『SDM』 VOL.55
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―宮村さんは、いろんな劇場でダンスに関わる事業をされてきたとお聞きしましたが、具体的にどのようなお仕事をしているのでしょうか!? 基本的に海外からダンス公演を招聘したり、ダンス公演の国際共同制作事業などを手掛けています。主に〝コンテンポラリー・ダンス〞が主流ですが。もともとはKAATがまだ出来る前の神奈川芸術文化財団にいたんですよ。その後、世田谷パブリックシアターに移って、2013年、東京芸術劇場に移ってきました。ダンス以外にも音楽や演劇の公演にも携わってきましたよ。―ちなみに〝コンテンポラリー・ダンス(以下略:コンテ)〞とは、具体的にどういったダンスなのでしょうか? そもそもコンテは〝既存の固定概念の否定〞というところから始まっているんです。例えばバレエでは「バランスが安定し、手足は伸ばすのが美しい」とされているから、じゃあ「不安定なバランスで、手足は曲げて踊る」……というような感じですね。既存のダンスを壊して生まれたものなので、決まった形やテクニックのない身体表現なんです。―決まった型がないというのはすごいですね。 出発点としてもコンテの場合は、自分が楽しむためというよりかは、「何かを表現したい、伝えたい」想いがあって作品を創るのが大半です。ですから〝作品名がない〞ということはまずないんですよ。―では、「作品名と内容が全然違う!」ってことは……? それは、まずありません。やっぱり作品タイトルは重要ですよね!―では、宮村さんが良いと思うダンス作品はどのようなものでしょうか? 表現だという大前提がありつつちゃんと〝踊れる身体〞であること。例えばコンテの世界だとメソッド表現したいと想うからこそ、既存の固定概念を壊す。が無い分、ある意味、全然、踊れていなくても、「これが僕らのダンス表現です!」って言えたりするんですよ。 でも同じ動きでも、例え〝動かない〞という動作にしても、踊れる身体かそうでないかの違いは絶対的に大きいんです! また作品とは根本的に「何かを表現する」ものだと思いますが、それを体現するためにも、表現力としてのテクニックは必要です。―基本的なテクニックがありつつ、ちゃんと伝えたい表現があるということですね。 むしろ、「自分が伝えたい・表現したい世界」というのがハッキリあること。そしてそれをちゃんと表現できるためのテクニックや踊れる身体であることです。 そして、そこには「自分が表現したい」という欲求だけでなく、ちゃんと観ている人に楽しんでもらおうと、「外向きに創られているか?」が重要ですね!―では、宮村さんが「ぜひうちの劇場で作品を創りたい」と思われるのは、どのようなコレオグラファーですか? 引き出しの多い人ですね。自分のジャンルだけに凝り固まるのではなく、違う分野の表現にも好奇心を持てる、自分の表現のためのツールをダンスだけに限定しない人がいいです。照明に映像、衣装に演劇的なもの、美術にインスタレーションとか、色んなものを取り入れながら自分の世界を広げていくことに抵抗のない人がいいですね。 「自分ストリートダンスなんで……」なんて言わずに、表現をするために色んな手段を持つ、そういう意識がある方とは、ぜひやってみたいです!―作品表現に対して、幅広く柔軟な考えが必要ということですね! 自分の作品を創る時に何も固定概念をもつことはないんです。例えば舞台だって四角や半円形だけでなく、もっと様々な形状でコンテの世界はやっていますよ。 ダンスという身体表現は、まだいろんな可能性があるので、私もそういう意識をもつコレオグラファーと出会えたらと思っています!伝えるためには〝踊れる身体〞であることが必要。東京芸術劇場がもつ小規模劇場。エンドステージ、スラストステージ、センターステージなどさまざまな舞台形状にできる。現代ダンスのフロントランナー〝勅使川三郎〟とジャズ音楽界の巨匠〝山下洋輔〟による過激で桁外れな奇跡のセッションを実現!フランス・コンテンポラリー・サーカスの異端児として脚光を浴びるカミーユ・ボワテル、伝説の処女作を国内初招聘!芸術劇場のダンス専門プロデューサーダンス作品を披露する場所として重要な〝劇場〟という空間。そこで長年、パフォーミング・アーツにこだわり、関東有数の劇場で数多くの作品招聘を手掛けてきたのが宮村氏だ。長年にわたって数多くのダンス作品を見極め、国際的に招聘、共同企画制作してきた彼女の視点に映るストリートダンスの可能性とは!?  舞台表現、そして劇場側の視点で迫る!公益財団法人 東京都歴史文化財団 東京芸術劇場 事業企画課ダンス・プランニング・チーフ宮村 恵子東京芸術劇場・シアターイースト勅使川原三郎×山下洋輔「UP」制作カミーユ・ボワテル「ヨブの話ー善き人のいわれなき受難」制作神奈川県民ホール(神奈川芸術財団)、世田谷パブリックシアターで舞台制作・広報として活動した後、2013年に東京芸術劇場に移籍。海外からのダンス作品の招聘や国際共同制作、さまざまなパフォーミング・アーツの制作を通し、舞台芸術における身体表現に精通する。主にコンテンポラリー・ダンスへの見識が深く、現在、劇場事業企画課のダンス・プランニング・チーフをつとめる。自分が伝えたい表現がハッキリあり、それを表現できるテクニックも必要!さらなる進化のためのアドバイス!東京芸術劇場がもつ客席数834席の中規模劇場。演劇やミュージカル、舞踊など、さまざまなパフォーミングアーツの舞台公演が行なわれている。東京芸術劇場・プレイハウス劇場事業プロデューサー!身体芸術の制作を手がけ続けてきたダンス公演事業としての視点からのアドバイス!世界に広がるダンス作品を創る人は、自分の表現ツールを自分で限定しない。世界へ向けた〝進化〟と〝可能性〟38

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