『SDM』 VOL.57
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ここが死の世界であること、現世でやり残したことが何なのかに気付いていく。編集=安江雄彦edit by Takepico Yasue文=池田南津樹text by Mizuki Ikeda写真提供=(株)踊心photo cooperate by ODORIGOKOROここが死の世界であること、現世でやり残したことが何なのかに気付いていく。時をさかのぼり、現世で目を背け続けていたことに向き合うクチナシたち。―― 今回の舞台で挑戦した部分や、大変だった部分をお聞かせ下さい。 今までに沢山の舞台に出演させて頂き、知識とアイデアはありましたし、舞台を作る事の苦労も覚悟していたので、大変だとは感じませんでしたね。キャスト達を生かすことを一番に考え、選曲、使う曲の歌詞、長さ、間、台詞のチョイス、空気など細部にまで命を懸けてこだわりました。俺が固めた外枠の中に、キャストやスタッフが素晴らしい命を吹き込んでくれました。―― 1番伝えたかったことは、どういった想いですか? これはいつも自分に言い聞かせていることなのですが、〝一瞬一瞬をどれだけ大切に生きているか〞――人生ってその時の一瞬を大切にした積み重ねだと思うんです。人って1人では何もできないので、出会った人、いま俺の周りにいる人、いま俺を支えてくれている人、皆に愛をもって接して生きていきたい。そういった想いが伝わるように、とてつもなく細かく計算、考え抜いて創りましたね。脚本・構成・演出・振付大村俊介(SHUN)今回の凱旋公演の感想は!?INTERVIEW 〝本物のダンス〞こだわり続ける「DANCE WORKS」が贈る舞台『蜘蛛の糸』。物語の冒頭、MARとATSUSHIが扮する2人のお笑い芸人による漫才で幕が開き、会場の雰囲気を和ます。しかし一転、ATSUSHIは気が付くと暗闇の世界に。そこはこの世を去る際、現世に思いを残した者だけが集まる、生と死の狭間、走馬灯の世界――。 そこではクチナシと呼ばれる、個性豊かな住人たちが暮らしていた。彼らは、自分たちがいつから、そしてなぜこの世界にいるのか分からず淡々と日々を過ごしている。なぜ自分はここにいるのか、その謎を暴くため、ATSUSHIはそこで、同じような思いを抱えた松田尚子と出会い、それぞれ背負った暗い過去と向き合っていく・・・・・・。 そんな人々の様子、心模様をダンスはもちろん芝居や歌によって、時に切なく、時にコミカルに、強いコントラストでストレートに表現していくダンサーたち。全ての人々に平等に与えられた「生」と「死」。この刻一刻と過ぎ去っていく時のなかで、〝どう生きるか〞ということを、観る者の心に問いかけさせてくれた。 すべての人に共通する普遍的なテーマを、表現力の豊かなダンス、会場の空気を一変させる歌、そして迫真の演技で綴るこの舞台。今後もダンサーたちによる表現の可能性を大きく広げていくに違いない。 JuNGLEによる感情表現豊かなリップシンクが物語に華をそえる一方、クチナシの暗い過去が明らかになっていく。冒頭の明るい雰囲気からは一変、主人公は走馬灯の世界へ。緊張感溢れる群舞で観客を引き込んだ!冒頭の明るい雰囲気からは一変、主人公は走馬灯の世界へ。緊張感溢れる群舞で観客を引き込んだ!平等に与えられた「生」と「死」。今、〝どう生きるか〟を問いかける。平等に与えられた「生」と「死」。今、〝どう生きるか〟を問いかける。「蜘蛛の糸」の再演が決定!! 2017年5月22(月)、23(火)@渋谷区文化総合センター大和田《さくらホール》 詳細はダンスワークスHPをご覧ください!STAGE REPORT〝アイ〟と〝シ〟を司る、西川卓と宮内大樹。キャスト全員でのクライマックスシーンに観客は息をのんだ。巧みに小道具を用いた圧巻のショータイムが繰り広げられるクチナシのリーダー周平とBAR「sands」で働くモノたち。真実と正面から向き合うことによって、彼らは走馬灯の世界から新たな世界へ――。唐突に始まった漫才によって、観客の予想を裏切る意外な幕開け。2016.11.3(thu)-6(sun) 渋谷区文化総合センター大和田 6F 伝承ホール蜘蛛の糸 KUMO NO ITO取材・文=池田 南津樹text by Mizuki Ikeda写真提供=(株)踊心photo cooperate by ODORIGOKORO45

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