『SDM』 VOL.31
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―大会全体を通してどのような感想を持たれましたか? まずクオリティが予想より全然高い! 普通、映画だって長時間だとお尻が痛くなるけど、同じ時間を観て全く苦にならない。大会のシステム上、1曲入魂で燃焼じゃないですか!? だからコンサートなどと違って、ずっとキレのあるクライマックス状態が見られる。それが魅力だし、ダンスの大会ではなく、作品の大会なので、細かいテクニカル論で見なくていいのが良かったですね。―それでは、受賞作品はどのような視点で選びましたか? 作品の評価なので、出演者の年令や性別は関係なく、全体を通してフラットに見て、僕自身が前のめりになる瞬間の〝身体の角度〞。これが興味を抱いた度合いのグラフなので、この角度で決めました。それが圧倒的だったのが、梅棒作品! 設定だけじゃなくて、ダンスもいいってこともベースにありましたね。 それからRuu作品。子供たちをあれだけまとめたっていう、ステージ上にない部分が見えました。その部分も、僕の役割である〝プロデューサー的視点〞でみると、すごく感動しましたね。―なるほど。では他にプロデューサーとして思ったことは? まず、キャッチーじゃないと人は覚えてくれないということを知るべき。例えば作品タイトルも、もっと短くして、人が言葉にしてツイッターとかで簡単につぶやけるぐらいがいい。「なんか良かった作品」では、もったいない! 例えば、MOTO作品でムーンウォークを全体でやったシーンがありましたよね。ああいう2秒の意外性でもいい。あそこだけテレビCMに使われる可能性もある。その可能性を拾っていけば、もっとダンスシーンが伸びたり、ダンサーたちの道が広がるんじゃないでしょうか!? あと、彼らの戦いはこの中にはない。〝今後どうつながるか〞だから。普通こういう大会というと、前回優勝したセオリーを、今回も持ってくるってやりがちじゃないですか。そうすると作品が画一化しちゃうから、絶対やっちゃダメ。戦いは外にあるんです! そうやって創られた新しい作品を、次回もぜひ観たいですね!―大会の全体的な感想はいかがでしたか? とにかくどの作品もクオリティが高くて素晴らしかったです。作品の規定時間が5分ということでしたが、とてつもなく濃厚な5分間を、これだけ多く見ることができる!それだけですでにエンターテインメントとして成立していると思いました。〝ダンス〞というイメージを壊すような、垣根を越えていく可能性を強く感じましたね!―審査員賞に選んだTSUBASA作品はどのような点が良かったのですか? 私の審査視点の1つとして「なぜ今それをするのか?」という〝時代性〞があるのですが、TSUBASA作品にはそれを強く感じました。パフォーマンスとしてステージの使い方も上手いし、ダンスのクオリティも高くて素晴らしい。そこに、観ていてドキドキするようなサスペンス風のストーリーがあって、最後に救われない終わり方をしてしまう。そのメッセージ性みたいなものにすごく心を動かされましたね。 また、これは後で知ったのですが、彼は日常的にボランティアをされているんですよね。そういった人が悲劇的な作品を見せるということも彼の創作センスを感じました。―これからダンスシーンはどうなっていくと思いますか? 大事にしなければいけないのは、もっとダンスシーンも作品創りに対する環境を整えていくことですね。エンターテインメントで気をつけてなければいけないのは、新しいものばかりを追い求めて、作品が次々に消費されてしまい、創り手が消耗していくサイクルになってしまうこと。これはすでにさまざまな分野で起こっています。 新たな可能性を秘めているダンスシーンだからこそ、創り手であるコレオグラファーという存在を大事にして、いい作品であればそれを何度でも観れる機会を作る。そういった環境やサポートを我々が作っていかなければいけないと思います。 そうやって、〝舞台パフォーマンスとしてのストリートダンス〞を日本が世界をリードしていく、世界に発信していけるようなものになって欲しいと思います!総合プロデューサーの視点。#05おちまさと 株式会社おちまさと事務所代表取締役社長/プロデューサー戦いはこの大会の中にあるんじゃない。〝今後どうつながるか〞という外の世界にある!テレビ番組の企画・構成放送作家・プロデューサーとしてテレビ番組の企画、演出、プロデュースを手がけ、数多くの人気番組を世に輩出。その他にもテレビやラジオ番組のMC出演に、書籍の執筆や講演活動を展開し、現在では数多くの企業ブランディングやコラボ企画、広告やイベントの企画・演出・製作のプロデュースを手がけるなど、あらゆる分野に通じた総合的なプロデューサーとして活躍。天才・たけしの元気が出るテレビ!!/とんねるずの生でダラダラいかせて!!/進め!電波少年/学校へ行こう!/ガチンコ!/内村プロデュース/仕立屋工場/グータン/etc...・経済産業省 クールジャパン戦略推進事業・第三者審査委員会委員(2012年)・厚生省 イクメンプロジェクト推進メンバー (2012年)Ruu作品「It’s a Fabulous small world.」書籍の執筆その他審査員賞は、このコレオグラファーの作品に!人気テレビ番組や数多くの企業ブランディングを手がけるトップ・プロデューサー。舞台パフォーマンスとしての視点。#06蔭山 陽太 KAAT神奈川芸術劇場支配人新たなる可能性を秘めたシーンだからこそ、〝消耗されない〞サイクルが必要。KAAT神奈川芸術劇場・支配人2011年のKAAT神奈川芸術劇場オープン時より劇場支配人として自主事業や興業を統括。過去には日本の誇る大型芸術劇場である〝まつもと市民芸術館〟のプロデューサー兼支配人を務め数々の事業を担当。他にも、日本を代表する劇団〝文学座〟の企画事業部長を長く務め、全国のほぼ全ての主要劇場に利用、まさに劇場の舞台空間を知り尽くす人物として知られている。神奈川県としては初の舞台芸術専門劇場である、KAAT神奈川芸術劇場の支配人をオープン時より務めている。設計や芸術監督に名だたるスタッフ陣を迎え、音響家が選ぶ優良ホール100選にも選ばれたまつもと市民芸術館の支配人を務めた。日本の三大劇団の1つである文学座の制作部長を務め、この時日本各地の主要な劇場をツアー興業として訪れている。TSUBASA作品「Mad Droppers」まつもと市民芸術館・プロデューサー兼支配人文学座・企画事業部制作部長審査員賞は、このコレオグラファーの作品に!日本中の劇場を知り尽くす舞台芸術を広げる達人。『相手に9割しゃべらせる質問術』『とっさのひと言で心に刺さるコメント術』『100の仕事も同時に回るダブルブッキング時間術』『ありがとうの約束』大会結果&JUDGE interview25

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