『SDM』 VOL.57
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究め続けた唯一無二、海外の演劇祭への招聘や、坂東玉三郎演出の舞台公演など、名だたる活躍を果たしている世界的ダンスカンパニーDAZZLE。そんな彼らが結成20周年を迎え、主戦場とも言える単独舞台公演を開催! 彼らの20年の集大成とも言えるこの公演をレポート!ダンスとアクティングが融け合うように展開し、物語が紡がれていく様はDAZZLEの魅力の1つと言えるだろう。謎の青年リンド(左)と砂賊のロンド(右)、必然とも言えるこの運命の出会いにより物語は動き始める。映像を巧みに利用する演出もDAZZLEならでは。食卓を真上から映した映像で情景をより明快に伝える。ロンドに対し嘘や強引な追い立てなど、敵対的な態度のリンドだったが、実はその裏には深い愛情があった。2016.10.14(fri)-23(sun)@あうるすぽっと 日本を代表するダンスカンパニーDAZZLE、常に〝唯一無二〞であることにこだわり続けた彼らが結成20周年となる記念公演で導き出した1つの答えが〝マルチエンディング〞だ。 物語の舞台は、水が貴重なものとして扱われ、時に人々はそれを求めて奪い合う、涸れた世界。そこで1人の砂賊(盗賊)の青年ロンドが、盗みに入った屋敷で1人の不思議な男リンドに出会ったことから運命は大きく廻り始める。 映像の字幕と音声によるセリフの進行は、短く的確な言葉で登場人物の感情を静かに伝える。さらにそこから展開される複雑な群舞が物語にスピード感を加え、観る者を緩急自在に世界に引き込んでいた。 また、その世界の色合いや照明作りも見逃せない特徴だ。〝陰〞を強く意識したかのように繊細に彩られる舞台はどこか儚く、美しき退廃的な世界を演出する。そして流れるように展開される道具類を用いた複雑な空間構成も、舞台上に様々な表情を創り出し、〝空間づくり〞へのこだわりが要所にうかがえた。 物語終盤、来場者は「世界を救うためにリンドを殺すか?」、「リンドを生かして世界は緩やかに死に絶えるか?」という選択を迫られる。結末は、どちらを選択しても誰もが幸せになる完璧なハッピーエンドにはならない。一見〝悲劇〞に見えながら、どこか人間の弱さを誠実に美しく描き出していたこの物語。DAZZLEの集大成にふさわしく、常に進化し続ける彼らの美学が垣間見えるものであった。DAZZLE 20周年記念公演リンドロンド取材・文=長濱佳孝text by Yoshitaka Nagahama写真=ヒダキトモコphotography by Tomoko Hidaki24

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