コロナ禍を経て約4年ぶりの開催となった『Legend Tokyo Chapter.11』。その特徴の1つである審査方法〝誰もが観て楽しめる作品かどうか〟を見極めるため、各業界の有識者たちが多様な視点を持って審査に臨む。また、振付師への仕事のオファーが直結する各企業選定賞を担当する各VIPたちも加わった各審査結果、その結果に至る各審査員・特別賞選定員の貴重なことばをここに伝えよう!
【審査員はどうみた!?】『Legend Tokyo Chapter.11』審査員総評公開!(1/4)
全体審査&個別部門賞担当審査員
エンタメ作品としての視点 エンタメ賞
選定審査員:染谷誓一

「ぴあアリーナMM」をはじめとする
ぴあコンテンツ制作の総指揮者!
共同企画開催 ぴあ株式会社 執行役員
株式会社東京音協 代表取締役社長
染谷 誓一
まさに実力が拮抗する激戦!
審査員の票がこれだけ割れる
━━今大会全体のご感想はいかがでしたか?
今回は本当に実力が拮抗していて、結果を見ても分かる通り、審査員それぞれの評価が本当にバラバラに分かれました。それだけ作品のクオリティに差がない大会だったと思います。
圧倒的なナンバーワンがいない分、どの作品もクオリティは高かったので、観ている方にとっては面白かったのではないでしょうか。
━━特に印象的な作品はありましたか?
僕は、 煌めき☆glitter作品をレジェンド候補に選びました。彼女たちは若いときからレジェンドを目指して挑戦していましたが、今回は今までの作風と要素を変えて、単純にヒップホップを激しく踊るだけでなく、展開も工夫されていて、よく考えてきたことが伝わり、僕的にはナンバーワンでした。そして、 ZoooM作品は、まさに新時代の若手が出てきたな! ということを切に感じた作品でしたね。
━━今大会に関して、他に印象に残ったことはありますか?
若手の台頭を感じたと同時に、ベテラン陣が良くも悪くも安定感がありましたね。ベテランは自分の信念もあるだろうし、なかなか新しい作風というところは意識しないのかもしれませんが、レジェンドを目指すとしたら、あっと驚かせるみたいなところに挑戦しないとなかなか難しいと思います。
ベテランであるがゆえに、それだけイメージがついているから、それを覆すような演出力や構成力、ダンスの見せ方に今後期待したいですね。
たぬき作品「それでは試験を開始してください。」

受賞の決め手は!?
エンタメ目線としては、まさにNo.1に間違いない作品! エンタメ力のみならずダンスも優れていた。
アート作品としての視点 アート賞
選定審査員:榎本 了壱

現代アート界の在り方を見極める
プロフェッサー!
株式会社アタマトテ・インターナショナル 代表 日本ダンスフォーラム ボードメンバー 大正大学表現学部 学部長/教授
榎本 了壱
ここからどんな物語が始まるのか!?
創り手たちの秘めたる可能性に期待!
━━7年ぶりの審査はいかがでしたか!?
大相撲の世界のように、大関から前頭筆頭ぐらいまでの上位で実力が伯仲していて、レース展開としてはスリリング! ものスゴく面白かったですが、その分 、審査はとても難しかったです。KEMURI作品、AIKO FUJIWARA作品、SAYA作品など、面白いコレオグラファーがたくさんいて、これからの可能性を大いに感じましたね!
━━部門賞の決め手はどのポイントでしたか?
クリエーションを行なう上で重要なのは〝 何がしたいのか〟目標がハッキリしていること。その点でオーシャン作品は何をしたいのか最も明確で、それだけで賞を贈る価値がありました。そして、それを多様な要素を組みあわせて、非常に上手く表現できていたと思います。ビジョンがぼやけていたらクリエーションとしてアウトなので、それは皆さん心に留めておいて欲しいですね。
━━コレオグラファーに今後期待されることはありますか
ダンスのアーティストとして本大会への参加は重要なきっかけになると思うんだけど、もっと大切なのは「これからどうエピソードを創ってくか?」ですね。どの世界でも全体のレベルが上がってきて、突 出した才能がでる時代ではなくなってきている。だからこそ、ネットワークをどんどん広げて、映像、音楽、色々な分野の面白い人たちと一緒にクリエーションできたら、自分の能力も高まるし、今までになかったアートが創れると思います!
オーシャン作品「PIANO WORLD」

受賞の決め手は!?
〝何がしたいのか〟ビジョンをクリアに打ちだし、多様な要素を巧みに駆使して表現していた!
作品演出力を見極める視点 演出賞
選定審査員:小池 修一郎

数々の興行神話を築き続ける
日本屈指の巨匠舞台演出家!
演出家
宝塚歌劇団 特別顧
小池 修一郎
新時代を拓く振付師たちの
表現発想に新たなる息吹を感じた!
━━今大会全体のご感想はいかがでしたか?
単純に出展作品が増えただけではなく、ユニークな作品が揃っていたのが印象的ですね。お馴染みの振付師の深みを増した作品と、新しい振付師の新鮮な発想の作品が次々と展開していって、刺激的で面白かったです。新しい息吹のエネルギーを感じましたね。
━━部門賞の授賞作品について教えてください!
僕が選んだZoooM作品は、90年代初めの映画の曲を使っていましたが、彼らが生まれる前の曲を使いながらのシチュエーションの作り方が面白かったですね。ダンス的な展開もよかったけど、〝5分間の ドラマ〟という視点で見ると、ストーリーより大人数を踊らせることを優先させている点が少し惜しかったですね。でも、構成や小ネタの重ね方はすごく才能を感じて面白かったです!
━━他に気になった作品を教えてください!
たぬき作品は、ENcounter ENgraversの系譜を感じる作品で、小道具の使い方など面白かった。ただ、もう少しエンターテインメントであることへの執着が欲しかった。でも、ユニークさは群を抜いていたので今後に期待していますね。
他にはオーシャン作品も、鍵盤をモチーフにするのはありがちだけど、独自の個性があって、宮沢賢治の作品を思わせるような詩情を感じました。人間が物になっているのに、ちゃんと踊りとして魅せていて、それが温度というか情緒を感じさせる作品になっていることにとても才能を感じました!
ZoooM作品「ラスト・オーダー」

受賞の決め手は!?
シチュエーションの作り方や小ネタの重ね方がすごく面白く、ダンス的な展開もシャープだった!
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