『SDM』 VOL.33
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バッハとB–BOY、時を越えた共演。バッハの楽曲にあわせてブレイクダンスを踊る! まさに常識を覆す発想が生んだ話題のステージがついに日本初上陸。この公演は、昨年行なわれたヨーロッパツアーにて5ヶ国12都市すべてにおいて高い評価を受けた話題作。そんな作品が観られるとあって会場には大勢の観客がつめかけていた。特に通常のダンス公演とはまた違ったクラシック音楽の客層が多かったことが印象的。公演初め、まず姿を現したピアニストが、美しいバッハの旋律を奏で始める。ここまでは、まるでピアノのコンサートに来たかのような風景。だが、女性ダンサー〝川口ゆい〟に続いて客席から現れたB-BOYたちが、ピアノの旋律に合わせて超絶ムーブを繰り広げると、空気は一転! その、なんともシュールかつ斬新な光景に観客はグッと引き込まれる。本公演の主役である、ドイツ・ベルリンのブレイクダンスチーム〝Flying Steps〟は、世界最高峰のB-BOYバトル『Battle of the Year』優勝など、世界チャンピオンの称号を4度手にしている実力派チーム! 各々が持つ高い身体能力で、次々繰り出される重力を感じさせないパフォーマンスに会場のボルテージは更に上昇した。途中、映像による演出などもあったが、舞台セットはなく、ピアノとチェンバロだけというシンプルさが、かえって上品かつスタイリッシュな空間を演出。なにより、クラシックの殿堂であるオーチャードホールで、B-BOYたちが踊るさまは、ストリートカルチャーを芸術作品に昇華させた1つのカタチを感じさせるものであった。世界の評論家たちが「まるで音符の1つ1つがステージで踊っているようだ」と表現した通り、B-BOYのもつ野性的な感性の力強さ、そしてバッハの繊細な旋律が融合した、観る者の感性をゆさぶる70分であった。ヘッドスピンを始め、世界的に活躍するB-BOYのダイナミックなパワームーブの数々が、クラシックの楽曲に融合していく! 独創的な音ハメに会場も興奮!ヨーロピアンテイストのシックな衣装で踊る様は、まさに鍵盤の上で音符が踊り出したかのよう。川口ゆいとFlying Stepsの表現方法の違いも見どころの1つであった。鳴りやまないオーディエンスの拍手に、3回もカーテンコールに応えるダンサーたち。カーテンコールでは、即興でそれぞれのソロダンスも披露!1993年の設立以来、ダンスシーンを広げる数多くの活動を展開してきたFlying Steps。ベルリンでダンスアカデミーを主宰するほか、数々の世界的バトルでも優勝に輝いてきた実力者集団だ。演奏されるのはバッハの「平均律クラヴィーア曲集」。この曲集の楽曲は、一定のリズムで流れていくものが多い。そこに、ストリートダンスとの融合性を見出した彼らのセンスは俊逸!今、ベルリンで最も注目されている日本人コンテンポラリーダンサー川口ゆいが、唯一の女性ダンサーとして公演に華を添える。そのスキルと表現力は圧倒的!◉Information |『Red Bull Flying Bach』日本公演HP →www.redbullflyingbach.jpStage Report!!Red Bull Flying Bach昨年にヨーロッパを席巻し、今年ついに世界19 都市のワールドツアーを実現! J.S.バッハの「名曲」とブレイクダンスが融合したステージ、『Red Bull Flying Bach』の日本公演が開催された。この対極のカルチャーの組み合わせが織りなす異色の公演をレポート!2012.11.08~09 @ Bunkamura オーチャードホール◉取材・文=青柳有厘 text by Yuri Aoyagi◉写真提供= Red Bull Content Pool24

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