『SDM』 VOL.50
54/68

舞台の奥行きを存分に活かした構成展開、スピード感あふれるユニゾンはavecooならでは!大道具の化粧台を複数用い、慌ただしい吉原の女郎たちの日常を描く。吉原遊郭の世界観を色濃く演出する小道具類、お琴も本物を使用!海外から招聘された主演のAzula MomokiとFlorient Cador、そのスキルの高さは驚愕!遊女たちの衣装は、和の良さと踊りやすさ、艶っぽさを併せ持ったオリジナル制作!激しく愛し合う男女の情交も、ダンスパフォーマンスとして真っ正面から表現される。明るく騒がしい、遊女たちの湯浴みのシーン。絶妙なバランス感覚の成せる演出が光る。遊郭の象徴的なアイテムである格子を巧妙に使用し、さまざまなシーンが展開される。舞台奥の高さあるセットを用い、さまざまなシーンが巧みに展開されていく。 昨年『Legend Tokyo Chapter.4』にて、みごとセミ・レジェンドに輝いたavecooが、遂に単独自主公演を開催!受賞作である「阿部魁」と同様に、遊郭を舞台にした花魁(遊女)たちの生き様を鮮烈に描いてみせた! もはや〝お家芸〞と言っても過言ではない、avecooによる〝花魁〞の表現、メイクや小道具、大道具に演者たちの所作など、全てが細部までこだわり抜かれている。ダンサーにとってモチーフにされやすいテーマではあるが、表面的な特徴や浅い模倣にとどまらない、avecoo独自の解釈による演出は、新たなるスタイルを確立していると言っていいだろう。 そして、美しいだけではない、人間の弱さや醜さ、儚さといった、清濁併せ持ったありのままの人間の姿をストレートに描く演出も、avecooならでは。 この骨太なストーリーが、高いシンクロ率を見せるユニゾンや、舞台の奥行きを存分に活かした巧みなフォーメーション展開、そして海外から招聘された2人のゲスト主演ダンサーといった、高いレベルのダンスパフォーマンスによってさらなる魅力を放っていた。 楽しく幸せな喜劇でもなければ、辛く悲しい悲劇でもない。人間のリアルを描くアートな面を持ったエンターテインメントとして、まるで万華鏡のようにさまざまな姿を見せてくれたこの公演。強く、そして弱い人間の深い業(ごう)をあぶり出すavecooならではの、並々ならぬ意気込みのうかがえる旗揚げ公演であった!avefam company清く、醜くとも艶やかに。ありのままの生を描く、avecoo渾身のストリート歌舞伎!取材・文=長濱佳孝text by Yoshitaka Nagahama写真提供=avefam companyphoto-cooperated by avefam company残月の涙遊女 阿部屋清花@KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ2015.09.03(木)-06(日)STAGE REPORT52

元のページ  ../index.html#54

このブックを見る