もはや伝説! Seishiroが創りあげた「小芥子」秘話(ご本人の解説付き!)

インタビュー
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「Legend Tokyo Capter5」にて優勝し、5代目レジェンドの座を獲得したSeishiro。その道のりとは? そして作品に込めた思いを、ここに語る!

Seishiro
福岡出身。2011年に上京後、ジャズやヴォーギング、コンテンポラリーなどを取り入れたオリジナルのスタイルで人気を博している実力派ダンサー&コレオグラファー。きゃりーぱみゅぱみゅや玉置成実、E-girlsなど、名だたるアーティストのバックアップや振付けを担う。特に、振付を担当した乃木坂46「インフルエンサー」「シンクロニシティ」が日本レコード大賞を2年連続受賞するなどメジャーシーンでも活躍。2014年には『Legend EAST』において審査評価パーフェクト優勝を飾るなど、若くしてその類い希なる実力で輝かしい経歴を誇っている。

日本ならではの繊細な恐怖、そこから美しさや狂気が見えてくる。

「都市伝説」から生まれた作品

―率直に、優勝されてご感想はいかがですか?

このスタイルで勝てたということは、すごく嬉しかったです! 〝レジェンド〟は評価基準がダンスをやっていない人も楽しめるかどうかなので、伝わりやすさや分かりやすさを大切にしなければいけない反面、自分が信じて追求してきたものを評価されないと意味がないと思っていて……、そのバランスがすごく難しかったですね!

―確かに、分かりやすさは大事ですが、本当にそれが自分のやりたかったことなのか……というジレンマは生まれますよね。

そうです、私はお客さんが家に帰るまでがエンターテインメントだと思っているので、「あの人はどんな想いで作品を創ったんだろう?」って考えてもらえるような、明快な分かりやすさだけがエンターテインメントではないと思うんですよ。

―では、そもそもなぜ「小芥子(こけし)」をテーマにした作品を創ろうと思われたのですか?

もともとエレクトロミュージック(EDM)が好きで、1~2年くらい前から思い描いていた「かごめかごめ」からEDMへの展開は「絶対にいける!」って変な自信があって(笑)。ただそれだけだと面白くないから、そこにちゃんと意味を持たせたい。
それで、〝都市伝説〟といった類のお話も元々大好きで、そこから「かごめかごめ」の都市伝説のお話に結びついたんです。

―「かごめかごめ」には、確かに歌詞の解釈が諸説ありますね!

諸説ある中で、「神社の参道で、妊娠している女性が後ろから突き落とされて流産してしまった」という説に惹かれて、その〝流産〟というワードから〝こけし〟が繋がっていきました。
と言うのも、こけしにも発祥が諸説あって、昔の日本の「子供がいては仕事ができないと煙たがられた時代、自分の手で殺めてしまった子供への供養」という説があるんです。もちろん、これが正しいという説ではないですけど、そういった色んな説から自分なりのお話を創りあげました。

場面1
「1曲目は母親が絶望に満ち、自分の手で稚児を殺める事を決めた狂気。そして、この世に産まれてこれなかった子供なりの恐怖と絶望が渦巻く様子を描いています」。

 

立ち位置を決めるのは、上手い下手じゃない!?

―まず「かごめかごめ」があって、そこから「流産」をキーワードに「こけし」へと繋がっていったんですね!

そうですね、なのでいわゆる〝ホラー〟の作品ですけど、ひしひしと伝わってくる日本ならではの繊細な恐怖、そこから見えてくる美しさや狂気を表現したいと思っていました。
ハリウッド映画的なホラーの怖さではなく、怖がられる側の幽霊もなりたくてそうなっているわけではない、悲しい運命の結果そういう存在になってしまった……。そういう切なくて儚い美しさがあって、そういった部分も表現したかったんです。

―では今度はダンス的な面をお聞きしますが、ジャンル的にヴォーギングと言ってよいのでしょうか? 独特なスタイルかと思いますが……。

正確には、ヴォーギングの要素を取り入れたスタイルですね。ベースとしてはジャズがあって、ヒップホップやコンテンポラリーの要素も入れてミックスしているスタイルです。
〝スタイル〟と言っても、「オリジナルのスタイルを作る!」なんて思っていた訳ではなくて、好きなものを追求していって自分なりに消化していって形になったものが今のスタイルだと思います。スタジオでは無難に「ジャズ・ヒップホップ」のレッスン名ですが(笑)。

―そうだったんですね! では、あの巧みな構成とフォーメーションはどうやって考えたのですか?

私の場合、上手い下手で立ち位置を考えることはなくて、どの身長がどこにいるとキレイに見えるのかで考えています。それと、正面から見ただけだと横(奥行き)のラインが合っているか分からないから、横や後ろや斜め、色んなアングルから見て、立ち位置がキレイに揃うようにしています。

場面2
「2曲目は生まれてこれなかった子供が鬼と化する場面。曲の中にもお経を入れてあり、生まれてくることが出来なかった子供への〝供養〟という意味も兼ねてます」。

 

前代未聞の巨大なステージ、あの空間は人だけで埋めてはいけない!

