『SDM』 VOL.49
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喜びも悲しみも、人生の全てを描き出す物語。◆ ◆ ◆◆ ◆ ◆ 初演時よりさらなる進化と実績を遂げ、満を持しての東京での再演となったMemora-ble Momentの単独公演『GIFT』。「1人の女性の人生を描く」という軸は変わらずとも、さらに洗練され、鮮烈なメッセージを放つ作品として披露された! 公演の冒頭では、ステージ上にはプレゼントボックスが散在している。ある箱は優しく抱えられ、ある箱はあざけり破壊され、またある箱は嘆き悲しまれる。後の重要シーンを端的に表すこの演出は、この物語では、美しいだけではない「喜怒哀楽を含んだ人生」を描くことを暗に示していたと言えるだろう。 KAORIalive扮する主人公の一生を描くこの物語は、生まれる前(母親のお腹にいる時)から始まり、幼少期から少女時代の学校風景、青年期の恋愛、結婚、壮年へと、テンポよく展開される。幼少期は〝誕生日〞をカラフルかつポップに描き、学校のシーンでは〝いじめ〞を真正面から捉え、子どもの無邪気さと残酷さを丹念に表現。 各シーンや人物の心情を伝えるダンス技術はもちろんのこと、母親やクラスメイト、コックに恋人など、主人公以外のキャストを目まぐるしく2役3役とこなしていくメンバーたちの〝演技力〞も確かなもの。純真な主人公の個性を際立たせる鏡として確かな存在感を示していた。 また、それぞれのシーンを彩る〝色彩感覚〞も秀逸だ。幼少期はカラフルかつポップな色合いの衣装と小道具が用いられるのに対し、主人公が成長するに従い、各シーンの色彩はどんどんと落ち着き、深みのある色合いになっていく。 毎日が宝石のような子ども時代から、物事の判断できる大人になる過程を、主人公目線のイメージで色づけていったのではないだろうか。取材・文=長濱佳孝edit by Yoshitaka Nagahama写真=金サジ(umiak)photography by Saji Kim2015.06.06(土) @東京・シアター10102013年に東京で初演以降、大阪での再演を経て、約2年越しとなる東京での再演となったMemorable Moment単独公演『GIFT』。新メンバーの加入や『Legend Tokyo』最優秀作品賞受賞を果たし、さらなる進化を遂げた公演の様子をここに綴ろう。  すべての生きとし生かされるものたちへ。公演の冒頭では、後に繰り広げられる人生のさまざまなシーンを暗示する演出が。オープニングダンスは白のイメージを基調とした幻想的な世界を表現。「何でも与えてもらえる」幼少時代、アップテンポかつポップなシーン。後の夫となる男性との出会いを、爽やかなデュエットダンスで魅せる。些細なことから始まる〝いじめ〟が主人公を襲う。学校に通うようになると、より躍動的なシーンが展開されるが……。60

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