『SDM』 VOL.26
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――今回、どのような経緯で、この舞台の振付けをお願いされたのですか? 今作のプロデューサーが、たまたまDAZZLEを知ってくれていたんです。舞台も観て頂いていて、その方が、僕の振付けするスタイルが「ドラキュラ」という題材のイメージにあっていると判断して頂き、このお話を頂きました。僕自身もDAZZLEがもつ独特の雰囲気は、ホラーや妖艶なテイストを持つ作品に合うと思っていましたし、実際、皆さん「スゴくハマっていた!」って言って頂いたので良かったです。 今回、ジャズダンスやバレエではなく、僕みたいなストリートダンスから派生した人が大型ミュージカルの振付師として入るのは、かなり異例なことです。ただその分、〝しくじる訳にいかない〟というプレッシャーも大きくありましたね。――実際、どういったところがダンス公演と違うと感じましたか? ミュージカルって本当にダンスの〝ショー〟と勝手が違います! まず、ステージ上に情報がいっぱい混在しているんですよ。物語の主人公がいて、メインで歌う人がいて、その横にアンサンブルのコーラスの人がいて、僕たちダンサーもいて、舞台上でセットも動いている。その中で、お客さんの目をどこに向けるかということを計算しなくてはいけません。 今作の演出においては、そのキャラクターが、どういった心情で、誰に向かって踊っているのかをハッキリさせなくてはいけない。そこが、ビジュアルとして面白く見せる〝ショー〟の考え方と違って、スゴく悩みました。例えば「3人が前を向いてユニゾンをする」としても、そこに「どんな意味がある?」という問題がでてきます。そうではなく、「この時、ヴァンパイアは対象となるキャラクターの血を求めているから、その人を向いて踊らなくてはいけない」といった感じですね。もちろん、振付けだけでなく、踊る時も、そのキャラクターとして考えて動かないといけません。けど、それを意識することによって、物語を伝えるという意味ではスゴく説得力が出てくることが解りました。 「ああ、ここまで、感情や気持ちの流れを大事にするんだな」って。そこがダンス・シーンで活躍してきた僕としては新しかったし、非常に勉強になりましたね。 今なお、世界中のエンターテインメントに影響を与え続けている「ドラキュラ」が、原作のストーリーそのままに新しい世界観のミュージカルとして蘇った。 誰もが知る〝ドラキュラ伯爵〞というキャラクターを演じるのは、なんと女性キャスト、〝和央ようか〞。それも女王という設定ではなく〝伯爵〞として! しかし、そこは元宝塚のトップスター。高潔かつ荘厳なオーラで、男性キャスト以上に「カッコいい!」と思わせるドラキュラ伯爵像を舞台上に生みだしていた。 ドラキュラ伯爵に魅せられた女性を演じるのは、こちらも元宝塚のトップスター〝花總まり〞。もう1人が元〝モーニング娘。〞の安倍なつみ。かなりの豪華キャストだ。 豪華なのはキャストだけではない。舞台上に中世の古城を雰囲気そのままに再現する大型の舞台セット、「ドラキュラ」の世界観を追及した壮麗な衣装、照明など、〝大型商業ミュージカル〞のスゴさを感じずにはいられないステージであった。 長谷川達也が出演し、振付けをも手がけたのは、主にドラキュラ伯爵に仕えるヴァンパイアたちのシーン。DAZZLEの独特の幾何学的な動きが、非人間的で美しい吸血鬼のイメージにこの上なく適合している。物語前半、主人公がヴァンパイアに襲われるシーンでは、『Legend Tokyo』でも魅せてくれた赤布を使った演出を披露。危機迫るシーンを、映画のようなダイナミックさで描き出していた! 今まで、こういった大型商業ミュージカルの世界では、日本のストリートダンスにある〝旬〞な才能や演出が、ここまで大きな役割を担うことは皆無であった。 だからこそ、今回の長谷川達也のコレオグラファー起用は、まさに大抜擢といえよう! 彼の実績は、ストリートダンスとエンタメ・シーン、その関係に新たなる布石を生み出してくれたに違いない。世界初、女性が演じる美しき吸血鬼。荘厳なるゴシック・ホラーの名作、再誕!元宝塚トップスターならではの凛とした出で立ち! “和央ようか”は、既存のイメージに馴染みながらも新しいドラキュラ伯爵像をみせてくれた。パンフレットには、大御所のキャスト陣に並び、長谷川達也にスポットを当てた特集見開きまでが掲載されていた。キュートな花嫁、そしてドラキュラに魅せられ怪物となった2面を演じきった“安倍なつみ(写真右)”。2幕オープニングではショッキングなシーンも!吸血鬼に魅せられた女性に扮する“花總まり(写真左)”。圧倒的な歌唱力とエレガントなオーラで、元宝塚トップスターもう1つの実力をみせた。4階建て以上はあろう巨大な舞台セット。回り舞台の上に設置され、ドラキュラ城やロンドンの町並みなど、さまざまシーンを創り出していた。TOKYO/8月20日(土)~9月11日(日)@東京国際フォーラム ホールCOSAKA/9月15日(木)~9月18日(日)@梅田芸術劇場 メインホール取材・文=工藤光昭text by Mitsuaki Kudo〝ショー〟と〝ミュージカル〟。その違いに難しさを感じた。宝塚、伝説の2大トップスターが際会する壮大な新生ヴァンパイア・ストーリー。「DRACULA」THE MUSICALミュージカルのコレオグラファーとは!?61

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