ダンサーとしてのルーツを学生時代に持ち、関東大学学生ダンス連盟Σ公演の振付け経験を持っている長谷川達也と伊藤今人が、今、〝学生ダンサー〟を熱く語る!
2代目〝レジェンド〟でもあり、現在も学生ダンスシーン、Σとは深いつながりを持つ今人。演出家、振付師として活躍する彼が見る学生ダンスシーンとは?
Interview.02 伊藤今人 (梅棒)
男性のみのジャズダンスチーム梅棒のリーダー。「踊りは気持ちだ!」の信念のもと、独自のパフォーマンススタイルでエンターテインメント性あふれる作品が持ち味。近年では様々な試みを取り入れた単独公演を積極的に行ない、演出家としても幅広く活躍している。
コンテストでも就活でも、〝自己分析〟が勝利のカギ!
機会は増え、モチベーションは低くなった?
——梅棒は学生時の同じサークルのメンバーで結成したんですよね?
1年の時にΣのイベントに出るために結成したのがきっかけです。当時、すごくダンスが上手いのに自己満足的なショーを見せるチームが多い印象があって。僕らは下手くそだけど、お客さんを楽しませたいって気持ちで作品と向き合えば絶対に楽しんでもらえる、だから踊りは気持ちだ、そういうコンセプトは結成時からぶれてないです!
——Σのイベントで人気が出て、公演でも10年ほど前から振付けされているんですよね?
ちょうどこの10年で6回ほど振付けをしています。Σの公演は、各大学シーンで活躍したダンサーたちが創る、最高のショーケースが見られる場だと思いますし、限られた制作期間で燃え尽きようとする、青春と情熱のパッションが感じられるのがいいと思いますね!
——では、この10年間で学生コレオグラファーに何か変化を感じていますか?
昔はΣのように学生が振付けナンバーを出す機会って、あんまりなかったんですよ。でも最近は〝ナンバーイベント〟も増えてきて、学生でも結構気軽にナンバーを出せてしまう。だから1つ1つのステージにかける意識やモチベーションも昔に比べて高くないのかな、という印象はあります。
——確かに、ここ数年でナンバーイベントはものすごく増えましたよね……。
ただ、今年のΣの公演の出演者が去年に比べて結構減ったと聞いて、逆に期待している部分もあるんです。「本当にこの公演に出たい」と思っている人が出ているんじゃないかなと思うんですよね!
今より10年以上も前の2006年、梅棒の初となる大人数作品はΣの第15回公演でスペシャルナンバーとして披露された。
学校で学んだ何かを使ってダンスを活かせ!
——では〝レジェンド〟を制した梅棒として「コンテストに挑戦する意義」はどうお考えですか?
今ではナンバーイベントも増えて作品を発表する機会も増えてきましたが、自分が成長するためにはコンテストに挑戦することは非常に意味がある、勝っても負けてもリターンしかないと思っています。
——「勝っても負けても」ですか?
「他人の評価を獲得しにいく」というコンテストでは、まず自分は何が得意で何が出来るのか、〝自分を知る〟ことが絶対に必要で、自分の能力を全て分析した上で作品に向き合って挑む、その過程で自分の中の色んな部分を見つめ直すことになります。就活における〝自己分析〟のようなもので、自分はどんな奴で、相手は何を評価するのかを真剣に考えた人じゃないと採用も通用もされないですよね。ただイベントに出て、観に来た友達から「良かったよ」って表面的な感想しかもらえない現場しか経験していなかったら、成長の幅は少ない。でもコンテストであれば、ハッキリと結果は出るし、どういう作品が評価されたのか分析もできるんです!
——なるほど! では最後に、進路に悩む学生ダンサーにアドバイスをお願いします!
どういうダンサーになりたいのかというビジョンを描けていないのであれば、無理にプロを目指す必要はないと思います。不安定で先が見えない職業だし、ダンサーとして生きていけるのって本当に一握り、安易に勧められないですね。せっかく大学まで行って学びながらダンスをしているのであれば、大学で学んだ何かを使ってダンスを活かしていくということが、「キミにしかできないことじゃない?」って思いますよ!
Σの公演ではこの10年の間に計7回、主にオープニングナンバーを振付。学生ダンサーたちと今も交流が続いている。
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