ストリートダンスの分野で世界規模を誇るコンテスト『 World Of Dance championship 2019(以下略:WOD)』での優勝を飾った Nʼ ism(エヌイズム)。このチームを手がける NORI はいかにして世界を沸かせる作品を創りあげたのか? そのドラマとクリエイティビティに迫るインタビューをここに公開!
NORI PROFILE
日本を代表するダンサー・コレオグラファー。チームNASTYとしてシーンに前衛的なジャズ作品を取入れ、ジャンルとしてのストリートジャズを確立。自身のプロデュースするキッズチームも数多くの全国大会で優勝歴を誇り、地元神戸ではダンススタジオ ‘N’COMPANYを立ち上げ、日夜後進の育成に取り組んでいる。
世界を制した“日本発”
クリエイティビティの探求。
教え子たちの実力が開花しはじめた、これは面白いことができる!
――もともとWODに挑戦しようと思ったきっかけは何があったのですか?
2019年は私の教え子のNiftyというチームが全国大会を2連覇していたり、他の教え子たちもコンテストで結果を残していた時期だったんですね。
同じように育ってきてくれた子たちがいい感じに何人いて、これだけのメンバーが同年代で揃ったというのはすごい貴重なタイミングだと思って、こ れは面白いことができると思ったんです。
小さい頃から教えていた子たちの力がちょうど花開いたタイミングだった、という感じですね。
――そうだったんですね! LAでの決勝のシステムはどのような感じだったのでしょうか?
大会行程自体は3日間あって、1日目はキッズ(中学生以下)部門の最終予選、2日目はアダルト部門の最終予選、その両部門を総合して上位チームが3日目のファイナルに進める、というものでした。
私たちはアダルト部門の最終予選に臨んで、ギリギリ10位通過チームとしてファイナルに進めることになったんです。
ファイナル進出は決めたもののこのままではダメだと思って、会場からホテルに戻ってすぐに近くのスタジオを抑えました。
その日の夜に変更部分をすべてピックアップして、翌朝すぐのリハで対応できるようメンバーのLINEグループに共有しましたね。
当日早朝の変更! 予選通過最下位から優勝へ!
――ということは、当日の朝に変更リハをやられたのですか⁉
はい、作品全体をガラッと変えたわけではないですけど、朝6時からみっちり構成やタイミングは結構変えました。
メンバーが対応できたのも、全員が長年私のレッスンに通っている子たちなのでニュアンスを読み取って理解してくれるんです。
長年の関係があってからこそできた変更でしたね。
――それにしても中々ハードなスケジュールでしたね…。実際ファイナルでの出来や手応えはいかがでした?
1ヶ所だけ大技で失敗したところがありました。
着地が少し上手くいかなかった程度の分かりづらいものでしたが、ミスは明確に減点されるので「これはもう優勝はないな」ってその時は思いましたね…。
パフォーマンス後はメンバーたちもがっくりしてて、どんよりした雰囲気でしたよ。
――でしたら、優勝のコールの時はずいぶん驚かれたのではないですか?
それが、個人的にすごいなって思っていたヨーロッパのチームが結果発表で3位で呼ばれて、同じ日本からの登美丘が2位で呼ばれてさすがだなと思って見ていて…。
優勝のコールが発音的に聞き取れなくて、「どこ?」って思っていたら周りから「あなたたちのチームよ!」って言われて本当にビックリしました(笑)。
予選通過最下位からの優勝なんて奇跡が起こって、鳥肌でるわ涙でるわで、本当にドラマがありましたね!
当日早朝に回数を変更する修正を行なったという〝ワーム〟の動き。
ジャパニーズ・カルチャーとしての〝ホラー〟
心のざわつきを求めて。
今の日本のカルチャーは〝和〞よりもアニメやホラー!
――では、作品としてはどのようなコンセプトで作られたのでしょうか?
表現のテイストとしては〝妖怪〟ですね。ジャパニーズ・ホラー映画の要素をイメージしています。
日本のホラー映画はその独特な味がアメリカでも受け入れられているのは知っていたので。
実際このWODの私たちの動画にも「like a SADAKO!(貞子みたい!)」ってコメントがついているくらいなんですよ!
――日本ならではの〝ジャパニーズ・ホラー〟をイメージされたんですね!
