Legend UNIVERSE 2019 審査員インタビュー ~舞台公演プロデューサーの視点~

インタビュー
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近年ではストリート系のダンスの舞台も増えてきたものの、一般的なショービジネスの世界で〝ダンスの舞台公演〟と言えばやはりバレエやコンテンポラリーが多い。そんなショービジネスの世界で名だたるダンスの公演を第一線で数多く手がけてきた敏腕プロデューサーが村田裕子氏だ。彼女が考えるショービジネスにおける〝振付家〟とは?

日本のダンス公演の最先端を 手がけ続けてきた敏腕プロデューサー!

阪急阪神東宝グループ 株式会社梅田芸術劇場
取締役 東京事業部長
村田 裕子

Profile:1990年代より株式会社梅田芸術劇場の公演プロデューサーとして活躍。プロデュース公演からはTAKAHIRO、熊川哲也、上島雪夫、金森穣など業界第一線で活躍している振付家を数多く輩出している。また、単なるダンス公演だけではなく、他ジャンルのダンスをクロスオーバーさせた企画公演も数多く成功させている。

ただ〝素晴らしい振付を作る〟のは当たり前。
今は、演出家をも兼ねる振付家が必要とされている。

ダンスの広がりと共に、 振付師の役割も広がっている。

――村田さんはプロデューサーとして、ダンスの舞台公演も数多く手がけられているとお聞きしましたが?

はい、プロデュース事業をしながら梅田芸術劇場の東京事業部の責任者として全ての公演を管理しています。それと7年前ぐらいから国際プロジェクトをスタートし、海外との仕事に力を入れています。ダンスに関しては作品を作るのにステージングは必須ですので、私の中では日常的に触れている分野ですね。仕事以外でも、ジャンルに関係なく機会があればさまざまなものを観るようにしていますよ。

――8年前にもインタビューをさせていただきましたが、その時から〝舞台におけるダンス〟において何か変化は感じられますか?

ダンスの与える影響が広がっている点と、特に海外では振付家から演出家となって成功する方が多くなっていると実感しています。バレエやコンテンポラリーにおいては演出家と振付家が同じなことは基本でしたが、ミュージカルは割と演出家と振付家ってはっきり分かれていることが日本の場合は今までは多かったんですよ。

――そうなんですね。 「振付家が演出家を担うようになる」ように変わってきたその理由はどのようにお考えですか?

振付家が「ただ与えられた楽曲に合わせて振付する」のではなく、演出家の意図を汲んで振付することが増えていったからではないかと思います。振付家の方も「自分だったらこんな風に演出する」って思いながら振付をされていて、チャンスが来たら引き出しからすぐ出せるような姿勢が時代を変えていったのではないでしょうか。

――ある意味では、現代の振付家には演出的視点も必要とされているということでしょうか?

それがないともう成立しないような時代になったと思います。8年前にインタビューしていただいた時に「5分作品もいいけど、90分の作品を創れる振付家が出てきて欲しい」とお話したと思うのですが、それって結局〝演出ができる〟ということなんですね。やはり、ただのダンスの振付だけだと公演としてはどうしても弱くなってしまいますから。

出演ダンサーも、しっかりと 自分の作品を作っていくべき。

――つまり、振付家から演出家に転身する人が増えている、という状況なのでしょうか?

いえ、ブロードウェイもウェストエンドも振付家が演出家をやることが多くなってきていますが、「1度演出をやったのでもう振付はやりません」ということはなく、いい企画があればまた振付もやったり、演出と振付を行き来している感じですね。ですからそういう人が振付をやると作品に厚みが出てきます。

――「作品に厚みが出る」とは具体的にどのようなことでしょうか?

まずは見どころが増えますね。演出的視点を持っている人とそうでない人の振付はやはりだいぶ違います。お客さんの見る目も肥えてきて、振付だけ出来る人というのは、今の時代、なかなか必要とされなくなってきている……という印象です。

――ではダンスを観られる際にもそういった点を重視されますか?

将来演出家としても活躍できるかどうか?という点で見ることが多いです。どうしてもこの業界は日本は海外に比べて20年は遅れているので、今すぐでなくてもそういう可能性のある人に出会いたいと思っています。

――その他に、日本のダンス業界やダンサーに対して思われることはありますか?

どんどん若い方に『Legend UNIVERSE』のような大会に挑戦して欲しいですね! 「○○先生の振付で踊っていればいい」という考えや、ダンサーのまま一生を終わろうなんて考えが古い! 「ダンサーがダメ、振付家になるべき」という話ではなく、ダンサーでありつつも、しっかりと自分の振付や作品も作って欲しい。若い人ってどっちも行き来しやすいじゃないですか? ですから個人的には作品の中で三番手くらいで踊っているダンサーの方の気持ちを聞いてみたいですね!
若い時ってダンサーとしての需要もあって求められる機会も多くなっていると思いますが、頭も身体も衰えてくる前にどんどんアウトプットして欲しい。そういうダンサーの方がこの先の未来は年を重ねていっても輝いていけると思いますよ!

この業界からのアドバイス!

若いうちからダンサーも振付や作品制作を積極的に行なうべき。そしてこれからは振付家だけでなく、演出家としての視点も重要!

Job File


『ラプソディ・イン・ブルー』
ラスタ・トーマス、辻本知彦などの海外で活躍する著名ダンサーを迎え、オーケストラとダンスを融合させた舞台公演を大型劇場でプロデュース。D’OAM、XYONといったストリートダンサーも参加していた。

 

『盤上の敵』
北村薫による同名小説を、上島雪夫、服部有吉を振付家にむかえてダンス公演化。西島千博、遠藤康行、森山開次などバレエ、コンテンポラリー界の超豪華メンツが国内外から集結していた。

 


『藪の中』
芥川龍之介による有名小説をベースに服部有吉が演出・振付した舞台。出演するダンサーはハンブルグ・バレエ団から、1人の人物を3人が踊ることで人の心理を何層にも複雑化して魅せた。

 


『Electric City』
バレエ、コンテンポラリーの舞台を数多くプロデュースするだけではなく、TAKAHIROによる舞台公演をはじめ、ジャンルの垣根なくストリートダンス系の舞台公演も精力的に手がけてきた。

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