『SDM』 VOL.55
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日本の才能と可能性。宝塚歌劇団の演出家であり、日本のミュージカル界で数々の興行神話を築いてきた巨匠、小池修一郎。近年では、KAORIaliveの大型ミュージカル振付師起用をはじめ、ストリートダンスからも新たなる才能を精力的に抜擢し続けている。その彼の視点に映る日本の才能と可能性とは!? 貴重な言葉で綴る特別インタビュー。小池 修一郎大学卒業後、演出家を目指し宝塚歌劇団に入団。演出助手時代を経て1986年に演出家デビュー。以後、「エリザベート」や「華麗なるギャツビー」など数多くのヒット作を手がけるほか、外部ミュージカルや2007年「世界陸上選手権」の演出を手がけるなど日本屈指の舞台演出家として活躍! その功績が讃えられ、2014年には紫綬褒章※を授与されている。ミュージカル界屈指の巨匠演出家!紫綬褒章も受章した宝塚歌劇団 理事/演出家※学問や文化、スポーツの分野において、優れた功績を残した功労者に贈られる褒賞。Special Interview!―近年、小池先生はKAORI aliveさんに数多くのミュージカル振付けを依頼されていますね! そうですね、KAORIaliveさんは今では私にとってすごく大切な仲間になりましたよ! 2014年『Legend Tokyo Chapter.4』受賞からのお付き合いですが、大会出展作品を観て、これだけ大人数ダンサーを使った構成力をもっている方でしたら、大型ショウビズ公演の世界で充分に活躍できると思いました。2017年に開演する「ロミオとジュリエット」ではもっと公演に関わる中心的立場として起用させて頂いておりますよ!―彼女のどういった才能が起用のポイントとなったのでしょうか? 例えば1つの振付けや1人の細かい動きをすごくこだわって作られる人はたくさんいます。ただそれを組み立てて〝大勢の動き〞になった時に、「どういう風にそれを提示していくのか」、「何を伝えようとしているのか」が見えてこなくなってしまう人がとても多い。それが、彼女はちゃんとそこを伝わるように創れるんですね。それは、大変素晴らしい才能だと思っています!―そういえば、かつて世界陸上の開会式で、TAKAHIROさんをコレオグラファーとして抜擢したのも小池先生だとお聞きしましたが? 僕は以前からストリート系のダンスって動きが面白いし、ずっと注目していたんですよ。ただ常々、感じていることが、「動きが新しい・面白い」だけではなく、そこから派生した何か新しいパフォーマンス・コンテンツが生まれるべきだと思っていました。 例えば今、アメリカで大ヒットしている『ハミルトン』というミュージカル作品をご存知ですか? 10年はロングランするだろうといわれて、2016年「トニー賞」はほぼ総ナメの11部門受賞、「グラミー賞」や「ピューリッツァー賞」もとったんですよ!大人数ダンサーを使った構成力、それは素晴らしい才能だ!―『イン・ザ・ハイツ』を創ったリン-マニュエル・ミランダの新作ですよね! 彼は2010年に「SDM」でも特集したことがあります! それが、なぜそこまで絶賛されたかというと踊り方がストリートダンスで楽曲はほぼ全編RAPなんですよ! 今までRAPを要素として使用した作品はいくつかあったけど、ここまでガツンと使用した作品はなかなか無かった。それを実現して彼は世界のミュージカル界のNo.1になったんです! この事実に可能性があると思うんです。別にRAPは今さら目新しいものではない。けど、単に1曲やオムニバスじゃなくて、ちゃんと1本の作品になったもの。そういうものを創る人に、日本のストリートダンスからも出てきて欲しい。演劇じゃなくてパフォーマンスでいい。それと近いことをシルク・ドゥ・ソレイユは実現していますよね!―いわゆる〝ストリートダンス界のリン-マニュエル・ミランダ〞ですよね!?強烈な才能があったら実現できると思うんです! 実際にバレエの世界だとマシュー・ボーンがいる。ただ、もっとバレエより大衆的なダンスの世界で、そういう存在が出てきて欲しい。 そのためには、ものすごい勉強と吸収する意欲、そして〝自分で自分にムチを打つ才能〞が必要。あとコレオグラファー本人がどれだけ優れていても、実質プロデューサー的なことをやる世話役が絶対に必要だし、そういう人材を育てる環境も必要です。大変ですけど、それを乗り越えて、さらに上を目指してくれたらいいと思います。 だって、ここまで頑張っている人たちが歌手のバックダンサーや振付け、スタジオ発表会だけなんて本当にもったいない。さらにグローバルなエンタメ・芸術文化で、その創作力が発揮できる未来はきっとあると思います! そういったショーやパフォーマンス公演が、ある程度商業ベースになったら、自然にスターが生まれてきて、日本のストリートダンスはもっと活性化するでしょう!米国で異例の大ヒットをみせるヒップホップ・ミュージカル!小池修一郎の代表作とも言える人気演目。宝塚版は1996年、東宝版は2000年の初演以降、数多く再演され続けている。宝塚以外の外部ステージにおける代表作が2016年に韓国でも再演! 韓国トップスターたちが集う公演の演出も手がける!ミュージカル「エリザベート」演出・訳詞「モーツァルト!」韓国公演・演出宝塚以外の外部ステージにおける彼の代表作。2002年初演以来、繰り返し再演され、2014年秋にも帝国劇場で再演された。東宝ミュージカル「モーツァルト!」演出・訳詞フランスの人気ミュージカルを潤色・演出。振付師にKAORIaliveを起用し、2015年に宝塚歌劇団版、2016年に東宝版が開幕された。ミュージカル「1789」潤色・演出Photo by Leslie Kee©宝塚歌劇団16

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