『SDM』 VOL.55
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―今まで日本のダンス作品をたくさん海外に繋いでこられた永利さんですが、昨年のTwiggzアセアン・ツアーも実現されたんですよね? そうですね。Twiggzさんは『Legend Tokyo Chapter.3』優勝を受けて彼らの希望もあり、マネジメントさせて頂きました。ただ、長い尺の作品を彼らは創ったことがなかったので、そこを創るのが大変だったみたいですね。―やはり海外でパフォーマンスをする際には、ある程度長い尺の作品が必要なのでしょうか? そりゃそうですよ! 誰だってわざわざ5分間のために国外からアーティストを呼ばないですから。やっぱり60分、少なくとも20分ぐらいの作品が創れることが必要ですね。ただ、その甲斐あってか、Twiggzクルー作品はすごく盛りあがって、現地の方々にも喜ばれたんですよ!―では、永利さんから見てズバリ、「海外に通用する作品」とはどのような作品ですか!? 日本発であること、そしてその意味を背負っていることですね。別に〝和もの〞をやれというわけではなくて、現代を生きている創り手の世代文化が見えるものがいいんです。 だって日本人のダンスはもともと、西洋ダンスのテクニックやスタイルがまずベースにあるじゃないですか? 「じゃあその西洋のテクニックを使って、日本人のあなたは何を見せてくれるの?」ということが求められるんです。 それこそ今の日本だったらアニメやゲーム、原宿のKawaii文化だったり……、そういった現代の日本文化のにじみ出ているものを期待されているんですよ。―そもそも日本のダンス作品って、海外では〝期待〞されているものなのでしょうか? もちろん期待されています!すでに舞踏やコンテンポラリー・ダンスの先人たちによって「日本のダンスは素晴らしい!」って世界で評価されていますから!西洋のテクニックを使って、日本人は何を見せてくれるの!? ただ、次はエンターテインメントの分野のダンスからそれを起こしたいと思っていますが、まだまだですね!―「文化を感じさせる」ということは、やはり作品のメッセージやストーリーなども重要なのでしょうか? そういうわけじゃないですよ。別にダンスだけの作品でも、例えば「ヒップホップを日本人の自分なりに新しい解釈で踊ってみせた」という作品だったら、創り手の信念や背景が明確に伝わってくるものなんです!―なるほど深いお話です。では今回の『Legend Tokyo』の審査では、どのような点を重視されますか? 単純に5分間のコンテスト作品を観て、「この人の60分作品を観たい!」と思えるかどうかですね。私にとって5分作品はある意味〝予告編〞のようなものなので、予告編が良かったら本編も見たくなるじゃないですか? もちろん、審査基準である〝誰もが楽しめる作品かどうか〞という点も重視しつつ、審査に当りたいと思います。―では、その〝5分間の予告編〞で仕事が広がる人と広がらない人。その違いはどこにあると思いますか? 残念だなって思うのが、振付師が本来の自分の持ち味を消してしまって、無理に「テーマやメッセージを込めよう」としている作品。それは見ていて解るし、すごくもったいないと思うんです! 自分の好きなことや本来のスタイルを貫いたうえの結果であれば、勝敗は二の次ですよ。 だって例え優勝できなくても、「この人と仕事をしたい!」って思ってくれる人がいて、実際に新たなマーケットに食い込んでいけた例がこの大会にはたくさんあるじゃないですか? ですから出展者のみなさんは、自分の原点に戻って欲しい。自分がやりたいこと、好きなこと、それらを軸にした作品を披露していただきたいですね!自分のスタイルを貫いてこそ、新たなる広がりを生み出す!国際ダンス・マーケットの視点日本と諸外国のダンスによるコラボレーション企画を実施し、さまざまな文化における国際交流イベント・舞台公演などを行なっている。2004年、国内外のトップ・ストリートダンサーを集結させたダンス・フェスティバル『We Love Dance Festival』を開催した!日本のダンス作品を海外に広めた革新者コンテンポラリーダンスの分野において、80年代より〝世界と日本をつなぐ〟という事業を数多く手がけてきた永利氏。近年ではシルク・ドゥ・ソレイユのキャスティング・パートナーとして日本でのオーディションを取り仕切り、日本の舞台芸術・身体表現の分野において広大な人脈を誇る。その世界のダンス・マーケットを熟知した彼女が見る、世界に通用するダンスとは!?シルク・ドゥ・ソレイユ キャスティング・パートナー株式会社アンクリエイティブ代表取締役社長永利 真弓国際交流舞台公演の企画・制作ストリートダンスの国際ダンス・フェスティバルの開催86年より舞台芸術のプロデュース業務を始め、91年に株式会社アンクリエイティブを創立。以後、コンテンポラリー・ダンスを中心とした国内海外に於ける舞台芸術事業、舞台芸術の国際交流事業等の企画制作を行う。また、広告代理店などによる各種イベントの演出制作、キャスティング等を手掛け、04年にはシルクドソレイユのキャスティングパートナーに就任している。〝日本発〟であり、「60分の作品が観たい!」と思わせてくれる作品を!さらなる進化のためのアドバイス!国際交流基金・文化芸術交流海外派遣助成事業として、3代目レジェンドTwiggzによる東南アジア3カ国を周る海外ツアー公演を実現!Twiggz FamASEAN TOURの実現コンドルズや上島雪夫、伊藤キムなど、日本の名だたる振付師、ダンスグループを海外に紹介し、現地公演を実現させてきた。日本のダンサー/グループの海外公演開催世界につなげたパイオニア!日本の現代舞踊を、からのアドバイス!世界が求めている〝日本発〞―それは、現代日本を生きる創り手の世代文化がみえるもの。世界へ向けた〝進化〟と〝可能性〟36

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