『SDM』 VOL.58
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――今回の舞台の振付はどのように割り振られていたのですか? KAORIさんがメイン振付師なんですよね?KAORI‥今回は3人で担当して、私は主に両家が出る大人数のシーンとキャピレット家、AKIHITO君は主にモンタギュー家のシーン、あともう1人の小㞍さんが〝死〞の振付、といった感じですね。AKIHITO‥僕は最初にお話をいただいた時は、現代の日本のダンス文化において主流となっているような若いダンサー、活気のある踊りのような振付にして欲しいとのことでした。逆にKAORIさんが担当されたキャピレット家は、品のあるダンスでイメージを統一していたんですよ。KAORI‥物語としてキャピレット家は富裕層、モンタギュー家は若くて荒々しいという違いがハッキリしているので、ダンスジャンルも今回はしっかり分けることになったんですよ。ですから出演ダンサーのオーディションの時から私もしっかりと分けて見させていただきました。モンタギュー家はストリートダンスをメインとしたテイストで、キャピレット家はジャズやバレエをメインに、という感じですね。そこからは必然的に「じゃあモンタギュー家の振付はAKIHITO君に」という話になったのを覚えています。――AKIHITOさんは初のミュージカル振付でしたが、感想はいかがですか? AKIHITO‥結構、心が折れまくる日があると構えていたんですけど(笑)、自分に求められていることがはっきりしていましたし、小池先生とKAORIさんにしっかりと僕の位置を作っていただいていたので、やりたいことをそのまま形にできました!KAORI‥AKIHITO君は前向きな所がよかったと思いますよ! この現場は自分の作ったものが小池先生の求めているものになってなかったらハッキリとダメって言われるし、その直しを次の日までに仕上げてこないといけない。だからこそ前向きな性格が向いていたんだと思います!――逆にKAORIさんは今回は4度目となる小池先生の舞台の振付でしたが、いかがでしたか?KAORI‥小池先生の作品の取り組み方や稽古の進み方も少しは慣れてきたのはあります。そしてミュージカルの振付にも。でも今回は争いのシーンが多くて違いを出すのに苦労したのと、一番時間がかかったのは舞踏会のシーン! 登場人物がたくさん出てきて見せなきゃいけないことをパズルみたいに組みあげながら作っていくのが大変でした。AKIHITO‥僕もこういうミュージカルでの小道具やセット、登場人物の掛け合いや物語を見せること、それを進行させつつ振付を作る、そのつじつまを合わせるというのが今までにない経験でしたし、新しい道が開けた感じでした!――その他に、今回の舞台の振付で新たに気付いたことなどはありますか? KAORI‥個人的に〝作り手〞としての生活サイクルが分かった気がしています。「こういう風に自分を持って行ったら頭の中がクリーンになって作りやすい」という感じで。2ヶ月まるまるクリエイターとして過ごして、自分のダンスを全くしてなくて、だからこそ分かることができた気がしますね!AKIHITO‥僕はもう小池先生のすさまじさにただただ驚かされました! 視野が広くて判断が速い、僕の作ったシーンを1回見ただけで瞬時に芝居をつけて、的確な意見をくださって……。あと思ったのが、僕に言うことが毎日違う。〝単に気分屋でもこんなに方向性は変わらない〞レベルのことを言われるんです。――そんなに違うことを言われるのですか?AKIHITO‥でもそれは「小池先生は毎回、違う立場のお客さんになりきって作品を観てものを言っている」と気付いて鳥肌が立ちました! 今日は主役を追う人、今日は全体を楽しみたい人、物語に没頭する人……、そうやって色んな来場者になって作品にたいしてダメ出しをする。ご本人に確認したわけじゃないんですけど、そう考えると全てがキレイに理解できて。ある意味これからの僕の活動も、「小池先生ならどう指摘するかな?」って視点を持ちながら作っていきたいと思いますし、今度芸術監督をやらせていただく『FINAL LEGEND』でも活かしていきたいと思います!物語としての両家の違いを、ダンスでも表現!ハッキリだめと言われるし、直しは次の日までに!毎回違う立場になって作品を観ている?KAORIが制作に一番時間がかかったという舞踏会のシーン。さまざまな要素が複雑に入り乱れている。モンタギュー家のダンスは、〝現代の若くて活気ある振付〟を依頼されて作られたという。初のミュージカル振付となるAKIHI-TO、そして小池修一郎氏演出の舞台では4度目の振付となるKAORIalive(以下略:KAORI)に、今回の振付について語ってもらった!23

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