こういった海外の大会だと特に、狐のお面や和傘、和服に和太鼓の音などで〝日本らしさ〟を表現する日本人は多いと思うんですけど、私は今の時代ならアニメとかホラー映画だと思ったんです。
そういったジャパニーズカルチャーは海外でも通用していますし、そこを強調させた上で作品を作りたかったんです!
アクロバットを取り入れた作品を見据えた指導はメンバーがキッズ時より行なっていた。
作品創作のルーツは「妖怪人間ベム」?
――それをお聞きすると、衣裳やメイクも納得ですね!
そうですね、顔も白くして真っ赤なアイラインで眉毛もなくして、ピタっとしたベージュのトップスも無機質で気持ち悪さを強調して…、まさに妖怪のイメージです。
そして赤い靴下は日の丸の赤、花びらの赤をイメージしていますが、視覚的に足の動きを印象的にする狙いもあります。
ただし、動きの雑さも目立ちやすいので練習は大変でしたけどね!
――過去作品においてもNORIさんはそういった〝ホラーテイスト〟の作品が多い気がしますが、その辺りは意識されているのでしょうか?
そうですね、私自身が好きというか…、ちょっとこれはみなさんにも見て欲しいんですけど「妖怪人間ベム」のオープニング※が「私のルーツです!」っていうぐらい大好きで(笑)!
おどろおどろしい音からビートが入ってくるところとか、見ててゾワっとしません?
構成とか振りを考える時はこのフィルターが私の中の根底にあることが多くて、特に勝負の時にはこのフィルターを通して自分の作品を産み出そうとしている自分がいます。
――NORIさんのルーツはそこにあったんですね!
人って「嬉しい!」とか「楽しい!」という印象より、「怖いから見たくないけど……でも見たい!」という感じ方が強いと思うんです。
そこを踊りで引き出したくて、ゾクッとするホラーな感じ、「見たくないけど見ちゃう」という感覚をつねに考えながら構成を動かしていますね。
愛と絆でつながった、11人の妖怪たち。
――確かに〝ホラー〟も1つのエンタメのジャンルと言えますからね!
〝エンターテインメント〟というと、「明るくて美しい」とか「華やかで泣いたり笑ったり」という感覚が多いじゃないですか?
私の場合はそうじゃなくて、「え、なんで……?」という感覚の方が好きなので、ざわつく、ゾワゾワする作品を求めて作っていますね。
――ちなみにこのWODの作品のテーマとなると「貞子」という感じになるのですか?
いえ、実は個人的に作品テーマは〝愛〟なんですよこう見えて(笑)。
これ言うとみんな「なんで?」って言うんですけど(笑)。
――〝愛〟ですか……? 確かにそれは少し予想外ですね。
と言うのも、今回のメンバー11人は全員ずっと私のレッスンに通っている子たちで、「このWODのために集めた」というわけではないんですね。
1番長い子で9年ほど、平均で5年くらいは私のレッスンに通っていて、発表会やチームの活動もあった子たち。
絆がすでにあって、本音でぶつかり合える、私のやりたいこともすぐ理解してくれる、そういうメンバーたちなんですね。
愛と絆がなければできなかった、ある意味「愛と絆でつながった妖怪たち」です(笑)!
N’ism のメンバーはほとんどが 10 代。「教え子として長い付き合いがあったからこそできた作品」とNORI は語る。
私たちのこのダンス作品を通して、愛や絆を再確認して欲しい。
――確かにあれほどのシンクロや作品力、さらには当日変更の対応力はずっと培ってきた〝愛と絆〟があってこそですね!
絆が浅いと気を遣ってしまって本気でぶつかれないですし、本音も言えないですからね。
私たちは11人という、他と比べて少人数のチームではありましたがリハ中に言い合いやケンカもできる、そうやって高め合えるメンバーです!
――そんな素晴らしいメンバーのみなさんが、5月の『FINAL LEGEND Z』ではゲストとして出演されますが、その意気込みをお願いします!
コロナ禍で人と人との接触や触れ合いが薄くなっていく昨今だから、人と人の絆や信頼関係を私たちのチームワークからなるこのダンス作品を通して、愛や絆を再確認して欲しいと願います。
INFORMATION
2021年5月、世界を制した「N’ism」の作品がゲスト作品として披露!
【公演名】
『FINAL LEGEND Z -NEW WORLD DANCE STREAM-』
【日程】
2021年5月15日(土)・16日(日) ※3回公演
【会場】
東海市芸術劇場 大ホール
【公式サイト】
https://legend-creative.jp/final/
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