『SDM』 VOL.49
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―5月に開催した『FINAL LEGENDⅢ』(※P42〜49参照)をご覧頂いたそうですが、ご感想はいかがでしたか!? 「こういう世界があったのか!?」という驚きが大きくて、もう唖然として観ていました(笑)。僕なんかは〝ストリートダンス〞と言えば街中でぐるぐる回っているブレイクダンスのイメージが強くて、マイケル・ジャクソンのようなダンスがストリートダンスだと思っていませんでしたから。 ひと言にストリートダンスと言っても、EXILEさんやAKBさんみたいなものから、ジャズダンスやバレエ的な要素まで、様々な要素が集約されている幅のあるダンスだなと思いました!―では今回、審査員として参加していただく、コンテストの〝レジェンド〞に関してはいかがお考えですか? 大会コンセプトを説明頂いて、すごく壮大で難しいことに挑戦されていると感じました。僕も演劇界の人間なんで、ダンスや演劇という「それで食っていく」ために外に広げる努力や苦しみは痛いほどわかります。 演劇と同じく、ダンスでも同じような悩みや持っているんだなと思いましたし、そのための審査が「いろんな業界の方々が良いと思えるものを選考する」という方法、大衆文化としては非常に正しいやり方だなと思いましたね。―やはり「広げる、より多くの人に観てもらう」ということはどの分野でも大事ですよね! 1000人や2000人のお客さんだけを集めてやっていこうとすると、自分たちの中で小さくまとまってしまうんですよね。他者の厳しい目にさらされることを避けて、固定の1000人の客だけを維持しようと考える人たちもいます。だが、僕はそういう考え方に反対です! より多くの人たちの目にさらされて、多くの共感を得ていかないことには〝表現〞にはならない。そうでなければそれは表現ではなく、自己満足だけになってしまうんです。 逆に言えば、人目にさらされる機会をより作る、そうい人目にさらされるのが嫌なら、表現ではなく自己満足だ。う状況に自分を持っていくことが表現者にとってすごく大切なことだと思います。―確かに、ずっと同じ人に同じ規模に見せているだけでは、表現者として成長できないですよね。 それと人目にさらされることによって自分が何者か解るんです。実力がわかってきますよね。 ただ、より多くの人に見てもらう、つまり〝大衆化〞していくことで自分は満足するのか。それともある程度の自分の表現を守りながら、より多くの人に見てもらう努力をするのか? それは長い文化の歴史の中で、表現者がもつ永遠のジレンマではないでしょうか。―確かに〝ウケねらい〞をしても、一発屋みたいになってしまいますよね……。 僕の考えとしては、自分なりの表現をして10人中2人でも「すごく良かった!」って思ってくれればいいんですよ。それでも、より広げる努力をして10万人に見せたら2万人がいいと思ってくれる。それはもう成功と言っていいですよね? だから、自分が表現というものを続けていきたいのであれば、評価してもらう作品を創り続け、創ったものを観てもらう努力をし続けなくてはいけません。―では、今大会ではどのような作品を期待されますか? やはり、人に観て頂くということをしっかりと追求している作品ですよね。特にこれはコレオグラファーだけの問題ではなく、コレオグラファーが考える〝魅せる意識〞が出演ダンサー全員にいきわたっている作品と、そうでない作品では絶対に差があります。 コレオグラファーは、「これをやりたい!」というエネルギーの高さがあり、それを「どのように見せるか?」を考え、そしてそれを「人に見られるもの」にしっかり進化させていること。そして出演ダンサーは、それを「どれだけ共有できているか?」が大切! それがこの大会が目指す未来を作るために必須なことだと思います!人類の文化の歴史の中、表現者がもつ永遠のジレンマ舞台「No.9 ―不滅の旋律―」演出白井晃演出、稲垣吾郎主演という豪華タッグによる舞台話題作が2015年10月10日(土)より赤坂ACTシアターにて開演する!NOPHOTO2014年4月、KAAT神奈川芸術劇場のアーティスティック・スーパーバイザーに就任。さまざまな公演プロデュースを手がける!演劇、ダンス、音楽を同じ身体表現と捉えた先鋭的な舞台を手掛ける。ダンサーの森山開次も出演・振付に参加した。1876年に初演されたノルウェーの国民的作家イプセン劇詩の傑作「ペール・ギュント」演出を2015年に手がけた!舞台表現者としての視点〝レジェンド〟では深いつながりをもつKAAT神奈川芸術劇場。そのアーティスティック・スーパーバイザーを務めるのが、俳優・演出家として名高い白井晃氏だ。テレビドラマや映画などで活躍する有名俳優として知られ、自身もカンパニーを主宰して数々の舞台作品を演出。〝演じること、演出すること〟に通じた白井氏が捉える、ストリートダンスの舞台表現者とは!?演出家・俳優KAAT神奈川芸術劇場アーティスティック・スーパーバイザー白井 晃KAAT神奈川芸術劇場アーティスティック・スーパーバイザー「Lost Memory Theatre」構成・演出「ペール・ギュント」構成・演出美意識の高い緻密な演出で定評がある演出家、俳優。劇団「遊◉機械/全自動シアター」主宰(1983~2002)を皮切りに演出家としてストレートプレイからオペラまで幅広く手掛ける。俳優としても舞台、映像で活躍。読売演劇大賞優秀演出家賞、湯浅芳子賞(脚本部門)、佐川吉男音楽賞等の受賞歴を誇り、2014年KAAT神奈川芸術劇場アーティスティック・スーパーバイザーに就任!Job FilePROFILE演出家として俳優として、幅広い活躍をみせる舞台表現者!「人に見られる作品」であることに対する追求。その出演ダンサー理解。08NOIMAGE作品を多くの人目にさらす努力をし続ける!それが〝表現者〟であり続けるために必要なこと。Photo by 二石友希決する   の視点。1228

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