『SDM』 VOL.32
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―お2人は、なぜ〝双子のダンスチーム〞として活動しようと思ったのですか?Larry‥そう考えて活動を始めたわけではないんです。「俺ら2人でやっていこうぜ!」なんて決断したこともなかった。Laurent‥あえて挙げるなら、僕らが中学1年生の時に参加した地域イベントがキッカケだったかもしれません。そこで初めて兄弟2人で大勢の前で踊ったんですよ。Larry‥その時の僕らの格好は、誕生日にもらったラコステの白い服を着て、頭は坊主、身体もやせ気味で頼りない。登場すると周りの観客が笑い出しちゃうほど、見た目が全然イケてなかったんです(笑)。Laurent‥でも、音楽がかかって僕らが踊り出した瞬間、いっきに会場がスゴく盛り上がった! その時の経験と自信が今、2人で活動していることに繋がっていると思います!―中学1年生の時にはお2人ともダンスを始めていたのですか!?Laurent‥中学1年というか、もう物心つく前からですね!僕たちは18人の大家族で、みんなダンスが大好き! 特に母がダンスの楽しさを教えてくれて〝周りにダンスがある〞という環境が当たり前でした。Larry‥ちなみに、僕らには他にも兄弟がいるんですけど、何人かはアーティストのビデオクリップに出るぐらいダンスが上手かったんです!――ではお2人がプロダンサーの道に進むのも自然な流れだったんですね!2人‥いやいや、とんでもない!Larry‥僕らが青年期になって「ダンスを本格的にやっていきたい」って話したとき、母は大反対でした。「ダンスをやり続けても食べてはいけないよ」って。当時、フランスではストリートダンサーの社会的立場は低くて、何か資格や保証があるものではなかったから、そういうところを心配してくれていたんですね。Laurent‥でも最近、フランスでは高校の卒業資格を取るための選択科目にダンスが取り入れられるようになったんです。今では、僕らが学生だった頃とは比べものにならない程、社会的にも認知されるようになってきました!―フランスでも教育現場にダンスが導入されているなんて、世界的にダンスの地位が向上しているみたいで嬉しいですね! Laurent‥まぁ〝教育の現場〞ということなので、規則や規制などはあるんですけど、何より人間の教育としてダンスが認められたというのは喜ばしいですよね! ―ちなみに「SDM」では過去の『JUSTEDEBOUT 2008』※の取材でお2人を初めて知って衝撃を受けたのですが、そのときはフランスではすでに有名だったんですか?Larry‥アンダーグラウンドのシーンでは、そこそこ名前は知られていました。しかし、当時はまだ僕らのスタイルは周りに認められていなくて、むしろ否定的な声が多かったです。その分、この大会の時は闘争心を燃やして挑みましたね!Laurent‥(当時の写真を見て)うわー! 懐かしいですね! この世界的なステージでの「俺たちはこれからお前たちが見たこともない世界を見せつけてやる!」っていう当時の気合いが、この写真からにじみ出ていますね!―いったい当時、何が周りに認められていなかったんですか?Larry‥やはり、「一般的なヒップホップ・ダンサーとは違ったスタイルだから」ということだと思います。ただ、僕らに「人と違うことをしたい」という意識は全くなくて、単純に自分の心の中を見つめて自分自身を活かすためのダンスをしているだけ。僕らは〝ヒップホップ〞というものは動きやテクニックではなく〝精神〞だと思っているんです。Laurent‥昔は僕たち家族も貧しかった。その中で「自分が自分であるために強くなければいけない」という意識がとても大事だったし、そこから生まれてきたのが僕たちのスタイルであり、ヒップホップだと思っているんです!―やはりフランスでも「こういう動きでないとヒップホップじゃない」という考え方はあるのですか?Larry‥そうです! 特に大御所と呼ばれている人たちは、立場の保身に一生懸命で本当にリスペクトできる人はごくわずかでした。Laurent‥ヒップホップってよく「歴史がない」って言われがちですが、僕らは全くそうは思わない。ヒップホップというカルチャーの中に偉大なアーティストはたくさんいるし、今ではバスケやサッカーなど、様々なフィールドに影響を与えている。そうやって考えると〝ヒップホップ〞という定義は、本当に大きなものだと思うんです!Laurent‥その大きすぎるヒップホップというものを、〝よく解ってない人たちに理解できる枠組み〞を作った人、もしくは〝その枠組みにこだわる人〞にとって、僕らみたいな枠に入りきらない奴らは、やっぱり煙たがられましたね。profileロランとラリー、双子のフランス人ダンサーによるダンスチーム。1988年12月6日、パリ北郊外のサルセルに生まれる。かつてはフランスの有名チーム〝Criminalz Crew〟に所属。2008年、フランスの人気TV番組「Incroyable Talent」準優勝を機に脚光を浴び始める。さまざまなダンスを取り入れたオリジナルムーブと、高いセルフ・プロデュース能力が評価され、今や世界中が注目するダンス・アーティストとして活躍している!VOL.32COVER DANCERLarry Bourgeoisラリー・ブルジョア(弟)Laurent Bourgeoisロラン・ブルジョア(兄)※2002年からフランスのパリで開催されている2on2バトルの世界大会。2008年から日本予選が開催され、毎年数多くの日本人ダンサーが挑戦している。「SDM VOL.5」の巻頭特集『JUSTE DEBOUT 2008』では、彼らの写真を全面に掲載! 彼らはこの大会で優勝候補を破ってベスト4という結果を残し、鮮烈なイメージを焼きつけていた!これからお前たちが知らない世界を見せつけてやる!16

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