現在、お台場ヴィーナスフォートにて 〝上演期間約1年間の常設イマーシブシアター公演〟 という前代未聞の公演を行なっている、日本の誇る唯一無二のダンスカンパニー「DAZZLE(ダズル)」。
この前人未踏の公演『Venus of TOKYO』に込められた想いを紐解く、DAZZLEの主宰長谷川達也氏の長編インタビューの後編を公開! 『Venus of TOKYO』の謎に迫る!
長谷川達也
「すべてのカテゴリーに属し、属さない眩さ」をスローガンに掲げ、独創性に富んだ作品を生み出し続けるダンスカンパニーDAZZLEを主宰。ストリートダンスとコンテポラリーダンスを融合した世界で唯一のスタイルを追求し、映画・コミック・ゲームなどの日本文化の要素を取り込んだ作品を数多く創作。2011年には大人数振付作品コンテスト「Legend Tokyo」の初代王者に輝き、以後海外の名だたる演劇祭に招聘されるほか、国内でも人間国宝・坂東玉三郎とのコラボ公演や大型のイマーシブシアターの公演を次々と手がけるなど、多彩な活躍を見せている。
DAZZLE長谷川達也、常設イマーシブシアター『Venus of TOKYO』に込めた想いとは!?【後編】(1/4)
イマーシブシアターでは、会場にいるすべての登場人物に物語を作ることができる。
━━ 今回のように「約10ヶ月におよぶロングラン公演」なんてDAZZLEさんはもちろん、数ある日本のダンスカンパニーでも今まで経験がないと思いますが、上演期間の長さに関して何か工夫されていることはありますか?
作品の密度というか……、作品をなるべく深く、濃くしていかなくてはいけないと思っています。ただそれは今回に限ったことでもなくて、過去にDAZZLEが開催した『Touch the Dark』や『SHELTER』といったイマーシブシアター公演でも、毎日、毎公演ごとにどんどん細かいブラッシュアップやリニューアルを行なっていました。
━━ なるほど! その「深く、濃くしていく」とは具体的にどのような工夫になるのでしょうか……?
普通の舞台公演だったら、あるキャストがいて、主役に絡んで、一通り物語を進行させたら舞台からはける……という流れで、舞台上からいなくなったらもうそのキャストの人生はお客さんは追えないですよね?
でもイマーシブシアターだと追えるんですよ。そのキャストの人生を。ある意味、会場にいるすべての登場人物に物語を作ることができる。ですから今回はメインとなる人物を10人作って、物語も10人分作る。
誰がいつどこで誰と会って、どういう会話をする。そういうことを組み立てていく、ある意味、群像劇に近いような作りにはなっています。
そういった登場人物の1人1人がなるべく魅力的になるように作ることを工夫していますね。すべての登場人物それぞれに思惑があるけど、なかなか1回では全部を見ることができない。そういうところを上手く作るようにしています。
━━ 確かに、後半の自由探索では会場の色んな場所で同時多発的にイベントが起こっているので、自分が見ているシーンの他にどんなことが起こっているのかが気になりますね!
ただ、お客さんにとっては何も物語がわからないまま終わってしまうとつまらなくなってしまうと思うので、まず前半でどんな人物がいてどんな考えを持っているかということをちゃんと案内して見せるようにしています。
そこで気になった人物がいたら、後半の自由探索でその人物を追いかけてもいい、音につられて目の前のダンスを観るでもいい。そういう風に色々な楽しみ方があって、見る人それぞれによって得られる情報や体験が違うことがイマーシブシアターの醍醐味でもあると思っています。
━━ それこそ友だちと一緒に観に行って、後半の自由探索では別行動をして見終わった後に情報交換してみるのも面白そうですね!
そうですね、1人で観るとしても、今回は10人の登場人物がいるので、単純に10回は観に来ないと10人分の話を知ることができないですね(笑)。
しかも同じ登場人物でも、演じるキャストによってもまたちょっと違うんですよ。ある程度個性を出してもいいようにしているので、「今日の写真家はこうだったけど、前の写真はこうだったよね」というように、そういった個性の部分も楽しんでくださっているお客さんもいます。
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