江守藹×YOSHIE 対談 ~日本のダンスカルチャーはなぜ、日常の習慣として根付かないのか―――。~

カルチャー
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※この記事は「SDM vol.10」に掲載された記事になります。

ストリートダンス・カルチャーを日本で最も古くから見てきた男、江守藹。米国ブラックカルチャーのリーダーたちがリスペクトするほどの知識人であり、BE BOP CREWの創始者、YOSHIBOWも師と仰ぐほどの大御所である。その彼が次世代を担う若者たちのため、このカルチャーの活きた歴史を伝える!

江守藹

PROFILE
1973年に日本最初のプロダンスチーム、ネッシー・ギャングを結成、プロとしてのキャリアをスタート。かつての『SOUL TRAIN JAPAN』の総合プロデューサーでもある。 現在は、ソウルフルな画風のイラストレーターとして、数多くのレコードやCDカバーを制作。また、DJ、音楽&店舗プロデューサーとしてもマルチに活躍している。

YOSHIE

PROFILE
日本のストリートダンス界を代表するダンサーであり、MISIA、May.Jをはじめとする有名アーティストのバックダンサーや振付けを担当している。また、BE BOP CREWのメンバーとしても活躍する傍ら、海外でワークショップ、ショーゲストを行うなど、世界的な活躍を展開している。

Message to Readers

世界的に見てそのレベルは相当高い日本のストリートダンス。そこで日々繰り広げられているダンス・イベントの数々。
ダンスを競い合い、それを観戦して楽しむ。
ダンサーの多くは訓練のようにしてダンス・スキル向上に励んでいるのかもしれません。それは素晴しいことです。
しかし、それほどダンスに夢中なのに、どうしてストリートダンスの本場アメリカのように、日常の習慣としてダンスが根付いていないのか。

そこで、今回は現代のストリートダンスシーンを肌で感じているYOSHIEを迎え一緒に考えてみました。

日常のなかにある生活の一部、それがダンス!

——今、日本は一般的にもストリートダンスが認知されて身近になってきていますが、日本とアメリカのダンスカルチャーの違いってどんなところにあると思いますか?

江守:先日、バラク・オバマが黒人としてはじめてアメリカ大統領になった就任式をテレビで見ていたんだけど、そこでオバマ夫妻が2人で踊るシーンがあったんです。世界中の人が見ているなかで、抱き合ってチークを踊りながらキスをしたり。ああゆうのって日本じゃ考えられないじゃない? それを見て、日本とアメリカのダンス文化の大きな違いをあらためて感じさせられましたね。
今や日本全国、数多くのダンススタジオや大学のダンスサークルとかがあって、身近なところに“ダンス”がある環境だけど、実際はそんなにダンスが日常に根付いていないと思うんだよね。
例えば、アメリカだと中学や高校の卒業式の時にダンスパーティが学校で開かれるじゃない? そこで、男の子はどうやって女の子を誘おうか、みたいな。
ダンサーってカテゴリーの中だけじゃなく、一般の人たちの日常にダンスが当たり前のようにあるんだよね。日本では日常のなかで楽しんで踊る、「ダンスは生活の一部」みたいな、そうゆう感覚がないんだよね。

YOSHIE:日本人は根本的に、“1を10にする力”はすごく優れていると思うんです。だから、パフォーマンスとして日本のダンスはどんどん進化していって素晴らしい。
けど、ダンスって本来は、江守さんがおっしゃったように生活のなかで楽しむもの。だから、“コンテストのために優勝狙います!”とか、“お稽古事に行きます!”みたいな感じで踊るっていうのはどうなんだろうって、少し疑問に思ったりもしますね。

ダンスで口説け! 今夜はあの子を落とすんだ!

——チークダンスやダンスパーティって、日本のカルチャーにはもちろんですが、ダンスシーンにも馴染みがないですね。

江守:僕の若い頃は、“女性をダンスに誘う”という習慣があったけど、今のクラブでは男女が向かい合って一緒に踊ったりはするの?

