『SDM』 VOL.53
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――伊右衛門さんは従来の〝歌舞伎〞のイメージとは違った、かなりアグレッシブな活動をされているんですね!伊右衛門‥歌舞伎というのは本来、〝傾く(かぶく)〞というように、常識から外れたり奇抜な行ないをしたりする、もっと自由で面白いものなんですよ。江戸時代には多くの一座が存在したわけであって、おそらく多くの方は現在残っている、歌舞伎座で松竹が行なっているお堅い〝歌舞伎〞というイメージが強いのではないかと思います。――そうだったんですね、勉強になります!伊右衛門‥現代のいわゆる〝歌舞伎〞というのは、守っていかなければいけない伝統があります。それを守ることはもちろん大事ですが、新しいものを創っていくことも大事だと思っています。そう考えると、当時の世の中の争いや色恋や想い、さまざまな出来事を踊りや芝居で見せたのが歌舞伎の大元なわけで、これを現代に置き換えたらavecooさんのようなコレオグラファーの方々こそが、僕からしたら〝傾き者〞だと思いますね!――avecooさんとは、もともとお知り合いだったんですか?avecoo‥去年、中国人のお客さま向けにやった、和太鼓、三味線、歌舞伎、ダンスなどを取り入れたショーをやった時、伊右衛門さんも出演されていて、その時に初めてお会いしました。私も日本人だけど歌舞伎をやっている方を近くで見るのは初めてで、歌舞伎の色んな要素を取り入れてみたいってこの時に思ったんですよ。伊右衛門‥僕もミュージカルはよく観る方なんですけど、avecooさんのショーを拝見した時は感動しましたよ。和モノでこんな世界観が創れるなんて天才だなって思いました!――確かaveooさんの公演「残月の涙」も〝ストリート歌舞伎〞って銘打っていましたよね!avecoo‥そうです、仲良くなったのでぜひ伊右衛門さんにも観ていただきたいと思って、公演にご招待したんですよ。伊右衛門さん、実際どうでした?伊右衛門‥「こういう表現があったのか!」って驚きましたよ! 着物を着ながらダンスでここまでできる、衣装のカットの仕方とかも斬新で工夫されていましたね!avecoo‥あれ最初に作った時大変だったんですよ! 見栄えがちゃんとして、かつ踊りやすいように何回も作り直して……。伊右衛門‥跳んだり跳ねたりしますもんね。――そういった細かいところも気付かれていたんですね。伊右衛門‥もう気付きまくりですね(笑)。avecoo‥私は緊張してましたよ! 〝和〞に詳しい、歌舞伎をやってらっしゃる方に観られるなんて……。だって和モノのパフォーマンスってたくさんあるじゃないですか? 「何だよコレ」って思う時ありません?伊右衛門‥正直ありますね(笑)。ダンサーでもミュージシャンでも〝カブキ○○〞みたいにやっている人って結構いますけど、「この人たち本当に分かっているのかな?」って思う時ありますよ。avecoo‥ですよね!? だからもう私もすっごく不安だったんですよ!伊右衛門‥ある意味、僕も不安な気持ちもあるんですよ。梨園の家に生まれなかっただけで、歌舞伎といったら「松竹がやっているものこそが本物!」なんて言われたくないですし、新しいことに挑戦して表現していくことこそが歌舞伎だと思っています。だからこそavecooさんに共感したというか、本当に傾いて(かぶいて)いて、尊敬の念を覚えましたよ!本来の歌舞伎の意味とは?何だよコレ、って思う時はある。 本物の歌舞伎役者と融合して、 新しく生まれ変わる〝阿部魁〞をどうぞご覧あれ!〝日本の極彩美〟という公演コンセプトにふさわしく、なんと歌舞伎役者がゲスト・パフォーマーとして出演! 積極的に歌舞伎の素晴らしさを世にアピールしている「雅屋」伊右衛門が、コラボ作品の1つである「阿部魁」の振付師avecooとの対談で語る、〝カブキ〟とは?コレオグラファー公演 ゲスト・パフォーマー「」Prole『Legend Tokyo Chapter.4』準優秀作品賞〝セミ・レジェンド〟獲得。性別を超越した感性を持つ鬼才オカマ・コレオグラファーとして、観る者を熱狂させる圧倒的な世界観と創造力を併せ持つ! 企業イベントへの招聘や2015年には初の単独公演となる『残月の涙』を開催するなど、コレオグラファーとして幅広く活躍している。avecoo18

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