巨大な鳥居、横浜アリーナに立つ。

―それって、ダンサーとの信頼関係がないとあまり成立しないですよね!? 普通、いい立ち位置になることをモチベーションに頑張るダンサーが多いかと思いますが……。

信用してくれているのかな?他にも、フォーメーションの事となると私、異常に几帳面というか細くなるので、場ミリ番号1番の位置に指定してた子が1番に立ってるつもりだけど、私から見たら1.05番くらいにずれて立っているのがわかるくらい細くなっちゃって(笑)。
「そこじゃない!」って注意するんですけど、従ってくれるんですよ。生徒達はたまにハテナ顔になるんですけどね(笑)。

―「ちゃんと言われた位置に立っているのに!?」って、理不尽に注意されたと感じるかもしれないですね(笑)。

ただ今回、ステージ全体をどう使うかは悩みました。だって今まで誰もが挑戦したことがない、巨大なステージじゃないですか? 私、色んな要素を駆使して「空間を埋める」ということが好きなので、人だけで空間を埋めちゃダメだと思いました。だから今回は、敢えて立ち位置を「ステージの大階段ほぼ無視作戦」! あの大階段部分は大道具の鳥居を置いたのと、演出的なごく一部のシーンでしか使っていないんです。

―あの鳥居があることで、大階段部分全体が〝怪しげな異空間〟という印象になりますね!

鳥居は絶対にこの作品に必要だったんですよ! この作品を初演したスタジオ発表会の時は映像を使ったんですけど、今回は使えない。その状況下でどれだけこの世界観を伝えられるかって考えた時、本物を置くしかないと(笑)。このコンテストの素早い転換の中で、あの巨大な鳥居が設置されるなんて誰も想像できないでしょう(笑)。

場面3
「3曲目は子供なりの『こういう風に遊んで欲しかった』という悲しいシーンで1人の子が縄跳びを止め、赤ちゃんの叫び声で嘆く。それでも小芥子達は笑顔で遊んでいます」。

 

ステージには魔物が潜んでいる!

―前日のステージリハでも、「こんな大きいの使うんだ!?」ってスタッフチームもビックリしていましたね(笑)。

「30秒以内に設置」というルールだから、ちゃんと設置の練習もして、作品中も絶対に倒れないように加工処理をして徹底しました。私の作品では絶対に横浜アリーナを横浜アリーナとして見せたくなかったんです!

―相当のこだわりを持ってあの鳥居を作られたのですね!

こだわりと言えば、移動の仕方も徹底しましたね。私は出ハケや移動も1つの美学だと思っているので、身体を低くして、顔を隠して、移動しているフォームも美しくあるようにしました。正直、踊りの部分はみんなどうにかしてくれるけど、移動までは気が向かない子は多い。
それと、ステージについてはは事前に図面をもらっているけど、本番は何がどうなっているか、本当の意味では分からない。「ステージには魔物が住んでいるから!」と、常に色んな想定をして実際のステージに臨むようにしました。

場面4
「4曲目は周りの小芥子達に気付かされ、自分がいくらもがいても、その感情は誰にも届かない。どうしようもなく、諦めにも似た行末を悟るシーンを描いています」。

 

この大会に悩まされ、そして生かされた。

―作品創りで他に大事にされていたことはありますか?

生徒であるダンサーの子たちと心を1つにすることですね。私はこういう想いで作品を創っているということや、協力して欲しいことがある度に声をかけて……たくさん話をしました。不安もあったと思いますが、どんなに辛い練習でも、いつもみんな笑顔でした。こんな怖い作品ですけど(笑)。
この大会で負けることって、コレオグラファーとしては「自分の作品力がないせいで」、出演者は「自分たちの技術のせいで」、勝たせてあげることが出来なくて、お互いにごめんなさいって思うことになる。
私も去年の結果で、自信を無くしましたし、ぽっかりと胸に穴が空いた感覚になりました。ただその想いがあったからこそ、今年の結果があると思っています。不思議なものですね、この大会に悩まされ、そして生かされたと思うと!

―去年の経験も無駄ではなかったということですね! 最後に、5代目レジェンドとして今後の展望をお聞かせ下さい!

真っ先に考えているのは自主公演を開催することですが、レジェンドになったからといってまだまだ沢山の先輩方から学ぶべき事がありますし、常に進化し続けていきたいです。作品創りも続けますが、私自身まだまだプレイヤーでもあり続けたい。ダンサーに評価されるダンサーでありたいですし、その上で一般の方々にも認められるような存在になりたいです。
そうやって自分が信じるエンターテインメントを広げていきたいですね!

場面5
「最後の『後ろの正面だーれ』で、子供がまた鬼と化します。沢山の希望が詰まった理想があったけど、結局鬼となる道を選んだという悲しい物語として創りました」。

 

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