YOSHIE:なかなか無いですね。8割がた黙々と踊ってるみたいな(笑)。

江守:僕ら世代は、みんなでディスコに行くでしょ。座って飲んでると、「何で踊らないの?」、「だって一緒に踊る相手いないじゃん」。っていう会話がよくあった。何で好き好んで男同士で踊らなきゃいけないんだよ!って(笑)。

YOSHIE:私もよくYOSHIBOWさんに「男女で踊れ!」って言われてました(笑)。そして、「セクシーに! 色気を出せ」って。私がダンスを始めたぐらいの頃はYOSHIBOWさんとクラブで一緒に踊って、そういう感覚を教えてもらっていましたよ。

江守:男女が一緒に踊っていくうちにだんだん距離が近まっていく。簡単に言うと、ダンスで口説く。“今夜はこの子を落とすぞ!”って。

YOSHIE:素敵! そういう事って最近ないし、憧れますね。

——なぜ、そうゆう男女で踊るっていう習慣がなくなってしまったんでしょうか?

江守:音楽の変化もあるよね。ヒップホップが誕生して、それまでディスコで流行っていた、いわゆるパーティーダンスから、パフォーマンスとしてのダンスに定着した。そうゆう時代背景もあるよね。
でも、アメリカは日本のパーティーダンスのように無くなってはいかない。遊びのダンスとパフォーマンスとしてのダンス、ちゃんと両方のダンスがあるんだよ。そこが、日本との大きな違いじゃないかな。

——ダンスが日常の生活に根付かない理由として、日本人とアメリカ人と決定的な違いってどんなところなんでしょうか?

江守:歴史的なものもあるんだけど、日本人特有の美学ってあるじゃない。恥じらいだったり、謙虚さだったり。武士道の世界とかね。

YOSIE:わかる!! 海外に行くと、日本人は普段おとなしいのにステージに立って踊りだすと豹変するってよく言われるんですよ。

江守:うん、いざパフォーマーとして魅せるとなるとすごい力が出るんだけど、一歩ステージから降りると、日本人特有の控え目感があるよね(笑)。

YOSHIE:私もそうゆうところあります(笑)。時によっては、とっぱらわないといけない瞬間もあるんですが、そうゆう日本人の美学っていうか、奥ゆかしさも好きですけどね。

江守:うん、それは日本の素晴らしい文化の1つだし、日本人として大切なこと。けれど、ダンスを踊るときにもしかしたら、そうゆう美学とされていることが邪魔をしているのかもしれないね。

ストリートダンサーとして踊る以上、ブラックカルチャーを意識して欲しい。

——お二人はいつごろからダンスと関わりの深いブラックカルチャーを意識し始めたのでしょうか? そして、今後のダンスシーンを背負っていくだろう若い世代のダンサーたちにメッセージをお願いします。

江守:僕は元々、ブラックミュージックが大好きで、それから踊りを始めた。そして、踊っていくうちに、ある日突然、自分が大好きなブラックミュージックの歴史を意識し、勉強するようになったんだよね。

YOSHIE:私の場合は、当たり前のようにYOSHIBOWさんをはじめとした博多の先輩たちがいたので、日常のなかで音楽の話や歴史とか、色々なことを教えていただけたことが大きかったですね。ブラックカルチャーを意識するっていうよりは、そこが始まりでした。
けれど、自分が人にダンスを教える立場になると、ダンスとブラックカルチャーとの関わりを知るってことは重要だなって、改めて思いましたね。“教える”って人に伝えるってこと。色んなことを聞かれたときに、“これはこうだよ”って話せるのが人に教えるってことなんじゃないかなって。まだ全然足りないんですけど。

江守:今の世代の子たちがそうゆうことを学べる環境って、現在のダンスシーンにはあるのかな? 無いのだとしたら、僕たちはダンサーとして、先輩の立場として、そうゆう環境を作っていくことも考えていかなきゃなって思うね。

YOSHIE:私も先輩たちに教わったようことを、身近なところから伝えていけたらなって思いますね。若い子たちに思うことは、先輩たちの話に耳を傾けてみてほしいなって。長くダンスシーンに関わった人じゃなくてもいい、自分より長く生きてる人の話を聞いてみるっていうことをもっとしてみてほしい。そうゆう知識や知恵っていうのは、ためになることもあるし、感動することもありますからね。

江守:うん、キッカケはなんでもいい。ただ、ストリートダンサーとなって踊る以上は、ブラックカルチャーと関わりが深いんだっていう意識、そして、「知ろう、学ぼう!」っていう興味を常に持ってくれたら嬉しいですね。


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