『SDM』 VOL.60
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―では、KATSU1さんはJDSFさんから打診があった時、どのような印象でした? KATSU1:最初にJDSFさんからメールが来た時は「ヒップホップカルチャーのことをちゃんと伝えないといけないな!」って思っていました。 でも、ミーティングを重ねていく中で僕たちがヒップホップカルチャーのことをすごく大事にしていることを理解してくれて、大事にしながら一緒にやっていこうという感じが分かったんです。最初は「スポーツになるからそれはダメ」ってバッサリ言われるかもしれないと思ったので。 ―確かに、種目化のニュースが流れた時も、色んな意見がシーンの中で噴出していましたね。KATSU1:種目化に関して賛否両論が起こるのもすごく分かるんですよ。僕たちのシーンの人間はカルチャーを大事に、願いを込めながらシーンを大きくしていったのに、あるとき全然違う世界の人たちが大きな力でそれを横からかすめ取っていって広めてしまうことに強い拒否感があるので。 ただ、僕たちの大切なものを分かってもらうためには、一緒にやっていかないといけないという想いもあるし、じゃあ「JDSFさん抜きでやろうぜ」ってなった時にこういう団体は僕らにはない、じゃあ今からB-BOY協会を立ち上げて、システムや人選を決めて……なんてできるハズがないと思ったんです。―ストリートのシーンで組織や協会を立ち上げるのはなかなか難しそうですよね……。山田:私たちも経験しましたが、全国規模のこういった組織を作るのは本当に難しいですよ。自分が儲かるように働きかけたりとか、「俺が中心に」、「俺を抜かして何やってるんだ」って言い出す人が必ずいますからね。 ですから、ある意味今回の種目化に関してこうやってB-BOYの方々に集まっていただいたのは、1つのいいきっかけになれると思いますよ。KATSU1:そうですね! 僕も個人的にスポーツ界にこういう形で入るのも勉強になるし、B-BOYシーンに対して「ちょっと勉強してきますね」という感覚もあるんです。―例えばどういったところが勉強になりました?KATSU1:今までは「選手が金メダルを獲る」という考えだったんですけど、「裏の人たちも一緒に戦って、組織でやっていかないと勝てない」ということが分かりました。 一方でメダルのために国ぐるみでドーピング違反とか賄賂の可能性も否定できないとか、そういう話を聞いた時はビックリしましたね。オリンピックって結構クリーンなイメージがあったので。ある意味、「オリンピックにひと言申したい!」という感じですよ!山田:人間のやることなので、ギリギリの戦いに中ではそういったこともあり得ますが、一方でやはりスポーツなので、「礼に始まり礼に終わる」という文化もちゃんとあるんですよ! それに、私もKATSU1さんからブレイキンの歴史を勉強しましたが、「暴力で荒んでいるエネルギーを健全に発散する」という点がオリンピックと親和性があるんです。オリンピックは元々戦争をスポーツに置き換えて競い合うという起源説がありますからね!―言われてみれば、以外な共通点がありますね!KATSU1:そうはいっても、「ブレイキンがオリンピックの種目になる」って聞いて、最初は「ブレイキンはスポーツじゃない!」って気持ちもありました。 でも、僕たちB-BOYが何を一番大切にしているのかっていう部分さえ崩れなければ、スポーツになっても……というか、スポーツの1つとして存在してもいいのかなと今は思っています。―KATSU1さんご自身も柔軟な考え方をされているんですね。KATSU1:そもそも本当にリアルなカルチャーからすると、今開催されているバトルイベントだって、「エントリー料を払って用意された会場で踊ってジャッジが判断する」という点で、既にスポーツとしての側面があるんですよ。 それが〝オリンピック〞って名前がデカイからこれだけ反応が大きいのかなって。高橋:確かにオリンピックという大きい枠組みの中に、僕らの文化をちゃんと持っていけるのか不安視している方も多いと思います。 だからこそ、少しでも今までのカルチャーが反映されるような体制をJDSFさんとKATSU1君をはじめとするB-BOYで創っていって欲しい。外から批難するのではなく、、自ら飛び込んで動いているKATSU1君はすばらしいですよ!―いろんな不安や意見の中で、自分で動いて良くしていこうというのはすばらしいと思います!KATSU1:ある意味、みんなが不安に思っているようなことを取り除くために自分はいるのかなと思っています。1つ間違えたら全然違う方向にいってしまう可能性もあるし、新しく物事が動く時に賛否両論あるのは当たり前なので、これをいいチャンスと捉えてシーンにまた貢献していきたいですね!スポーツとしてのダンスを全国に広めるための非営利組織(公益社団法人)。47都道府県すべてに支部を持ち、全体の会員数としては4万人を誇る。日本オリンピック委員会に加盟する唯一のダンス組織。当初は〝社交ダンス〟を発展・スポーツ化したものを「ダンススポーツ」と呼称してきたが、最近ではジャンルを問わず競技スポーツ化するダンスを広く含む。topic.02日本ダンススポーツ連盟(JDSF)とは?5/12にJSDFが行なった記者発表によると、ブレイキン種目化に関してJSDF内にブレイクダンス部を発足させ、KATSU1(部長)、NARUMI・NORI(副部長)、NONman(法政委員長)、Kaku(ジュニア委員長)、wingzero(広報副委員長)、Kazuhiro(審判委員)、WATA(学校教育委員長)、TAISUKE・ISSEI(アンバサダー)、CHOPPA→(ジュニア委員)といったそうそうたるB-BOY、B-GIRLが関わり、ルール化や最終予選の成功に尽力している。topic.03ダンサーは誰が関わっている?ヒップホップカルチャーのことをちゃんと伝えないと!ヒップホップカルチャーのことをちゃんと伝えないと!ヒップホップとオリンピックの意外な共通点?ヒップホップとオリンピックの意外な共通点?スポーツの1つとして存在しても。スポーツの1つとして存在しても。ダンスをがんばっている子供が〝日本を代表する五輪選手〞になる。ダンスをがんばっている子供が〝日本を代表する五輪選手〞になる。山田 淳公益社団法人 日本ダンススポーツ連盟 専務理事Profile>>民間企業に勤めながら選手として日本ダンススポーツ連盟に所属し、全日本ダンススポーツランキング1位に輝く。現在は現役を退き、同連盟専務理事に就任。客観的なジャッジシステムの開発を推進し、国際標準化を実現。2010年アジア大会の採点管理責任者のほか、重要な国際大会のジャッジを務める。〝競技スポーツとしてのダンス〟に広く精通し、広め続けている。ブレイキンが国際スポーツ競技になる日。ブレイキンが国際スポーツ競技になる日。特別対談14

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