『SDM』 VOL.61
41/60

―今はストーリーを表現するダンス作品も多いですが、漫画家としてダンスのストーリー表現についてはどう思われますか? これはダンスではなくお芝居の世界のお話ですが……、脚本家の方々とお話して面白いと思うのが「創りたい話はあるけど、それをできる役者がいない」ということを聞きます。逆に「この役者に惚れ込んで、この人にこういう役を作って話を創りたい」という人もいる。 ですので〝物語を生みだす人を刺激するプレイヤー〞というのも大事なのではないかと思います。いくら自分の頭の中で考えても、それをやる人ができなかったらしょうがないですからね。―さまざまな舞台表現にお詳しいのも、ご自身で実際に観覧されたものが蓄積されているんですよね? いろんなものに興味を持つというか、今、たくさんの人が興味を持って観に行っているものを自分も観に行ったり、自分が感動する経験をたくさん持っていた方がクリエイターとしては絶対に良いと思います。「女優を目指す女の子の話」を描いていたら、舞台表現にも興味を持って調べるようになって、その先にダンスもあった感じですね! バレエやコンテ、オペラに歌舞伎に能、パントマイムや落語もよく観ていますよ。―幅広いジャンルをご覧になっているんですね! その中で印象に残った舞台はありますか? 歌舞伎で市川猿之助(三代目)さんの『義経千本桜』で見せた宙乗り※ですね。それまで宙乗りはみんな馬鹿にした邪道的な演出でしたが、それがあまりにも素晴らしくて、宙乗りという演出技法そのものの評価が一変! みんながやるようになったんですよ! それと落語の人間国宝、故・桂米朝さんが、100年くらい昔の誰もやっていなかった古典落語を改めて自分の解釈でやられたのも素晴らしかったですね。そうやって、新しいものを切り拓いていく情熱は、お客さんにも伝わりますので、演出技法そのものの評価を一変させた素晴らしい舞台。観ていてエネルギーをもらえるしワクワクしますよね!※舞台や客席の上から演者をワイヤーで吊って空中を移動する演出―やはりクリエイターとして、いろんな分野にアンテナを張ることを意識されているんですね! 私は単に好奇心が強いだけですけど(笑)! いろんな舞台を観たり、ニュースや面白い話を聞いたり、それが数年経ってマンガの中でポロッと出てくることがあります。自分が感動したものが自分の中に蓄積されていくので、漫画家も振付師もいろんな分野のエンタメを観ることに無駄はないと思いますよ!―ちなみに今年の『Legend Tokyo』では、2年ぶりに審査員としてご参加いただきますが、改めて2015年度大会のご感想はいかがでしたか? たった5分間の作品なのにいろんな物語が凝縮されていて、ものすごく感動しました! この短い分数でこれだけの物語や感情を込めている、「セリフもないのにダンスでここまで表現できるのか!」とショックを受けると同時にすごい快感でした!―〝快感〞とは素敵な表現ですね! ダンスの面白さって、音楽にどう身体が乗っているか、その瞬間がすごい快感なんですよね。まるで音楽を絵で見ているような感じにさせられて、音楽と同時にそれに合った身体の動きがパッってハマる。それがドラマチックに表現されていく瞬間は「面白い!」と思いましたよね!―では最後に、本年度大会では審査員としてどのようなポイントを重視されますか? やはり漫画家ですから作品のテーマには惹かれます。ダンスを通して伝わってくるテーマ、それとやはり音楽とダンスのマッチングもありますね。どんな風に意表をついた動きで驚かせてくれるのか? その人たちの生きているエネルギーが強く伝わってくる作品に期待したいです!いろんな分野のエンタメに触れることに無駄はない!日本の舞台漫画クリエイター、日本の舞台漫画クリエイター、新しいものを切り拓いていくためには、自分自身が感動した経験の蓄積が大切!「ガラスの仮面」連載40周年を記念し、原画展が今年の8月23日から9月4日まで銀座松屋8階イベントスクエアにて開催!「ガラスの仮面」の世界観を表現したコラボカフェが8月29日まで大阪の阪急うめだ本店4階にて期間限定オープン中!日本マンガ史上に残る名作であり、アニメ、ドラマ、舞台作品化と幅広くコンテンツ展開されている「ガラスの仮面」。その作者である美内すずえは、演劇をテーマにした同作の題材として膨大な数の舞台を取材・研究し、多くの舞台芸能・舞台表現に精通している存在でもある。クリエイターとして、舞台表現に精通する者として、彼女が捉えるダンス作品とは!?漫画家「ガラスの仮面」作者美内 すずえ連載40周年記念ガラスの仮面展「ガラスの仮面」カフェ高校時代に「別冊マーガレット」にて漫画家デビュー。以後、次々に意欲作を発表し、1976年に自信の代表作となる「ガラスの仮面」を雑誌「花とゆめ」にて連載開始。1995年に「日本漫画家協会賞 優秀賞」を受賞する。作品はテレビアニメ化、ドラマ化、舞台化などを果たし、特に舞台化作品においては脚本や監修としても参加するなど、精力的に活動している。「ガラスの仮面」を元にしたオリジナル作品が飛び出すアニメとして横浜の「DMM VR THEATER」にて9月3日まで上映中!VRアニメ『3ねんDぐみガラスの仮面』言わずと知れた少女マンガ界における金字塔であり、彼女の代表作。1976年より連載が続いている日本屈指の長寿作品。マンガ「ガラスの仮面」「ガラスの仮面」作者!日本マンガ界の金字塔、PROFILEJOB FILEJOB FILE音楽と身体表現をマッチングさせて絵を観せる、新たなるクリエイティブを!この業界からのアドバイス!日本のダンス・エンターテインメント、 39

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る