『SDM』 VOL.32
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※オピニオン・リーダー……集団の中で影響力がある人。説得力があり信頼されている人。※― 数ある世界大会の中でも、このように一般企業が自ら主催する大会って他にないですよね!? そうですね! ただ、かつてはRed Bullも〝協賛〞というかたちでシーンに関わっていたようです。アメリカの「ロード・オブ・ザ・フロア」というイベントに協賛したのが始まりでした。そこから、このイベントをRed Bull主催でスタートしたのが「BC One」だと聞いています。―しかし、サッカーやアメフトのようなメジャースポーツではなく、なぜストリートダンスの大会を主催しようとなったのでしょうか!? そこがRed Bullのマーケティングの上手いところなんです! 彼らは、既存のメジャーなシーンに後から参入してプロモーションするのではなく、才能のある人たちをフィーチャーして自ら新しいシーンを創る。企業がマイナーなカルチャーを育てて、大きなシーンに変えるんです。まさに逆転の発想ですよね!―これは、イベント興業の事業ではなく、マーケティングだったんですね! しかし、プロモーションとしては日本の企業と全然、考え方が違いますよね!? 一般的な日本企業だと、「どれだけ人口がいるんだ」とか、「どれだけ人気があるんだ」とか、数字やデータが揃わないと絶対にやらないですよね!? だから、結局、二番煎じになったり、中途半端になったりする。実際にRed Bullの会議では、「こういう面白いカルチャーがあるんですよ」、「ヤバいね、それ面白いじゃん!」で通ったりする。そういう感覚だから、結構、突拍子もないことがまかり通る瞬間があるんですよ。―実際、それでRed Bullはどんなイメージをプロモーションしようと思っているのでしょうか!? 単純に「タフでカッコいいこと!」がキーワードだと思いますよ。やっぱり、Red Bullがやっていることって本当にカッコいいんです! Red Bullが手がけているカルチャーのDVDがあるんですが、それを見ると、「こんなカルチャーやってるんだ!」みたいな大会まで色々やっています。年間5000以上のイベントを開催しているそうですが、どんなに人口が少ないカルチャーでも、「カッコいい!」ものだったら応援してますね。Red Bullがサポートするとそのカルチャーが、またカッコ良くみえて、やる人が増える。だから、実際にカルチャーがどんどん大きくなるんです。―まさに〝翼を授ける〞ですね! しかし、数あるジャンルの中から、なぜ〝B-BOYのソロバトル〞となったのでしょうか!? B-BOYってヒップホップ・カルチャーの原点なので、どんな国でも必ずいるんですよ。もともとニューヨークの低所得者地域で、お金が無い人達だからこそできたカルチャーですから。そういった先進国、発展途上国、裕福な国、貧しい国、構わずいろんな人たちに平等にチャンスを与えられることができる唯一のジャンルなんですね!―ダンサーたちに対する待遇も、驚くほど豪華ですよね!?それはなぜ!? これは「BC One」だけでなく、すべてこんな感じなんです。ホテルも立派だし、選手の扱いもスゴくいい! 「このカルチャーは人口が少ないから、これくらいでいい」みたいなことは絶対しない。彼らは、すべてのスポーツ、カルチャーにおいて平等にVIPとして扱うんです。 それに普通の大企業だと、イベントって代理店に丸投げするのが一般的ですよね。お金とアイディアだけ出して「後はやっておいて」みたいな。でもRed Bullは、どんなにマイナーなカルチャーの大会でも、マーケティング・チームが直接、現場に出向く。そして、そのシーンのオピニオン・リーダー を見つけ、アイディアを聞いたり、一緒に組んでイベントを創り出すというシステムなんです。 マーケティングが現場直結だから、アーティストにちゃんとリスペクトを持って接しているし、ホスピタリティに厚い。だから、それぞれのカルチャーの人たちがRed Bullを本当に信頼しているんです。実際にロゴがある帽子やTシャツを、みんなカッコいいと思って着ていますよね!? それが、どんどん広がってブランドイメージが良くなり、セールスにつながっているんだと思いますよ。―確かに。今やRed Bullは、エナジードリンクで売上、シェアともに世界第1位なんですよね!? だからRed Bullがやると、どうしようか迷っていた企業も参入しやすいんですよ。けど、この企業はちょっとイケてないと思ったら組まない。本当に「カッコいいことをやっていく!」ということに対して、品質管理がしっかりしてるし、ブランドイメージを壊さないよう細部までこだわっているんです。ある意味、Red Bullが作っていくことが、今後のルールになっていくかもしれませんね!Profile多くのB-BOYたちから支持される日本を代表するバトルDJ。『Red Bull BC ONE』をはじめ、数々の世界的ビッグ・イベントで活躍。ヒップホップ・カルチャーの最重要組織〝UNIVERSAL ZULU NATION〟に所属し、自身も多くのイベントをオーガナイズする。また、原宿にあるダンス関連用品ショップ〝DANCERS COLLECTION〟も経営する。 www.dancers-c.com/■ Red Bullが応援するさまざまなカルチャーの情報を掲載!Red Bull Japan オフィシャルサイト www.redbull.jp■ 『Red Bull BC One』に関する情報は以下のサイトをチェック!Red Bull BC ONE オフィシャルサイト(※英語) www.redbullbcone.comオリンピックさながらに全世界を巻き込む展開、そして選ばれしB-BOYたちに贈られるトップ・アスリートなみの待遇。はたしてRed Bullは、なぜこのように大規模な大会を実現させたのだろうか!?本大会のバトルDJをつとめ、2010年の東京開催では立役者として活躍したDJ MAR SKIに、その真実を聞いてみた。Red Bullは、なぜこの規模の世界大会を創りあげたのか!?DJ MAR SKI21

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