legend Tokyo』も参画する本プロジェクトの総合ディレクターを歴任しているのが佐藤まいみ氏だ。ダンス事業ディレクターとして数々の実績を誇り、フランスから芸術文芸勲章を授与される国際的な活躍をみせる彼女。その目に写る〝レジェンド〟とは!?10代でバレエ、ダンス全般に関心を持つ。80年代に渡仏。フランスの芸術文化や制度に驚かされ日本とヨーロッパを結ぶダンスプロデュースを手がけるようになる。帰国後は横浜を拠点にダンスフェスティバルのディレクターを務めるほか、現在は彩の国さいたま芸術劇場のプロデューサーも務めるなど、多岐にわたるダンス事業で活躍している。DANCE DANCE DANCE@YOKOHAMA 2015総合ディレクターさいたま芸術劇場 プロデューサー佐藤 まいみ国際ダンス・プロデューサーの視点PROFILEフランスから芸術文芸勲章も授与された日本が誇る国際的ダンス・プロデューサー!作品全体と1人1人のダンサーが振付家の思想を理解し訴えているか!? 07Job File3年毎に開催される、横浜市が街全体をあげてダンス事業を盛りあげるプロジェクト。その総合ディレクターを担っている。DDDプログラムにおける、現代アートや思想史、メディア論を背景にした注目のユニットによる「GERMINAL」を手がけている。世界的に注目を集めている振付家オハッド・ナハリン率いるバットシェバ舞踏段による作品を、DDDにて手がけている。DANCE DANCE DANCE@YOKOHAMA 2015 総合ディレクター「GERMINAL ‒ジェミナル-」「DECA DANCE ‒デカダンス-」舞台芸術活動の拠点として名高い、彩の国さいたま芸術劇場にて、主にダンス部門のプロデューサーとして活躍中!彩の国さいたま芸術劇場 プロデューサー〝振付家〟として空間をデザインし、 1人ひとりのダンサーが訴えかけてくる作品を。史上空前の戰い、雌雄を 27

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