『SDM』 VOL.64
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完璧に組み立てたり、すべて説明したりするのではなく、観た人が自身の経験を通して想像できる、余白を残すようにしています。例えば本公演でいうと〝桜の森〞とは一体何だったのか……などですね。――では最後に、今後の展望をお聞かせください! 本作もまだ完成ではないので、観る側との駆け引きをより計算して近いうちに再演するつもりですが、アナログな手法で美しく魅せる演出や社会問題を織り交ぜた作品づくりには引き続き挑戦していき、カンパニーを代表する作品フォーマットとして確立できたら嬉しいですね!――公演を終えた感想をお願いします 4作目の長編となりましたが、時代性を映して問題提起するのも芸術の役割かなと考え、今回は文学作品をもとに、さらに社会問題を反映させるなど外的要素を出発点としてみました。難しい題材でしたが、作り方も新しい手法に挑戦してみたので、新鮮で楽しかったです。――その新しい作り方とはなんでしょうか? いつもシーン毎に分けて進めるのを、今回は頭から順番に作りました。非効率なのですが、私も感情の波をうまく作れて、演じる方も物語の流れを掴みやすく役作りの面では都合がいいんです。実は一人が何役も演じていて、主要なポジションもリハーサルを進めながら決めたんですよ!――展開も複雑で想像力が掻き立てられました。 綺麗な物語というよりは事象を並べる感覚で作りましたね。Dance Company MKMDC 第13回発表イベント『ORICHIKA 13』出演者募集中!2018年7月21日(土)-22日(日)会場:和光市民文化センターサンアゼリア 大ホール詳細・ワークショップ情報はこちら公式ブログ ▶ http://s.ameblo.jp/mkmdcDance Company MKMDC 公式HP/http://www.mkmdc.net/Dance Company MKMDC 主宰松尾耕この舞台に込めた想いとは!?総振付数3500超えを誇る振付家集団、Dance Company MKMDCの代表。自身でも商業舞台、演劇を含め、これまで1500曲を超える数の振付・演出を行なう。また一方でカンパニー活動として長編作品を発表するなど、創作活動にも注力している。桜の花びらを投げつけられながら、乱れ入るように舞うシーンは本作の中でも特にインパクトの強い見どころのひとつだ。冒頭、何度も繰り返されたのは、〝桜の女〟が男に7人の女房を殺させる場面。理不尽な暴力を連想させ、観る者に衝撃を与えた。日々大量に飛び込んでくる、天災、人災など悲劇的なニュースの数々……。画面のこちら側で我々は何を思うのか。近づく最期。桜が乱れ散り、異様な空気が張りつめる中、物語は美しくも恐ろしいクライマックスを迎える。終盤、女性キャストたちが上着を脱ぐシーン。赤く染まる背中からは、もはや恐ろしささえ感じられる。脚に傷を付けられた女は、感受性の箍(たが)が外れた存在である〝桜の女〟へと役柄が変化していく……。断片的に原作の文章が演者によって語られる。芝居的なセリフとは異なるものの、自然と観客を活字の向こうの世界へと誘っていく。桜の花びらが散るように静かに降りかかってくるどうしようもない現実の数々。着物を捨て去り、手を伸ばした先に求めたものとは――。さがてい29

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