『SDM』 VOL.46
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取材・文=長濱佳孝text by Yoshitaka Nagahama写真=村上剛志、金サジphotography by Takeshi Murakami、Saji Kim悲しい気持ちを伝えたい作品ではない。――この作品を創ることになったのは、どういった経緯があったのですか? 最初に披露したのは私のスタジオ※1の発表会です。生徒の1人が亡くなったことがきっかけで、その時の気持ちを表すために作りました。毎日熱心に通ってくれていた生徒だったんですけど、ある日を境に急に来なくなってしまったんです。誰も理由を知らなくて、何ヶ月かして「どうやら入院しているらしい」と聞いたけど、どこの病院かもわからず……。結局会えたのは亡くなってからお葬式に伺った時でした。長いこと通っていてくれた生徒だったので、ショックが大きかったです。――実際にお知り合いの方が亡くなられていたんですね……。では、その時の悲しみをこの作品に込められたんですね? もちろん悲しみは大きかったですが、この作品は〝悲しいという気持ち〞を伝えたいものではありません。具体的に説明すると、1曲目は死に侵食されるシーン、2曲目は冒頭こそ悲しんでいますが、そこから悲しみを受け入れて「残された私たちは強く生きなければいけない」というメッセージを込めています。――では、一時海外でも話題になりましたが※2、2曲目の最初の歩くシーンはどういった意図で作られたのですか? あれは葬列としての演出意図もありますが、構成と流れを考えて、〝間〞としての意味も持っています。後半の畳みかけるスピード感で見せるパートの前に、一旦落ち着く部分です。ただ、歩くだけですがちゃんと魅せないといけないので、沢山時間をかけて揃うように練習しましたよ。――確かに、〝ただ歩くだけで魅せる〞って、なかなか難しいことですね。 それと、1曲目に出ていたダンサーが2曲目の衣装に早替えする時間としても意図しています。時間が1分もないので、実はいつもハラハラしているんです。ただ、予め「もし着替えが間に合わなかったら隊列の順番を抜かす」という事も決めていて、さらにそのすぐ後の立ち位置も順番が変わっても問題ないように考えてあります。この作品がつなげた、様々な出会い。――振付けとしてスカートのたなびく様子まで揃えられていますが、あれはどうやって考えたのですか? 足を上げるタイミングが少しずれただけでスカートのなびき方が全然違って見えるので、そのタイミングや上げる高さを徹底して揃えるようにしました。それと衣装の帽子もかなり大きいので、視界がさえぎられて踊りづらかったり、衣装を考慮してフリを変えたり、早い段階から衣装になれるようにリハを進めていましたね。――ここまで長く踊っている作品ですと、最初に創った頃からの意識の変化はありますか? 最初は生徒が亡くなった事がきっかけで創った作品ですが、2011年の『Legend Tokyo Chapter.1』に挑戦する時に東日本大震災が起こって、「悲しみを受け入れて、残された私たちは強く生きる」という想いをより強く伝えたいと思うようになりました。あまり軽い気持ちで踊れる作品ではありませんが、伝えたい想いが強いからこそ、私の作品の中でも一番長く踊って(披露して)いる作品になったんだと思います。――長く踊っている作品であると同時に、KAORIさんを代表する作品にもなりましたね! 今のMMも、この作品でレジェンドに挑戦したのがきっかけで出会えたメンバーも多いし、この作品とレジェンドはMMと切っても切れない関係ですね! それに、2013年の「Legend NEXT」でこの作品を出した事が、私が以後関東で活動する上でも非常に大きいきっかけになりました。この「Requiem」は色んな出会いを私にもたらしてくれましたし、この先もずっと踊っていくような気がしますね!※1……KAORIaliveが経営する京都のダンススタジオ、STUDIO DANCE ALIVE※2……2012年のLAで開催された大人数コンテスト『VIBE』において3位受賞を果たした際、2曲目冒頭の歩くシーンが「あれは意味はあるのか?」、「あれこそ日本のわびさびだ」等と話題になり、YouTubeのコメント欄でも論争が起こった。悲しみを受け入れて、私たちは強く生きる。『Legend Tokyo Chapter.4』でみごとレジェンドに輝いたMemorable Moment(以下略:MM)の連載企画。今年の6月には、昨年大きな好評を博した単独公演『GIFT』が東京にて再演される! 今回はその公演内の演目である2つの作品について、込められた想いを今、リーダーであるKAORIaliveがつづる!KAORIaliveをチームリーダーとする表現系ジャズダンスチーム。独自の世界観と創造性にあふれた作品を追求し、国内外の名だたるコンテストで輝かしい経歴を誇る。その他、単独公演の開催やファッションショー出演など、その活動は多岐にわたる。Road to 『GIFT』 #012010年 STUDIO DANCE ALIVE発表会にて初披露2010年 ナンバー作品コンテスト『DANCERS FESTIVAL』出場作品/優勝2011年 『Legend Tokyo Chapter.1』出展/審査員賞ダブル受賞2012年 LA大人数コンテスト『VIBE Dance Competition』出場/3位受賞2012年 「DANCE@HERO 4TH Season」出場/優勝2013年 旗揚げ単独公演『GIFT』内演目2014年 大阪再演『GIFT』内演目34

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